126 拳を掲げた!
ひとまず恋人二人には菫との恋愛が許可されたわけだが、だからといって簡単にことが進むわけではない。
「はぁ〜…どうしよう…」
こうやって枕に向かってため息を吐くのも何回目だろうか。
高校に入ってから恋愛関係で忙しくて、毎晩のようにこんな事をしていた時期もあった気がする。今回はそうならなければ良いが、正直なところ当時と同じぐらいの悩みを抱えているわけで。
「なんでみんな私のこと好きになっちゃうのぉ…」
毎度のことながら、なぜあんな超絶美人が一般庶民である私のことを好きになるのか理解できない。そもそも女同士だし。
「菫も葵も心花も、ホントどうかしてるよ…!!私なんかと一緒にいて幸せになれるかもわからないのに…」
クラスのイケメン男子とかとくっつけば守ってくれたりしそうだし、同性だとしても美人の先輩とくっつけば楽しい日々を過ごせただろうに。
「なんでこんな陰キャ女子を選んじゃうかなぁ…」
三人のことは心の底から好きだ。もちろん葵と心花は恋人として好きだし、菫は恋愛的にはまだわからないけど少なくとも友達としては大好きだ。
だから他の人に取られたくないし、ずっとそばにいてほしいという気持ちがある。
しかしそれと同時に、好きだからこそどういう結末になっても幸せになってほしいという考えもある。
「私が三人を幸せに…。いや結構私の仕事量ハンパなくない?」
相手が一人、あるいは二人ぐらいなら頑張れば幸せにできるかもしれない。
でも正直、三人の恋人を抱えて全員を幸せにできる自信はない。
特定の子のことだけを考えてしまって他の二人のことを疎かにしてしまうことも、これからきっとある。
それで誰かが不幸になるくらいなら、最初から付き合わない方が良かったんじゃないか?
そんな気持ちが私の中で生まれることもきっとある。
でも一番重視したいのは、彼女たちの気持ちだ。こんな私程度が思いつく不安ごとぐらい、きっとみんな考えているはずだ。その上で二人は許可を出してくれたし、菫も告白してくれたんだろう。
みんなは仮に不幸になったとしても、私との未来を選んでくれた。彼女たちは幸せになれる保証もない、ただ自分の感情に任せただけの道を突き進んでいる。
仮にそれが、茨の道だったとしても。
「…私も、そんなに深く考える必要ないのかもね」
考えれば考えるほど、複数人との恋、しかも百合なんてリスクが高すぎるということばかり考えてしまう。
でも大事なのは世間体とか形式よりも、自分の気持ちだ。今私がどうしたくて、どうなりたいのかという理想が、きっとみんなには求められている。
「たまにはちょっと夢見ても、怒られないよね」
みんなと一緒に歩む未来。まあ菫とはどうなるかわからないけど、いずれにしろ厳しい道になることは間違いない。
幸せになれるかも、できるかもわからない。
でもみんなのことが大切で、大好きで、愛おしいという気持ちだけは、絶対に捨てたくない。
「私、変わっちゃったなぁ…」
数ヶ月前まではこんな熱い気持ちを抱くこともなかったのに。
葵と出会って、告白されて、デートして。
心花に告白されて、お泊まりして、幼馴染最後のデートをして。
そして、二人と付き合うことにして。
全く予想もしていなかった展開がここ数ヶ月で起こりすぎて、私は簡単に彼女らに変えられてしまった。
でもそれは二人に染まってきているってことだから、そう考えたら悪い気はしない。
「ふふ。なんかちょっと楽しみになってきたかも」
二人との関係が、そして菫との恋愛がどうなるのか、それは誰にもわからない。
でもなぜか高揚感が抑えきれなくて、どんどん胸が高鳴っていっている。
「私たち、これからどうなるんだろうね」
もしかしから破滅するかもしれない。
でもその時に後悔だけはしない選択をしていきたい。未来の自分に誇れる、正しい選択を。
「よし!!やるぞぉぉぉぉ!!」
【百合姉うるさい!!】
決意と共に、拳を掲げた。




