103 なぜかバレてしまっていた!
「ふぅん…二股、ねぇ…」
「………」
修羅場再来。
なぜか葵と心花の二人と付き合うことにした情報が家族に漏れていて、今絶賛家族会議中だ。しかし雰囲気は最悪で、母の華恋は怖い目をしながら何かを考えている。
「はぁ…誰がこんな子に育てたのかしら…?」
「ごめんなさい…」
ため息をつきながら頭を抱えているため、とりあえず謝っておく。
しかしそれは彼女の求めるものではないみたいで、より頭の角度が下に向いてしまった。
「謝る必要はないのよ。別に二股を否定しているわけじゃないし」
「そっかぁ…」
それはそれでどうなんだ。と思ったりするけど、二股かけてる側なので何も言えない。
そんなことよりも早くこの空気をなんとかしないと耐えられる自信がないため、とりあえず場を和ませるような発言をしておく。
「じゃ、じゃあこれからも私たちのこと応援してくれるよね…!」
「それは無理ねぇ」
「なんで!?」
「だって二股だし」
「っ……」
それを言われたら何も返せなくなる。
それをわかってか、姉妹たちもようやくいつものように揶揄うような発言をし始める。
「二股しておいて応援してもらえると思ったんだ…」
「とても素晴らしい感性をしているわね」
「いや違くて…そもそも二股じゃ…」
二股じゃなくて、ただ二人とお付き合いをするだけだ。決して二股だなんて、そんなつもりはない!
そんな百合の意思など関係なく、世間の目は冷たいもので。
「じゃあ何だっていうのよ?」
「それは…二人とお付き合いしてるだけというか…」
「それを二股っていうんでしょ。百合姉の価値観歪みすぎじゃない?」
流石に価値観まで否定されるとは思わなかったけど、間違ってはないのが悔しいところだ。
「だって仕方ないじゃん…。二人に告白されちゃったんだから…」
「二股かけてる人はみんなそう言うんだよ」
「そうなの?」
「って漫画で言ってた」
「漫画かい…」
「でも間違いでも無さそうね。実際百合はそう言ってるし」
みんなどうしても百合を二股かけてる女にしたいらしい。家族なんだからもう少し優しく受け入れてくれてもいいのに。
まあでもこういうポジションが百合の仕事だから仕方ない部分はあるんだけどね。だからといって許容できるわけではないが。
「まあ二人とも、その辺にしておきなさい。それ以上は流石に可哀想よ」
「は〜い」
「わかったわ」
姉妹二人に不満を抱いている時、なぜか最初に二股と言い始めた華恋が手を差し伸べてくれた。それ自体は嬉しかったのだが、元凶はこの人だから喜ぶな喜べない。
「さて、そろそろ本題に入ろうかしら」
「…え??」
もしかして二股のお説教が本題ではなかった?その場合は逆に怖いからやめてほしい。
しかし現実は非情で、彼女は真剣な眼差しで話を始めた。
「百合。あなた、ちゃんと覚悟はしてるのよね?」
その質問の意図は瞬時に理解できた。高校生という大切な期間を、女の子同士という常識と外れた恋に捧げ、そして二股という茨の道を突き進むのだ。並大抵の覚悟ではいつか挫けてしまうし、下手をすればそれに葵と心花を巻き込んでしまうことになる。
母親として、娘が道を踏み外さないことを思っての発言だった。しかしその心配は杞憂で、百合にとってはとっくに済んだ話だった。
「うん」
自信を持って頷き、大丈夫だということを母に伝える。
その気持ちが伝わったのか、彼女は表情を緩めた。
「もしかしたらあなたが望んだような未来にはならないかもしれないけど、それでも良いの?」
「別に良いよ。葵と心花と一緒にいられるなら」
百合は普通になりたくていろいろ努力してきた。でも結果的に普通にはなれなくて、望んでいた未来とは違っていた。
でもそれは普通の何倍も幸せな未来で、百合としてはこれ以上ないほどの成果だった。だから彼女は自信を持って家族に目を向ける。
「二人となら何でもできる気がするんだ。だから心配はいらないよ」
「そ。なら良いんだけど」
思いの外あっさりした反応。正直拍子抜けだった。
まあ穏便に済ませれたなら何でも良い。変に心配されすぎるのも厄介だし。
それよりも早く話を恋バナから変えたいところだ。そろそろ心が持たなくなりそうだから。
「で!?二人とはどこまで進んだの!?」
「ん??」
「私も気になるわ。早く答えて」
「あ、いや、その…」
「そろそろキスくらいしたのかしら?」
「………」
黙秘を選択したが、結局吐かされてしまうのだった。




