123 お説教を回避したくなった!
「じゃあ、また今度な。水着楽しみにしていてくれ」
「うん。期待してる。ばいばい」
小さく手を振り合って別れを告げる。
最後扉が閉まる直前に菫が向けてきた笑みは、恋人の二人と同じような雰囲気で。
彼女がちゃんと百合を好いているのを理解し、つい顔が赤くなってしまう。
「はぁぁぁ〜〜…」
今までで一番というレベルのため息が出てしまう。
(どうしてこんなことに…)
まさか菫まで好きになってくるとは思わなかった。
このままだと女の子三人を相手にすることになってしまう。
流石に頭がパンクしそうだけど、今は将来についてちゃんと考えたいから必死に堪える。
(なんでみんな私のこと好きになっちゃうのぉ…!!そりゃ嬉しいけどさぁ…!!)
もう頭を抱えるしかなくなってしまう。
(どうしよう…とりあえず二人に相談してみようかな…?)
恋人二人を差し置いて色々決めるのは流石にまずいし、後でちゃんと話しておかないと。
と、そんなことを考えていた時、リビングから妹が出てきてしまう。
「百合姉何してんの?もう菫さん帰ったんでしょ?」
頭を抱えている姉にジト目を向ける莉々恋。
百合も彼女の方に目を向け、そこであることに気づいてしまう。
(いや、まず家族に相談してみるか__!?)
莉々恋の顔を見た瞬間、百合は過去の記憶を思い出した。
そう、あれは葵とお試しで付き合い始めた後に母にバレた時。結果的に華恋にだけ黙っていたことが発覚し、しっかりとお説教をくらった。
そして心花に告白されて少し経ってからバレた時。あの時も少し冗談混じりではあったが、ちゃんと怒られてしまった。もうあんな経験は二度とごめんだ。
そう考えてみると今このタイミングで母に報告、あるいは相談しておくことは割と理にかなっていて、百合はそれで突き進む判断をした。
(うん、絶対そっちの方がいいね)
「早くそこどいて。ランニング行きたいから」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
どうやら莉々恋は今から家を出るらしい。
でもこの話は一応家族みんなに知っておいてもらいたいし、莉々恋もいる時に説明したい。
「あのさ!何時ごろ帰ってくる?」
「は?どしたん急に。話でもあんの?」
「うん…。結構大事な話」
「ふ〜ん…」
なぜかまたジト目を向けられてしまう。多分察してるなこの子。
まあそっちの方が話が早くて助かるからツッコミはせず、とりあえず話があることだけは伝えておく。
「わかった。期待しとく」
「期待はしないで…。じゃあまた後でね」
「うん」
スポーティーな格好も似合う莉々恋を送り出した後、百合はリビングに向かった。
「あの、お母さん」
「ん〜?」
リビングに入って早速華恋に声をかけた。
しかし朝ごはんの支度をしているからかなりどうでもよさそうな反応をしていて、あまり真剣な話をする空気にはなれない。
まあどうせ莉々恋が帰ってくるまで待つしかないわけだし、ここはさらっと話があることだけ伝えておけば良い。
「後で話あるから」
「何の話?」
「…大事な話…?」
「…そ。後で、ね?」
「うん。莉々恋が帰ってきてから」
「りょーかい」
わざわざ家族全員が揃うタイミングまで待ちたいということは、ちゃんと大事な話だということ。
それを華恋も察した様子だったが、気にせず手を動かしている。
「あなたから大事な話があるなんて、珍しいこともあるものね」
その時、ソファで適当にテレビを見ている姉から声をかけられた。
「うん。私もそう思う」
「なにそれ。まあ何でも良いわ。空気を悪くするのだけはやめてちょうだいね?」
「それは…お母さん次第かな…?」
「ふ〜ん…」
この感じ、多分この人も何となく内容を察している。一応この前百合と一緒に怒られた側だから危機管理能力が上昇しているようで、百合としてもそうなってくれるのはかなり助かる。
まあどちらかといえば莉々恋の方が問題なんだが。まあ彼女も賢いし、ある程度は学んでくれていることを願うしかない。
「ちなみに莉々恋は何も反省していないみたいよ?」
「……」
莉々恋が口を滑らせたせいでお説教をくらったのはまだ忘れていない。
もう中学二年生にもなるし、いい加減成長してもらいたいところだ。




