100 愛を囁いてしまった!
その後もベッドで仲良く女子トークを繰り広げ、様々な話に花を咲かせていた。すると意外なことに、葵と同じベッドにいるのにそこまで緊張しなくなってきた。それが相性の良さなのかはわからないが、居心地の良さはかなり実感していた。
「って、もうこんな時間。そろそろ寝ないと日回っちゃうじゃん」
「本当ですね…会話に夢中で気づきませんでした」
楽しい時間は一瞬で過ぎ去るというし、既に日が回りそうになっているのも納得だ。しかしまあ、もう少しだけ楽しい時間が続いてほしかったとは思うが。そんなわがままは言ってられない。
「じゃあ明日学校あるし、そろそろ寝よっか」
姿勢を寝る時のものに直しながら、葵に声をかける。
しかし数秒経っても返答はなくて、疑問に思った百合は彼女の表情を窺った。
「…葵??どうかしたの??」
彼女はボーッと天井を眺めていて、まるで心ここに在らずという感じだった。
「もうすぐ今日が終わってしまうんですね」
ポツリと、虚空に言葉を吐き出した。その瞳は先ほどとは反対にどこか哀しげで、百合はその表情に疑問を抱いた。
「確かにそうだけど…何かあった?」
「いえ。ただ百合さんとのデートが終わってしまうんだと思うとつい寂しくなってしまって」
心細そうに、少し震えながら手を握ってくる。その手はどこか冷たくて、彼女の冷えた感情が現れているみたいだった。
しかし当の百合は、全く反対の気持ちだった。
「まだ終わらないよ、デートは。むしろ添い寝する今からが本番じゃないの?私はそのつもりだったけど、葵は違うの?」
一緒に家で楽しい時間を過ごしたのも、お風呂に入ったのも、ベッドで楽しく会話したのも、全ては前座に過ぎなかった。
突然泊まると言われてかなり驚いたが、その時に百合は心に決めていた。ちょうど眠りに着く直前、このタイミングこそが至高だと。
「…私もそれは楽しみにしてましたけど、でもこれが最後のデートじゃないですか…?だからその、どうしても不安になってしまって…」
お試し期間最後のデートは、選ばれる側にとって辛いものでもあるみたいだ。それはわかっていたつもりだったが、不安にさせてしまっている時点で力足らずだったんだろう。
(全くダメだな私は。葵にこんな思いさせるなんて。きっと言葉が足りてなかったんだろうなぁ)
素直になれないせいで葵に不安な思いをさせた自分に嫌気がさす。彼女の虚な表情が、百合の心を少しずつ突き刺していく。
(流石に、いい加減素直にならないと。こんなにも私のことを想ってくれてる人を不安な気持ちにさせるなんて、乙女として許せないことだからね)
まさか自分がこんな気持ちを抱く日が来るなんて。最初は「このままだと百合なんですけどぉぉぉぉぉぉ!!!???」とか言ってたのに。人間簡単に変わるものだ。
いや、どちらかといえば彼女が影響力ありすぎるだけだ。普通こんな簡単に価値観は変わらない。でもその常識を覆してしまうのが、葵という女の子なのである。
流石にもう敵わないと、どこか諦めがついたんだろう。いい加減気持ちを認め、それを言葉にする決心をした。
「あのさ葵」
「はい…?」
「私、ずっと言えてなかったことがあるんだ。今まで心のどこかではちゃんと感じてたのに、素直になれなくて目を逸らしてきた、私の本当の気持ち」
胸に手を当て、自分の心に決心を問う。
「葵にアプローチされ続けてようやく気付いたよ。私は生涯を賭けてでも、あなたと共に過ごすべきだって」
「!!」
先ほどとは打って変わって、驚きと喜びの表情を浮かべる。それを見て安心した百合は、そのまま気持ちを伝え続ける。
「七瀬葵さん。あなたのことが好きです。友達でもお試しの恋人でもなく。一人の女の子として、あなたのことを好きになりました」
ようやく打ち明けた思い。自然と胸の奥が熱くなって、なぜか心地良さを感じた。
「だからもしよかったら、私と付き合ってください。お試しではなく、本当の恋人として」
熱く語った己の想い。
それはきっと愛しき彼女の胸の奥にまで届いていた。




