107 デートは回避した!
「終わった〜!!!!」
期末テストも無事終わり、全員赤点回避が確定したところでようやく夏休みが幕を開けた。この圧倒的解放感に叫ばずにはいられず、心花は校門を出たあたりで思わず声を上げた。
「今日から夏休み〜!!」
「ふふ、楽しそうですね」
「そりゃそうだよ!!待ちに待った夏休みなんだから!!」
「心花は特にテストで苦しんでいた分開放感が凄いんだろうな」
「そーゆーこと!!ようやく勉強しなくてよくなるからあたしはもう無敵だ!!」
心花は感情がモロに口から出ちゃうタイプだから、よほど楽しみにしていたことが口調から伝わってくる。そして隣を歩く百合もそれに乗せられて少しテンションが高くなり、足取りを軽くしながら笑みを浮かべる。
「夏休み何しよっかな〜♪」
「百合さんは何かご予定が?」
「そりゃもう忙しいよ。ゲームして映画見てダラダラするのにね!!」
「それは予定と呼べるのだろうか…?」
「百合は毎年こんな感じだからほっといて。どうせ遊びに誘ったらいつでも来れるぐらい暇だから」
まあそういう捉え方もある。結局やることないからゲームして映画見てるだけだし。もし葵や心花に誘われたらどこにだって遊びに行くし、毎日のようにデートすることもできる。つまり暇だ。
そしてこういう時謎な鋭い葵は、百合の状況について察して目を輝かせる。
「つまり毎日デートできるってことですか__!?」
「まあ理論上はそうなるね〜。でも半分ぐらいはあたしにも時間ほしいかな」
「ということは私と心花さんが一日交代でデートすれば…」
「それめっちゃアリ!」
「いや無しでしょ」
勝手に話を膨らませる二人に冷静なツッコミを入れる。したし彼女たちは頭の上に疑問符を浮かべている。
「なんで?」
「流石に毎日デートは…」
「もしかして嫌ですか…?」
「嫌ではないけど…」
「けど??」
「………」
この感情をどう説明したらいいかわからない。実際デート自体は嫌じゃないし、楽しそうだから別に構わないのだが、毎日は何か違う気がする。
「まあその辺にしてあげてくれ。百合が困っているじゃないか」
その時、毎度の如く菫が助けに入ってくれた!やはり頼りになる女!とても信頼できる!
「菫…!!」
「二人と交互に毎日デートは流石にハードスケジュールすぎる気がするな。百合もたまには休みたい日もあるだろう?」
「うん…!!」
「まあ流石に無理かぁ」
「一人の時間も大事ですもんね」
葵も心花もわかってくれたみたいで、百合はホッと胸を撫で下ろした。
「ありがとう。でもできるだけたくさんデートできるようには頑張るから」
「ありがとうございます!!」
「それは夏休みがより楽しみになりますな〜♪」
「たまには私にも構ってくれよ?」
なぜか菫がもの寂しげな表情をしている。
もしかして自分だけ仲間外れにされそうで不安になってる?まあ確かにたまには四人で遊ぶ時間を作ってあげないと流石に悲しいか。私があっちの立場だったら絶対に病む。
菫のことだから病む事はないだろうが、少し寂しく感じることも多くなるだろうし、ここはしっかりと心のケアをしてあげることにする。
「そうだね。四人みんなでもどこか行こうね!」
「いや、私もデートで構わないぞ?」
「「「え!!!???」」」
「冗談だ」
その冗談は心臓に悪すぎる。まさか恋人二人の前でそんなことを言うなんて、相当肝が据わってるな。
「冗談かい…本気でビックリしたよ…」
「菫さんも百合さんのことを好きになったのかと…」
「百合のことは好きだぞ?」
「「「え!!!???」」」
「友人としてだが」
さっきから何がしたいんだこの人…。反応見て楽しんでるだけじゃん。いい加減心臓に悪いからやめてほしいんだけど…。
「いやそっちかい…」
「本当に驚きましたよ…もぉ…」
「すまない。つい楽しくなってな」
「心臓に悪いヨォ…」
今でも心臓がバクバクしている。
もしこれ以上彼女が増えようものなら本当に大変なことになるから、とりあえず冗談で安心はしている。でも流石にこういうのはこれきりにしていただきたいところだ。
「でもデートではなく、二人でお茶したりはしたいかもな。私だけ二人で会話できないのは不公平だろう?私だって友人と二人で話したい時もあるし」
「そうなんですね」
「許可しよう!デートじゃないならOK!!」
「なんで心花が許可出してんの…」
「ダメだった?」
「いや良いけど」
「だってさ」
「ありがとう。今度また空いてる時に連絡する」
「うん」
まさか二人でお茶に誘われるなんて。いまだに何を話せば良いか掴めていないけど、この人はコミュ力高いからなんとかなっちゃうんだろうな。
(今年の夏休みは忙しくなりそう)
しかしその分楽しいのだろうと、期待に胸を膨らませるのだった。




