101 美少女に告白されてしまった…
「七瀬葵さん。あなたのことが好きです。友達でもお試しの恋人でもなく。一人の女の子として、あなたのことを好きになりました」
ずっと欲していた言葉が、好きな人の口から発される。それは葵にとって涙が溢れそうになるほど嬉しいことで、そして衝撃的なことでもあった。つい口が開いてしまってそのまま喋れなくなるけど、彼女はは堂々とした立ち振る舞いで。
「だからもしよかったら、私と付き合ってください。お試しではなく、本当の恋人として」
本当に嬉しい。心から喜びの気持ちが溢れてきて、今すぐにでも踊り狂ってしまいたいほどに。
でもなぜか身体が言うことを聞かず、その場で呼吸することしかできなくなる。ずっと待ち望んでいた告白のはずなのに。
結局気づけば涙が出ていて、それが目の横を伝ってベッドに染み込み始めた。
「だ、大丈夫…?ハンカチいる…?」
そんな不甲斐ない自分のことを、本気で心配してくれる。やはり彼女は心の底から優しい人だ。だから今も彼女の温かさにドキドキさせられているんだろう。
「大丈夫…ですっ…。ただ嬉しくて…つい」
「そっかぁ…。それならまぁ、良かった」
袖で軽く涙を拭い、彼女の可愛らしい表情を見つめる。すると自然に胸が熱くなってきて、つい手をにぎにぎしたくなってしまう。
「あの、百合さん」
「なに…?」
「私、前からしてみたいことがあったんです」
昂る感情を抑えることができず、ついわがままを言ってしまう。
「その…キス…してみたいです…」
今まではお試しのお付き合いだからと唇同士は断られてきたけど、今なら大丈夫なはず。そう考えてわがままを言ってみたのだが、彼女の反応は予想外のものだった。
「それは本当にお付き合いし始めてからね」
「え…?私たちもう晴れて恋人同士になったのでは…?」
「まだお返事もらってないけど」
「あ…」
そこで完全に先走ってしまっていたことを理解し、顔が真っ赤になってしまう。
(うぅ…どうして私はいつもこう…っ!)
恋愛のことになると冷静に考えることができず、考えるよりも先に行動してしまう癖がある。それのせいで今回も早とちりしてしまって、いつもみたいに顔を真っ赤にしてしまっている。
しかしそれは彼女にとって嬉しいことのようで、百合は嬉しそうに笑みを浮かべている。
「ふふ、やっぱ葵のその顔は何度見ても癒されるなぁ」
「そ、そんなことで癒されないでくださいよぉ…」
「だって仕方ないじゃん。葵が可愛すぎるんだから」「〜〜っ!!」
どうしてそんな恥ずかしげもなく言えるんだろう。恋愛は初めてって言ってたのに、どこか恋愛慣れしている気がする。
まさか心花さんとの関係のせい…!?二人はもうそこまで進んでいるの!?
「…百合さんのばか…」
「え!?なんで!?」
流石にいきなり怒りすぎたかもしれない。でもこれは彼女が女たらしなのが悪いから別に仕方ないことだ。
まあでも、ずっとこんなことを言うわけにもいかない。そろそろこちらが慣れて逆に揶揄うぐらいにならないと。じゃないと本当に心がもたない…!
「まあ良いです。そういうところも百合さんの魅力ですから」
「…??話が見えないんだけど??」
「見えなくていいんですっ。ただの独り言ですから」
「そう…??」
困惑する彼女に、突然愛を囁いてみたらどうなるんだろう。顔を真っ赤にして恥ずかしがる?それとも嬉しそうに笑ってくれる?
「ふふっ♪」
「??なんかずいぶんご機嫌だね」
「あら、顔に出てましたか?」
「うん。めちゃくちゃ楽しそうに笑ってるよ」
「そうですか…。じゃあもう隠す必要もないですね」
好きな人がどんな反応をするのか確かめたくなって、葵はちょっとした悪戯心を胸に告白の返事をし始めた。
「百合さん。私も、あなたのことが好きです。初めて出会ったあの日から、ずっとあなたが大本命でした」
「…そっか。うん、そうだよね。葵はずっと私のこと追いかけてくれてたもんね」
彼女は思いの外大きな反応は見せず、ただ少しだけ笑みを浮かべているだけだった。
しかしその表情からは今までに無いほどの愛が溢れていて、葵はその表情にとても満足した。
「はい。ですから百合さん。これからも、末永くよろしくお願いしますねっ!」
「うんっ!」
互いに満面の笑みを向け合い、ようやく二人は運命によって結ばれた。
その印に、二人は唇同士で誓い合ったのだった。




