20 握られてしまった!
色々あったけど何とか映画館内に入る事ができ、二人は隣の席に座って素晴らしい映画を鑑賞していた。
【女の子同士だからって、この恋を諦めないといけないの!?】
【だって私たちは同性なんだよ!?子供だって作れないし社会的にも認められないし…!!】
【そんなの諦める理由にならないよ…!!私はそういうこと全部ひっくるめてあなたのことが好きだから!!】
言われるがままに葵について行くと、なぜか百合映画が始まっていた。
これを見せて百合に対する抵抗感を少しでも減らそうという思惑があるのは見ればわかるけど、多分隣に座ってる彼女はそんなこと忘れて純粋に映画を楽しんでいる。
【こんな私に人生を捧げようなんて…本当にバカなんだから…っ!!】
【違うよ。あなただから私の全てを捧げたいって思うの。ただ好きだからあなたと結ばれたい。それに社会がどうとか関係ないでしょ?】
【本っ当にバカなんだから…!!本当に…本当に…っ】
映画の中の女の子が大泣きするのと同時に、葵もポロリと涙をこぼした。
そして隣で彼女の顔を見ている百合も、この言葉を聞いて少しだけ心を動かされていた。
(そうだよね…。好きに理由なんてない。だからこの人はこんな私に告白してくれて、今もデートしてくれてるんだ)
葵の考えが少しだけわかった気がした。
でも肝心の自身の気持ちは、どうにも理解できなかった。
(でも私は…正直まだわからないかな。好きか嫌いかで言われたらもちろん好きだけど、それは友達としてだし…。やっぱり今すぐ結論を出すことはできないな…)
でも、この映画を見て認められない恋の苦しさというものは十分に理解した。百合だって鬼ではないし、彼女に寄り添いながら考えていくことを決意する。
(でも私は…恋人として、七瀬さんを理解しようとすることを諦めちゃダメだ…!!わからないからって逃げるのは恋人としてあり得ないから…!!)
お試し期間中とはいえ、二人は恋人だ。
その自覚が百合の中で芽生え、こんな自分に好意を向けてくれている女の子のことを大切にしていこうと意思を固める。
まあそこまでは良かったんだけど、気づけば葵がこちらの視線に気づいていて、涙を流しながら小さく笑みを向けてきた。
『好きです』
「っ!!??」
葵は何も言っていない。でも口の動きがあまりにも露骨で、何を言っているのか簡単に解読することができてしまった。
そして高鳴る胸の鼓動は、百合の中の恋心を少しだけ芽生えさせる。
(こ、こんなところでそんなこと言われると私…!!どうにかなっちゃいそうなんですけどぉぉぉ…!!)
自分の中にこんな感情があるなんて知らなくて困惑がかなり大きいけど、それ以上に嬉しいという感情が湧き上がってくる。
やはり今まで友達もまともにいなかった分、こうやって一緒に映画を見て、一緒に心を通わせることに心からの喜びを感じているんだろう。
一人の方が楽とかゲームが楽しいだとか言っていたけど、こっちの方が何倍も心躍ることに気づいてしまった。まあでもそれは葵と一緒だからなんだろうけど。
と、そんなことを考えていた百合だったが、そこで手に謎の感覚があることに気づいた。
(え__!?ちょ、これってもしかして!?)
自身の膝の上に置いていた手の上に、もう一つの手が。その手を辿っていくと、頬を赤らめながら優しい笑みを浮かべる葵の姿があった。そこでようやく葵に手を握られていることに気づいた百合は、先ほど以上に困惑してしまう。
(ウソでしょ私今手握られて…っ!)
柔らかくて温かくて、そして心地良い。
ドキドキが最高潮に達した百合は、手を握り返すと同時に手を逸らしてしまった。
(うぅ…!!こんな顔七瀬さんに見られたらもう死んじゃう…!!お嫁に行けなくなる…!!)
まあこんな自分を嫁に貰ってくれる人がいるなんて一度も思ったことなかったけど。
でも人生何があるかわからないし、将来の相手のためにもちゃんと女の子らしい振る舞いをしておきたいところだ。
まあでも、それもこれも葵に貰ってもらえれば全て解決する問題なんだけど。
(ちゃんと責任は取ってもらうんだからね…!!)
その言葉の詳しい意味をあまり理解しないまま葵に超絶恥ずかしい思いをぶつけまくった。




