111 語り合ってしまった!
菫とのゲームも一段落し、休憩がてらお茶を飲みながらお菓子を食べていた時。百合はふと気になったことを彼女に問うた。
「そういえば菫は写真が趣味なんだよね?」
「ああ」
「普段どんなの撮ってるの?」
「そうだな…例えば、庭の植物とか夕焼けとかかな。まあ割と場合によりけりだが、普段の何気ないワンシーンを撮るのが好きだな」
「へ〜。そうなんだ」
よく考えてみれば菫のことをあまり知らなかったし、これを機に距離を縮めようと彼女の趣味の話を広げていく。
「もし良かったら見るか?」
「いいの?」
「もちろん。こういう時に共有するために撮ってる部分もあるしな」
「やった」
菫はスマホを開き、写真を保存しているアプリを開いた。
「へ〜、スマホで撮ってるんだ。もっとちゃんとした一眼?ってやつなのかと思ってた」
多分家金持ちだし。きっと高いカメラを使っていると思っていたけど、思いの外庶民的だった。
しかしそんな百合の予想は外れ、彼女は待ってましたと言わんばかりに写真を見せびらかし始めた。
「一眼レフカメラなら持っているぞ?これはそのデータをスマホに移したヤツだ。コレとか結構綺麗に撮れていてわかりやすいと思うんだが」
雨の日に紫陽花を撮影した写真。
確かによく見てみると画質や背景のボケ方など、スマホでは出来そうにない技術が使われているように見えた。
まあ百合は素人だから大きな違いは認識できなかったけど、多分ちゃんとしたカメラで撮ったヤツだということだけはわかった。
「へ〜。こんなに綺麗に撮れるものなんだね」
「これは私の中でも渾身の一枚でな。カメラの性能をフルで発揮できた一枚だからかなり気に入っている」
「へ〜」
雑な相槌。
でも予備知識が少なくすぎてまともな言葉が思いつかないから仕方ない。
菫もそれを察したのか、百合でもわかるような写真を探し始めた。
「じゃあ次は…お、コレとかいいんじゃないか?」
「お、葵じゃん。これは旅行かな?」
写真にはみたらし団子を食べて美味しそうに笑っている着物姿の葵がいて、百合は二人で旅行に行ったのだと判断した。
「ああ。今年の三月に卒業旅行で京都に行った時のやつだな」
「二人で行ったの?」
「京都はな。他にも北海道と沖縄に行ったんだが、その時は他の友人も合わせて五人で行ったな」
「へぇ…」
卒業旅行を三回も…?やっぱお嬢さまは資金力が違うなぁ…。
やはり葵と菫とは生まれから色々違っていて、若干壁みたいなものを感じる。でもこうやって話していると普通の女の子だから難しい。
「それにしてもこの写真の葵可愛いね」
「わかるか!?」
「そりゃもちろん。なんてったって彼女ですから!」
子供みたいに可愛らしい笑みで団子を頬張っているが、その姿勢などから品の高さが窺えて、葵の良いところを詰め込んだような一枚だった。もちろん葵のことが大好きな百合がその写真に魅力を感じない筈がなく、彼女もテンションを上げて菫に駆け寄った。
「ちなみにその写真をもらっても?」
「もちろん!なんならこの旅行で撮った葵の写真全部送っておこうか?」
「いいの!?是非お願いします!!」
「ああ!」
女子二人楽しそうに葵について語り合う。それだけ二人とも彼女への愛が大きくて、心の底から好いている証拠だろう。
「うわ〜!!この葵可愛い〜!!」
「だろ!?この小さくピースしてるのが恥ずかしがり屋で可愛いだろ!?」
「わかるー!!葵写真苦手だけど断れないタイプだからね!!」
「そうなんだよ!!せっかくの旅行だからってお願いしたら簡単に撮らせてくれるんだよ!!でもちゃんと恥ずかしいから顔真っ赤にして….愛おしすぎないかこれ!?」
「守ってあげたい!!」
こんなにも楽しく他人について語れるのも一つの才能なんだろう。まあ裏で自分についてこんなに語られている側はたまったものではないだろうが。
しかしこのことは二人だけの秘密なので、本人ににバレることはない。でもあまりに可愛すぎるため、スマホのホーム画面に設定しまうのであった。




