02 夢じゃなかった!
百合。それは女の子同士の恋愛のことを示していて、とても神聖で希少な現象だ。
普通に生きていればその道を辿ることはないだろうと油断していた時、その瞬間は突然やって来た。
「………」
「百合…!?あの子とどこ行ってたの!?」
「………」
「ちょっと聞いてる!?」
「………」
出会ったばかりのはずの美少女に、屋上で告白されてしまった。何も考える事ができなくなってしまってついOKしてしまったけど、よく考えてみれば百合になってしまう。
今まで自分が関わることの無いものだと思っていたけど、まさかこんな形でこっち側に来てしまうとは。
「ゆーり!!」
「え__?何??」
「やっと反応した…。あの子とどこ行ってたのって聞いてんの!!」
「…は!もしかして夢だったり__!!」
「何のこと?アンタさっきから変だよ?」
「…私さっきまでどこかに行ってた?」
「そりゃ、あの子に連れられてどっか行ってたじゃん」
「やっぱり…」
夢の可能性を考慮してみるものの、心花の言葉でそれは否定されてしまう。
つまりあの出来事は全て現実だということ。そう考えると途端に身体の力が抜けて来た。
「はぁ…夢じゃ無いんだぁ…」
「何してたの?」
「いや、それはその…」
あの子に告白されて付き合うことになりました!なんて言えるわけないでしょ。
心花とは長い付き合いだけど流石にそれは引かれる自信しかない。だからこの話はとりあえず内緒にすることにする。
「と、友達になろうって言われて…」
「えぇ!?あの百合と友達に!?」
「失礼な!!私だってやればできるんだよ!?」
「そ、そんな物好きな子がこの世にいるなんて…」
「言い過ぎじゃないかな!?私に魅力感じてくれる子だっているんだよ!!」
「彼氏いた事ないくせに?」
「ぐ…っ!!?」
確かに彼氏はいた事がない。
でも今日、人生で初めての彼女ができてしまった。それはつまり心花の先を越してしまったという事なので、つい勝ち誇った笑みを浮かべてしまう。
「まあでも?それは心花も同じじゃないかな??」
「ウッザ…別にあたしは告白されたことあるし?作ろうと思えばいつでも作れるし??」
「ぐぬぬ…!」
確かに心花はかなりモテる女の子だ。
顔は綺麗に整ってるし、スタイルも良いし。その上明るくて接しやすいから中学の時は割と男子から告白される時もあった。
そして多分、百合も男だったら告白している。そう思ってしまうぐらいに彼女は男女関係なくモテる女の子なのだ。
「わ、私を差し置いて彼氏なんて作ったらダメだからね!!」
苦し紛れに言葉を紡いだ。
しかしその言葉は誤解を招いてしまい、心花の口からタイムリーな話題が出てしまう。
「何々?告白??ふ〜ん♡私のこと好きなんだ??」
「友達としてね!!??」
「まさか女の子に告白されるなんてね〜。どうしよっかな〜」
「こ、告白じゃないし!!私はただ心花に彼氏ができたら私な構ってくれなくなっちゃうんじゃないかって思っただけで__!!」
「はいはいそ〜だね〜。百合は私がいないと何も出来ないもんね〜♪よしよし、私はどこにも行かないから大丈夫だよ〜♪」
ニヤニヤ笑いながら頭を撫でてくる。しかしかなり心地いいので受け入れる。
でも問題はまだ残っていて、心花は平然とそれを口にする。
「…じゃあさ、私に彼女が出来たらどうする?♪」
「はぁ!!??」
つい大袈裟に反応してしまった。異常を感知したのか、心花は驚いた表情を浮かべた。
「え、どしたん急に…」
「あ、いやその…」
「もしかして女の子同士ってのが嫌だった?まあ気持ちはわからなくもないけど」
「そこまでは言ってないけど…」
「BLはまだいいけど百合はねぇ…女の子相手に恋愛感情抱くのは無理じゃない?」
「そ、それは……」
ゴトンッ__。
机が一瞬宙に浮いてそのまま自由落下でもしたかのような音が教室に響いた。そしてその後の発生源は、先ほど告白して来た美少女。
…あの子聞き耳立ててるな?多分心花の言葉が心に刺さってるっぽいな…。
(はぁ…後でフォローしとかないと…)
そんなことを考えつつ、心花の方に顔を戻した。
「あのねぇ、最近は多様性の時代なんだよ?恋愛の形は自由だと思うの」
「じゃあ百合は女の子と付き合えるの?」
「そ、それは!!!…どうだろう…」
彼女に聞かれているだろうから答えにくい!
しかし心花の攻撃は止まらない。
「まあ名前が百合だしね。あんたなら可愛い女の子に押されたら普通にOKしてしまいそう」
「そ、そんなことは__!!」
数分前までの自分を思い出す。
(…心花の言う通りだよぉぉう)
心な中で涙を流しながら肯定する。しかしそれを表に出すわけにはいかないので、咄嗟に適当な嘘を取り繕った。
「ま、まあそもそも私に告白する人なんていないから……」
「それは…なんかごめん。ジュース奢るから元気出して」
「やったぁ!!何でもいい!!??」
「あ、ああ…。何でもいいケド…」
「ふふっ♪放課後が楽しみだぁ♪」
「単純すぎでしょ…まあそっちのが楽で助かるけど」
と、とりあえず何とか回避成功…。
でも今にも昇天しそうになっている私の彼女は後で何とかしないと…。




