116 会議してしまった
【ん?どしたん急に】
「緊急事態です!!」
ある日の夕方、私は反射的に電話をかけた。
相手は同じ人を好きになった心花さん。
急な電話で困惑しているみたいだから、私は事情を説明した。
「菫さんが百合さんの家でお泊まりするって__!!」
【ああ、その話?】
「知ってたんですか?」
【まあね〜。あたしも一応百合の彼女だから】
百合さんはわざわざお泊まりの許可を貰うために恋人の私に電話してきた。なら心花さんにも電話しているのが自然で、私は自然と百合さんの行動が腑に落ちた。
【わざわざ許可貰うために電話してくるなんて偉いよね〜。あたしだったら絶対事後報告するもん】
「それはあまり良くないのでは…?」
【百合がそれをしたらキレるけどね】
「すごく理不尽…」
自分は良くて百合さんはダメなんて、とんでもなく都合の良い人だ。多分冗談だけど。
【まあ今回はちゃんと連絡してくれたからしゃーなしで許可してあげた。そっちはどうしたの?】
「私も許可しました。百合さんと菫さんの仲が深まるのはとても喜ばしいことだと思うので」
私と心花さんは恋人だけど、菫さんは違う。
そのせいか若干共に過ごした時間にムラがあって、菫さんには申し訳なく思っていたところだった。だから今回の話は私にとっても嬉しいことだがら、喜んで許可を出した。
まあもちろん問題点もあるけど。
【でも浮気されるかもしれないよ?】
そう、女たらしの百合さんとお泊まりしたら大変なことになるかもしれないという不安がどうしても残ってしまう。
私だってお泊まりした時はどうにかなりそうになったし、聞いた話だと心花さんも同じような部類だったみたいだし。
例え菫さんのような芯の強い女性でも、百合さんを前にしたらただの乙女になってしまう可能性もある。
だから私は今回のお泊まりには最低限危機感を覚えている。
「否定はできませんね。決して二人を信じていないわけではないんですけど」
【そうなんだよねぇ。百合はともかく、菫はその辺ちゃんとしてるから大丈夫だとは思うけど…やっぱ百合が余計なことをしないかの方が心配だ…】
「ですね…」
彼女のことだから平気な顔をして甘い言葉をかけたりする可能性は高い。
そしてその言葉は例え同性であっても惚れてしまうぐらいドキドキするもので、意外と普通の乙女の菫さんも例外ではない。
まあただ菫さんが百合さんに惚れる分には特に問題はないけど、そこで勢いで関係性が進んでしまうのは流石にいただけない。
「百合さんはどうしてあんなに無自覚なんでしょう…?」
【さあ。あの子は昔からそうだからね〜。今更直そうなんて無理な話なんじゃない】
「それはかなり将来が不安になります…」
この調子のままだったら十年後には三十人ぐらい彼女がいるかもしれない。流石それは人道的にどうなんだというのもあるし、私に構ってくれる時間もかなり減ってしまうからとても嫌だ。
だから今のうちにある程度改善してもらいたいけど、そんな簡単にいくのであれば心花さんが対処しているだろうし…。
【将来ねぇ…。とりあえず今は考えないようにしたいかなぁ…】
「私もです…。一旦百合さんのあの対応は直してもらうよう努力するとしてです。問題は他にもあります」
【だねぇ】
二人の共通認識の問題がもう一つ。
それは先程までの話とは比べ物にならないぐらい重要なもので、私はしっかり心構えをしつつその話を始める。
「菫さんが百合さんに惚れているかもしれないです」
心臓をドキドキさせながら心花さんからの返答を待つ。
その時間は一瞬のはずが永遠にも感じられて、私は深い緊張感を抱いた。




