105 夏が始まってしまった!
ある日の昼休み、みんなでお弁当を食べている時のこと。最近暑くなってきたという話をしていた時、心花が目を輝かせながらある提案をしてきた。
「よし!!夏休みはみんなで海行こう!!」
突然立ち上がったと思えば、かなり突発的なことを言い始めた。これには他の三人も驚きを示し、様々な疑問を抱いた。
「この四人でですか?」
「そう!!女子四人で海!!めっちゃ楽しそうじゃない!?」
「そうですね♪とても楽しそうですっ」
「他の二人はどう?」
心花の質問に、まずは菫が反応を示した。
「まあ私は構わないが…逆に心花たちはそれでいいのか?」
「ドユコト?」
「だってこの中で私だけ恋人じゃないだろう?私がいたら邪魔にならないか?」
どうやら菫は気を遣ってくれているみたいだが、だからと言って彼女だけを除け者にすることはできない。
「邪魔なわけないじゃん。別に今回はデートってわけでもないんだし」
「そうなのか?私はてっきりデートのつもりなのかと…」
菫の言うとおり、海は絶好のデートスポットだ。だか恋人同士が海に行く場合はすなわちデートになるわけで、彼女もそこを心配していたみたいだった。
しかし言い出しっぺの心花にデートのつもりはないみたいで、あくまで友達同士の女子四人で遊びに行くだけのつもりらしい。
その場合変に気負ってデートっぽくする必要がなくなるし、百合としてはかなり精神的に助かる部分が多い。だから百合も心花の話に乗っかることにした。
「そんな菫だけ仲間はずれになんかしないって。私たちはもうれっきとした友達なんだから」
「そうそう、仲間はずれには…ってことはすみっちとも恋人になるってこと!?」
「いやそれは違うからね!?何変な解釈してんの!?」
話が大きくなりすぎて驚いてしまう。流石にここまで拡大解釈されてしまうと本当にどうしようもない。
しかし放置するわけにもいかないので言葉を返すわけだが、そこに新たに敵が乱入してきた。
「百合さん…まさかもう新しい人を捕まえてくるなんて…」
「葵まで!?てかこれ本当に違うからね!?心花が勝手に言ってるだけだからね!?」
「本当ですかねぇ」
「信じてよォ…」
百合の弁明虚しく、葵は誤解したままのようだ。まあ話し方からしてわざとだろうが。
しかしこちらが不利な状況には変わりなくて、心花たちから辛辣な言葉が飛んでくる。
「信じてって言われてもねぇ…既に二股かけてるから説得力皆無だよね」
「っ……」
「ぐうの音も出ないといったところか。全く、罪な女だな」
「……」
ひどい言われようだ。最初はただ海に遊びに行く話だったのに。
「まあまあ、その辺にしてあげてください。流石に可哀想になってきましたから…」
「あおいぃ…私の味方はアンタだけだぁ…」
「よしよし。私は味方ですからね〜♡」
ちょっともたれかかってみたら頭を撫でてくれた。温かくて包容力があって、ずっとこのままでいいと思えるほどの居心地の良さだ。
しかし現実そう上手くはいかず、隣から嫉妬の声が響いてくる。
「ちょっとそこ!!あたし抜きでイチャイチャするな!!」
「私も居るのを忘れてもらっては困るな。少し気まずくなってきたぞ」
「それはごめん」
唯一恋人がいない菫にはとりあえず謝っておいた。
「というか、海に行く話がじゃなかったの?」
いい加減話が脱線しすぎな気がしたため、話を戻しておく。
「あ、そうでした」
「んで結局どうする?」
「私は行きたいです」
「右に同じく」
「百合は?」
「……」
水着姿を見られるのが恥ずかしい。なんて言ってもどうせ「見たい」って言う人しかいないから断れない。ならもう最初から諦めておいた方が精神的に楽だし、仕方なく首を縦に振ることにした。
「うん。私も行きたい」
「じゃあ決まりだね!」
「楽しみです!」
「今度水着買いに行くか?」
「行きたいです!」
「あたしも行っていい!?」
「もちろん」
「あ、じゃあ私も」
「「それはダメ(です)」」
「なんで!?」
恋人二人から拒否されてしまい、流石の百合もショックを受けてしまう。
しかしこれにはちゃんとした理由があって、彼女たちはそれを説明してくれる。
「だってアンタには当日に見せたいんだもん」
「えぇ…」
「大丈夫です。後悔はさせませんから」
「あっはい…」
なんという自信。まあこれだけ可愛くてスタイル良ければどんな水着でも似合うだろうけど。
しかし問題はそこじゃなくて、百合自信が水着をどうするかだ。彼女は服のセンスが皆無だし、きっと水着も同じような感じだろう。だから葵たちに選んでもらえればと思っていたが、どうやらそれは出来ないらしい。
(…お姉ちゃんを頼るかぁ…)
その時頭に浮かんできたのは、今まで服選びに協力してくれていた姉の姿だった。




