109 理不尽に気づいてしまった
私は今、とてつもなく高い壁に直面している。
「心花さん。この水着とかどうですか?」
「お、この水着ならサイズ合いそう。ちょっと試着してみるね」
「わかりました」
ドデカい水着を持って試着室に向かう心花。その後ろ姿を、菫は嫉妬深い目で見つめる。
「(…何だあの水着のサイズは…)」
「??どうかしましたか??」
「心花はスタイル良いなと思ってな」
「そうですね…あのプロポーションは驚異的です」
どうやら心花がとてつもないボディをしていると思っていたのは私だけではないらしく、葵も自分の身体を見つめながら少し表情を暗くした。
「それに比べて私は…」
「いや葵がそれを言うのか」
心花が驚異的すぎて霞んでしまっているけど、葵も十分ナイスバディだ。手足は長く身体は全体的に細くて、でも出るところはしっかり出ていて、女性の理想ともいえるような体型だ。
そんな彼女が体型で自虐なんてし始めた場合、この世のほとんどの女は泣くしかなくなってしまうだろう。当然、私もその中の一人だ。
「別に葵はスタイル良いと思うけどな。いや絶対良い。間違いなく」
「そうですかね…?でもそれを言えば菫さんの方こそスタイル良いですよね?」
「ん??それは新手の煽りか何かか?」
まさか親友にこんな鮮烈な煽りをされる時が来るとは。まあどうせ葵のことだから無自覚だろうが。
「違いますよ!ただ純粋にそう思ってるだけです!」
「そうか…。葵は優しいんだな。こんな私のことを頑張って褒めようとしてくれるなんて」
ハッキリ言ってスタイルの良さで心花や葵には勝てる気がしない。特に胸や尻の大きさは。
それは服を着ていても明らかにわかりやすい違いで、葵本人もそれは理解しているはずだ。でも彼女はどうにかして私の魅力を引き出そうとしてくれている。とても優しい子だ。でもその優しさは時に胸に突き刺さることもあり、私を少しずつ傷つけていく。
「本当にそんなつもりはありませんから!!菫さんは誰がどう見てもとても綺麗ですから!!」
「あはは…。無理に褒めなくても大丈夫さ。どうせ私は貧相な身体だからな…」
「あの…えと…!!」
葵は頑張って何か言おうとしてくれるが、結局何も思いつかなかったらしい。しかしそれは仕方のないことで、私は甘んじてそれを受け入れた。
「おっまたせ〜!!どう!?」
その時、心花が沈黙を破るように試着室から現れた。
二人の視線は完全にそちらに向き、まず葵が反応を示した。
「とても似合ってます!」
「マジ?じゃあこれにしよっかな〜♪すみっちはどう思う?」
「……」
一旦冷静になって彼女の身体を見てみる。
まず上から、とても綺麗で整った顔。少し下に行き、爆発的で水着から溢れそうな胸部。そのまま細い腰を降り、また爆発的な尻。
うん、何だこの身体は。とても同い年とは思えない。いや思いたくない。こんな不条理が現実であっていいはずがない。
そんな憤りに駆られた私は、憎たらしい目で心花に褒め言葉を浴びせた。
「ああ…とてもいいと思うぞ??」
「目が怖いんだけど…なんかあった?」
「別に何も??私はただこの世の理不尽に燃えているだけだ」
「何言ってんのこの人」
「さあ…?」
心花からは冷ややかな目を向けられるが、私の怒りは収まらない。
「心花、一つ提案がある」
「なに?」
「触らせてくれ」
「……え??」
まさか友達からこんな提案をされると思っていなかったのか、ポカンとした表情を浮かべている。しかし私は躊躇わず、そのまま突き進む。
「せめて触らせてくれ!!じゃないと怒りが収まらないんだ!!」
「どういうこと!!??意味不明なんだけど!!??」
「もういい!!触るからな!!」
「ちょっと__!!??」
私は無理やり心花の胸を触った。
とても柔らかくて、弾力があった。しかも手に収まらなかった。
正直怒りは大きくなったが、この触り心地の良さの前で私は無力だった。




