115 マズくなってきた!
その後もいろんなことをして菫と楽しい時間を過ごし、あっという間に夕方が訪れた。流石にこれほどの美女を夜に駆り出させるわけにもいかないし、そろそろ帰宅の提案をし始める。
「もう夕方だね。そろそろ解散する?」
「もうそんな時間か。いやはや、楽しい時間は一瞬で過ぎ去るものだな」
こんなことを言ってくれるぐらい楽しんでくれていたのならこちらとしても嬉しいし、もっと一緒に過ごしたいとも思ってしまう。
でもそれは向こうの親御さんたちにも悪いし、ここは諦めて送り返すことにする。
「だね。んじゃ、駅まで送るよ」
「ああ、その必要はない」
「え?」
否定されて一瞬困惑するが、直後に事情を察した。
「あ、お迎えが来るってこと?流石、育ちが良いね」
「いや違うぞ?」
菫はいつも通りの表情で冷静に百合の言葉に首を横に振った。
しかしそれは百合の疑問をさらに深め、とうとう怪しい目で見るようになってしまう。
「え、じゃあどういうこと…?」
「そういえば言い忘れていたな。百合、今晩泊めてくれ」
「ああそういう…ってえぇぇぇぇぇ!!??」
めちゃくちゃ驚いている百合であるが、正直なところなんとなくそんな予感はしていた。
心花に始まり、続いて葵も泊まっている。もちろん友達の菫はこの話を知っていて、彼女のような大胆な性格の人ならやりかねないとは思っていた。
でもまさか本当に実行してくるとは、その勇気に脱帽だ。だからといって許可するわけもないが。
「なんでわざわざ私の家に!!??私たち友達だよね!?」
「だから友達同士仲良くお泊まりしようって言ってるんだ」
「いやでも…ん?もしかして普通はこのパターンなのか?」
二人のせいで感覚がバグっていたけど、普通の女子高生は友達同士でお泊まりをするものだ。だから同性とはいえ複数人の恋愛対象とお泊まりをしているのは明らかに異常なのである。
そのことにようやく気づいてしまった百合は、完全に菫のペースに乗せられてしまう。
「葵と心花だけ泊めて私だけダメなんて言わせないぞ?」
「それは確かに…。菫も大切な友達だしね…」
「(大切…)」
さりげなくこういうことを言ってしまうあたりが百合の良いところでもあり悪いところでもある。おかげで菫の心臓は一瞬トクンと跳ね、少しだけ変な気分になってくる。
「嫌なら別に断ってくれてもいいんだぞ?」
「いや全然嫌とかはないよ。むしろ楽しそうでこちらからお願いしたいぐらいではあるんだけど…」
なぜか歯切れが悪い。
それに菫も疑問を持つが、直後にちゃんと事情を説明してくれる。
「一応その、私にも恋人がいるわけだし…??人を家に泊める時はちゃんと許可貰った方がいいのかなって」
「確かにそうだな。完全に忘れていたよ」
恋人が同姓だからか、許可を取らないといけないという行動を完全に忘れてしまっていたらしい。
でもだからこそ百合の発言には感心し、温かい笑みを向けた。
「百合はちゃんと二人のこと考えてるんだな」
「そりゃ当たり前だよ。葵も心花も大切な恋人だから」
自信満々な表情。
それを見て彼女になら葵と心花を任せられると感じた反面、少し複雑な気持ちにもなった。
でもその気持ちの正体はわからず、結局放置することにした。
「じゃあとりあえず二人に連絡してみるか。後で浮気を疑われても困るしな」
「浮気って…流石に友達相手にそんな疑いかけないと思うけど」
「そんなのわからないぞ?私が急に百合のことを好きになって手を出すかもしれないし」
「それは勘弁してぇぇ!!」
二人の前例があるから好きになられる可能性も否定できないし、菫のような強い気持ちを持つ女の子なら襲ってきても何らおかしくない。
じゃあこれもしかして泊めたらかなりヤバくない?いやでも好きになられなかったら済む話ではある。
結局この段階で判断することはできず、とりあえず二人に電話してみることになった。その結果、割とあっさり許可を出されてしまった。
まるで菫が百合のことを好きになってしまってもいいと思っているかのように。




