第18章:変わっていく日
十二月三十一日の朝。
十三歳の誕生日を迎えたセラフィナが目を覚ました時、部屋の中はまだ冬の冷気と薄暗さに包まれていた。ベッドの上でぼんやりと天井を見つめながら、彼女は今年の誕生日はこれまでとは何かが違うかもしれないと、ぼんやりと感じていた。
ヘレンが静かにノックをして部屋に入ってきた。手には、いつもと変わらない温かいパンの載ったお盆が握られている。
「お誕生日おめでとうございます、お姫様」
「ありがとう、ヘレン」
セラフィナは起き上がり、温かいパンを受け取った。
「今年はいつもと少し違った、特別な日になりそうですね」ヘレンは微笑みながら言った。「今朝早く、本宮から知らせがありました。今日の午後に、セネステีย様がこちらへお見えになるそうです」
セラフィナの顔にパッと明るい笑みが広がった。「本当ですか、ヘレン?」
「ええ、本当でございます。それに、まだ……」
ヘレンは言葉を途中で切り、意味ありげな微笑みを浮かべると、そのまま部屋を出ていった。
その頃、本宮では。
セネステียが、これまでにない高揚感を胸に目を覚ましていた。例年の誕生日であれば、豪華な晩餐会が催され、数多くの貴族たちがこぞって祝いの品を持参してきたはずだった。しかし今年の彼女は違った。
「お母様」
朝食の席で、セネステียはモーヴェンに言った。
「今日の午後、セラフィナのところに行って、一緒に過ごしたいんです」
モーヴェンは温かく微笑んだ。「分かりました。あなたの気持ちはよく分かります。準備はもう整えてありますよ」
「本宮の祝宴はどうするのですか?」
「夜の部に変更しておきました。だから、心置きなく妹のところへ行ってらっしゃい」
セネステียは嬉しそうに母親に抱きついた。「ありがとうございます、お母様!」
同じ朝、皇帝の自室でも、心境の変化が起きていた。
今日はセネステียとセラフィナ、二人の娘の誕生日だった。それは皇帝にとって、一方では大きな喜びであり、もう一方では長年の重い罪悪感が胸を締め付ける複雑な日だった。
皇帝は近習を呼び寄せた。
「馬を一頭用意しろ。それから、大げさな護衛は不要だ」
「陛下、どこへお出ましで……?」
「離宮へ行く」
短い沈黙の後、近習は深く頭を下げた。「かしこまりました」
午後の光が庭を照らす頃、セネステียが小さな箱を抱えて南の離宮に到着した。少し遅れて、公務の合間を縫ってきたイゼキエルも同行していた。
「お誕生日おめでとう!」
庭の入り口で待ち構えていたセネステียが、明るい声を上げた。
セラフィナは微笑みながら箱を受け取った。「ありがとう、セネステีย。わざわざこんな素敵なものを……」
セネステียが開けさせた箱の中には、小さな星のチャームが揺れる上品な銀のネックレスが入っていた。
「私が自分で選んだのよ!」
少し離れた場所からその様子を見守っていたイゼキエルも、ポケットから小さな包みを取り出した。
「これ……姉上からじゃないが、私からのだ」
セラフィナが受け取り、包みを開けると、そこには深い青色の鉱石が収められていた。光を受けると、まるで夜空の星のように細かな輝きを放つ。
「とても綺麗……どこで見つけたのですか?」
「先月の外交の時だ。一目見た瞬間、君に似合うと思った」
セラフィナは鉱石を見つめ、それからイゼキエルに目を向けた。複雑で温かい感情が胸を満たす。
その時、離宮の門の方から、馬のひづめの音が響いた。
ヘレンが青ざめた顔で庭へと駆け戻ってくる。
「お、お姫様……! 陛下が、皇帝陛下が御成りでございます!」
庭の空気が凍りついた。セラフィナは思わず立ち上がり、手に持っていた青い鉱石を強く握りしめた。イゼキエルとセネステียも驚きに目を見張る。
皇帝は、大勢の供を連れず、二人の近習だけを引き連れて静かに庭へ足を踏み入れた。その目は、まっすぐにセラフィナに向けられていた。
彼女が赤ん坊だった頃を除けば、父娘がこれほど間近で向き合うのはこれが初めてだった。
セラフィナは緊張で体がこわばりながらも、ぎこちなく頭を下げた。
「は、陛下……」
皇帝はしばらくの間、じっと彼女を見つめていた。その瞳には、これまでに見たことのない複雑な感情が宿っていた。
「……お前の目は、母親によく似ているな」
低く、柔らかな声だった。セラフィナは返事ができなかった。
皇帝は彼女に一歩近づき、懐から小さな箱を取り出した。
「これを……誕生日のお祝いに」
セラフィナは震える手でそれを受け取り、そっと開けた。中に入っていたのは、上品な金のネックレスだった。そのペンダントトップには、母の形見のブレスレットに刻まれていたものと同じ、小さな花の模様が刻まれていた。
こみ上げる感情を抑えきれず、セラフィナの目に涙が溢れた。
「お父様……」
皇帝は目を伏せ、切なげに言った。
「すまなかった……。もっと早く、こうしていればよかった」
セラフィナはしばらく言葉を失っていたが、やがてしっかりとネックレスを握りしめ、顔を上げた。
「……いいえ。今、こうして来てくださっただけで……十分です」
皇帝はわずかに微笑み、そしてイゼキエルとセネステียに視線を移した。「二人とも、妹を連れてきてくれてありがとう」
夕暮れ時、皇帝が去った後の庭で、セラフィナは机に向かい、日記帳を開いた。二本のネックレスが、静かに光を放っている。
『今日、私は父に会った。
すべてをすぐに許せるわけではないけれど、心のどこかの扉が、少しだけ開いた気がする。
お母様、見ていてくれますか? 私たちは今、少しずつ前に進んでいます』
彼女はペンを置き、窓の外の夜空を見上げた。冷たい風の中にも、確かな春の気配が混じっているような気がした。




