104 未知に出会ってしまった
「………」
親友が同姓の子と好き合うことになった。相手はついこの前出会ったばかりの百合という女の子。初めて紹介された時は葵と釣り合うほどの女の子には見えなかったぐらい、至って平凡な見た目の子だ。
【何がそんなに魅力的なんだろうか…?】
そんな疑問を抱く時もあった。でも実際話していく中で、私は彼女の魅力に少しずつ気づいていった。
「百合は面白いよな」
「…ん?どうしたの突然…」
ちなみに今はカフェで勉強中だ。葵は用事で来られなくて、心花はトイレ休憩中だ。
つまり今は百合と二人きりなわけで、私は彼女の魅力について語り始めた。
「いや、これだけ面白い子なら二人が惚れたのも納得だと思ってな」
「何それ…もしかして口説いてる?」
全然理解が追いついていない百合が冗談っぽくそんな言葉を投げてきた。しかしそれはこちらの返し方によっては自爆することになるのに彼女は気づけていない。
「ああ。口説いてる」
「っ…!?」
「冗談だ」
「もぉ〜…っ!!」
こういうちょっとおバカなところが彼女の最大の魅力だろう。イジり甲斐があって一緒にいてとても楽しい。まあ葵はあまりそういうことはしないタイプだから彼女からすれば別のところが魅力的に映っているのかもしれないが。
「菫ってすぐ私のこと揶揄うよね…」
「嫌か?」
「別にそうじゃないけど…心臓に悪いというか…」
「すまない。百合が面白い反応をするからついな」
「別に面白い反応はしてないと思うけど…」
彼女は自分のことに関してはとことん鈍感だ。もちろん自分の魅力にも気づけてないし、なぜ好かれているかなんて一ミリもわかっていない。
しかしそういうところも可愛らしくて、守ってやりたくなってしまう。どうやら私も知らない間に彼女の魅力に惹かれてしまっているみたいだ。
「まあいい。無自覚なとこほも面白いしな」
「本当に意味がわからないんだけど…」
「わからなくてもいいさ。その方が私たちだけでコッソリ共有できるからな」
「それはやめて!?流石に恥ずかしすぎるから!!」
こういうツッコミ方が面白いのも良いよな。ついイジりたくなってしまう。
というかさっきから褒めちぎりすぎだな。まるで彼女に惚れているかのように。
(…いや、流石にそれはないか)
親友の恋人に惚れるなんて、どう考えても修羅場確定だから流石に嫌だ。そもそも二人の恋人がいる相手に惚れるなんてまあまあどうにかしてるぞ。
自分がそこまで倫理観に欠けている人間だとは思いたくないし、実際そうでは無いはずだ。だから私は百合に惚れたりなんてしない。何があってもだ。
「よいしょっと」
「あ…!お帰り!」
「なんか元気だね。何話してたん?」
「まあ…色々?」
「何それ。詳しく教えてよ」
お手洗いから帰ってきたら心花が百合に問いかけるが、彼女にとっては恥ずかしい話だから少しだけ顔を赤くしている。
その顔も面白くて悪戯心を刺激されてしまい、私はついことの経緯を説明してしまった。
「え、もしかしてすみっちも百合に惚れてる?」
その結果、心花に妙な憶測をされてしまった。
「そうなの…?」
そのせいで百合にも誤解されてしまう。
まあ一ミリも事実でないし、ここは冷静に否定しておく。
「いや…そんなわけないだろう…?百合には二人も彼女がいるわけだし…」
あれ??
何かがおかしい。
なぜか身体が熱くて、冷静に考えることができない。こんなこと今までになくてどうすれば良いかわからなくなって、私は咄嗟に顔を窓の方に向けて景色を見ているように装った。
「まー流石に無いかぁ。百合に惚れるなんてよっぽどの変わり者だけだろうし」
「それは自分が変わり者だって認めてることになるよね?」
「否定はしない。事実こんな変人に惚れちゃってるわけだし」
「変人!?私は至って普通の人間だと思うんですけど!?」
「絶っっっ対にそれは無い」
「そんなに溜めないで良くない!?」
この感情は一体何だ。
胸がそわそわして落ち着かない。身体が熱くて考えがまとまらない。
一体誰が私にこんな感情を教えたんだ?
答えなんてどうせ一つしかないのに、私はずっと考えを巡らせた。




