112 過去を思い出した!
写真について語り合い、昼ご飯を食べ、今度は昼下がりに散歩を始めた。百合は思い出を語りながら、彼女を案内していく。
「この公園、よく心花と一緒に遊んだな〜」
「二人は小さい頃からの仲だったな」
「うん。幼稚園の頃からね」
懐かしいあの日々を思い出しつつ、それを菫にも教えてあげる。
「あの頃の心花は元気でわがままで何考えてるかわからなくて、ついて行くので精一杯だったな」
「あまり今と変わっていない気が」
「まあ確かに根本は変わってないね…」
今の彼女も元気だしわがままだし何考えてるかわからないし、変わっていないと言われれば変わっていない。
でもそれはあくまで他人から見た時の見え方で、百合からすれば全く違うもので。
「でも心花は変わったよ。確実に」
「特にどのあたりが?」
「私のことをちゃんと考えてくれるようになったところかな」
「ほぉ、詳しく」
気恥ずかしいからあまり多くは語りたくなかったが、そう言われてしまうと話すしかなくなってしまう。
少し話が長くなってしまうかもしれないし、とりあえず近くのベンチに座って話を始めた。
「幼稚園の頃の心花は私のことなんて全然考えていなくて、普通に他人を振り回して自分が楽しければそれでいいみたいな感じの子だったの」
「ほぉ」
「だから私も毎日連れ回されて、たいして体力あるわけでもないのに必死について行ってた。もちろん心花は楽しそうだったけど、私は疲れの方がひどくってさ。たまに幼稚園に行けないぐらい熱を出して、たまに一緒に遊ぶのが嫌になるとかもあったんだ」
空を見上げ、心花と幼稚園中を駆け回った日々を思い出す。すると自然と百合の顔に笑みが溢れ、菫は少し疑問を抱いた。
「その割にはかなり嬉しそうに語っているように見えるが」
「うん。確かに色々大変なこともあったけど、その何倍も楽しかったから。私にとってはいい思い出だよ」
「そうか」
百合は当時からボッチだったわけで、心花以外の友達なんて一人もいなかった。
でもその心花がたくさん遊んでくれたからこそ、百合は充実した幼少期を過ごすことができた。
だから彼女には感謝しているし、尊敬もしている。でも話はこれだけではなく、大事なのはここからだ。
「で、そのまま小学生の間もずっと仲良くしてくれてたんだけど、やっぱりその時もどこか自分勝手で、私はまだ振り回されてばっかりだった」
目線を前に戻し、ブランコで遊ぶ小学生らしい女の子二人を見つめながらあの時のことを思い出す。
「でも中学に上がってから、急に心花が私に気を遣うようになって」
「ほぉ。何か心境の変化でもあったのか?」
「私も詳しくは知らない。でも多分、私があまりにも成長しなさすぎて心配してくれてたんだと思う」
中学生にもなって今までと変わらずボッチで陰キャな百合を心配して心変わりしたのではないかと考えているが、真実は定かではない。
ただ一つだけ言えるのは、確実にこのあたりから彼女が変わったということだけだ。
「やっぱり心花はいい奴だな」
「うん。どれだけクラスで浮いてても毎日話しかけてくれるし、私にとってそれは救いだったな」
クラスが別になってもわざわざこっちに来て話をしてくれた。
彼女は陽キャグループにいたからこんな陰キャと話していたら株が下がってしまうかもしれないのに、彼女はそれを厭わず話してくれた。
それは当時の百合にとってとても有り難いことで、今でも感謝している。まあ本人は無自覚らしいが。
「そうやって二人は仲を深めて行って、高校生でようやく結ばれたってわけか。なるほどなるほど。感動モノだな」
「いや何か違うでしょそれ。別に中学時代とかに好意持ってたわけじゃないからね?」
「そうなのか?小さい頃から仲が良いあの子に気付けば片思いをしていたとか」
「ないない。私にとって心花は幼馴染で親友だったから」
本当、どうして付き合うことになってしまったんだろう。
「そんなことを言いつつ、今となってはちゃんと心花のことが大好きだもんな」
「それは…否定しないけど…」
「二人は長い期間愛を育んできて、ようやく結ばれたというわけか」
「言い方!!」
「事実だろう??」
「微妙に違う気がするんですけど!?」
確かに愛は育んできたかもしれないけど、それはあくまで幼馴染としてだ。決して恋愛的な意味ではないから、そういう意味ではまだ育み始めた段階だ。
だからこそ彼女とは積極的にコミュニケーションを取って、積極的に愛を育んでいかないと。
「そう言いたくなる気持ちはわかる。気恥ずかしいもんな」
「だから違うって!!」
生温かい目で見られる百合であった。




