127 両手に花だった!
来る運命の日。
まず心花と合流して駅に向かい、そこで葵と菫と合流した。
「お待たせしました」
「すまない。少し準備に時間がかかってな」
「ううん全然。私たちもさっき来たところだしね」
「そ〜そ〜。百合が気合い入れてたから遅れちゃったんだよ」
「いやそれアンタでしょ!!私はちゃんと時間通りに集合してたっての!!」
気合を入れてきたのは事実だが。
ちゃんといつもより早起きして頑張ったの!
その点心花は自由すぎて困る。まあいつものことだから慣れてるけど。
「いや〜すまんねぇ。ヘアアイロンがあたしを離してくれなくてさぁ〜」
「どんな言い訳…?」
「今日の寝癖は手強かった…!」
「私はちゃんと早起きしてゆっくり寝癖と格闘してたけどね〜」
「別に誇れることではないでしょそれ」
心花から実に冷静なツッコミをされてしまう。
でも申し訳ないけど、遅刻してきた人にそんなことを言われる筋合いはない。いい加減反省してほしい。
「はは、やっぱり幼馴染二人は仲良しだな」
「ですね。長年育まれた愛を感じます」
仲良く何気ない会話をする二人を見て、高校で出会った葵と菫は羨ましそうな目を向けてくる。
「いつか私も百合とそういう関係になりたいところだ」
「わ、私も!百合さんともっと仲良くなりたいです!」
もう十分過ぎるぐらい仲良しな二人にそんなことを言われても、どうすればいいか全くわからない。
しかしなぜか心花は誇らしげにドヤ顔をしていて、軽く胸を叩いた。
「いや〜甘いね二人は。こういうのは一緒に過ごした時間がモノを言うんだよ。あたしと百合は既に一心同体。もう四六時中愛を深め合ってるからね!」
「そ、そんなぁ…!」
「二人はもうそこまで進んでいたのか__!!」
わかりやすく落胆する葵と、膝から崩れ落ちて悔しそうにする菫。
「いやなんで信じてるの」
四六時中愛を深め合ってるとか、そんなわけないでしょ。同棲してる訳でもあるまいし。
と思っていたけど、実は夏休み期間デートの予定がない日はほぼ心花が入り浸ってきていたから、最近に限っては間違いでもないのかもしれない。
しかし彼女たちの前でこれを肯定するわけにはいかず、しっかりと否定させていただくことにした。
「確かに私は心花と過ごした時間が一番長いかもだけど、結局それは幼馴染として過ごしてただけだから。全然一心同体でもないし四六時中愛を深め合ってたわけでもないからね」
「!!じゃあ私たちが一緒に過ごしてきて時間は何だったの!?百合は遊びだったの!?」
「うんそうだよ?一緒に遊んでただけじゃん」
「最っ低!!私は本気だったのに!!」
「いっつも勝負事になると本気だよねぇ。でもごめん。私は遊びで負かせられるから」
「バカバカバカぁ!!」
突然始まった幼馴染のじゃれ合い。
しかし残された二人は困惑を隠しきれず、特に葵に関しては頬を膨らませて怒っている様子だった。
「おや、これは素晴らしい夫婦漫才だな。いや女同士だから夫婦じゃないか。一体何と言えばいいんだろう?」
「心花さんばっかり…。私にも構ってください!!」
葵の悲痛な叫び。
それは百合の心の奥まで届き、ようやく彼女を放置していたことを思い出した。
「あ、ごめん…つい…」
「全く…せっかく今日はみんなでデートなのに」
そう、今日はみんなで海デートをする日だ。
これは遊びではなく、ちゃんとした恋愛の意味でのデートだ。
それで特定の子にだけ構うのは流石の葵もお怒りの様子で、百合は少し焦りながら彼女の怒りを鎮めるよう努めた。
「ごめんごめん。ほら、次は葵の番だから!」
「本当ですか!?じゃ、じゃあ手を繋いでもいいですか!?」
「もちろん」
「あずるい!!あたしも手繋ぐ!!」
心花が百合の手を取ろうとした瞬間。
スッと菫のしなやかで綺麗な手が百合の手に張り付き、そのまま身体を寄せて心花が入る隙間を無くした。
「すまない。心花のターンはもう終わってるからな。ここからは私たちが百合を貰うよ」
「え゛」
「ぐぬぬ…まさかすみっちがこんなに強敵だなんて…!」
謎に牽制を始めた彼女三人衆。
これは恋人として止めるべきなんだろうけど、私のために争ってると考えたら気分が良くなって止める気も起きなくなる。
「ふふふ♪みんな仲良くね〜♪」
一日の始まりは、とても最高なものになった。




