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隣の転校生は重度の中二病患者でした。  作者: 夏風陽向
番外編 「輝くことを願った女剣士」
12/222

輝くことを願った女剣士・下

「あっ……」



虹園の部屋から出てきた透夜の顔は、一見何事も無かったかのように見える表情だったが、それでも奈月は透夜に声をかけた。



「透夜君、大丈夫だった……?」


「ん? 何がだ?」


「だって、ボクのせいで怒られたんじゃないの?」


「怒られたけど、別にお前が悪いわけじゃない……気にするな」


「でも……」


「というか、俺のことは呼び捨てでいい。君付けされると変な感じがする」


「うん、わかった! でも透夜もボクのことはちゃんと奈月って呼んでね?」


「ああ、わかった」



おそらく入ってからたった2日で問題児となってしまったであろう透夜のことを気にしていた奈月だが、本人の「気にして欲しくない」という気持ちが言葉から伝わってきたので、気にしないことにした。


この時の奈月にとって透夜は初めて出来た「友達」だった。


その後、半年も経たないうちに沙希という友達が出来るがそれはまた別の話。


初めて心から信頼できる友達が出来た奈月にとってこの瞬間も忘れられない瞬間だった。


--------------------


翌日から透夜は小学校へ転入生として通うようになり、幸いにも奈月と同じクラスとなった。


奈月は学校でも施設でも男子はもちろん、女子とも気が合わない。

どうやらそれは透夜も同じで、転校してきた初日から群がってくるクラスメイトがかなり嫌だったのか、はっきり「失せろ」と言って初日から嫌われ者となった。


透夜は常に1人でいるので、奈月は透夜の元へ行って話しかける。



「透夜、友達は作らないの?」


「……あんな低レベルなやつらと一緒にいたくない」


「低レベルって……。ボクたち小学生なんだよ? 透夜が背伸びしてるだけなんじゃないの?」


「……かもな」



そんな話をしていると、クラスメイトの男子が席に座っている透夜へ話しかけてきた。



「なあ、転校生。こんな男か女かよくわからないやつより、俺たちと仲良くしない?」


「……。」


「友達は選んだ方がいいんじゃない?」



学校でさえ「男扱い」される奈月に驚いた透夜だが、俯いて悲しそうな顔をしている奈月を見て、話しかけてきた男子を拒絶する。



「お前には関係のない事だ。……ていうか、お前誰?」


「なんだと? 俺の名前は……」


「興味ないし、どうでもいいからさっさとあっち行け」


「ちっ……」



「親切にも忠告してやった」つもりでいる男子は、透夜に舌打ちをして去って行った。


奈月は、自分を「女の子」として見てくれるだけでなく、「男扱い」してくる男子を自ら拒絶する透夜に感謝と申し訳ない気持ちがいっぱいだった。


しかし謝ったところできっと昨日と同じことを言うのだろう。

ならば、感謝の気持ちだけでも伝えようと奈月は思った。



「ありがとね、透夜……!」


「別にお礼を言われるようなことをしていない。お前が女子だなんてことは当たり前のことだろ? 俺にはむしろ、あいつらの気持ちがわからない」


「それでもボクは嬉しいよ! ありがとう、透夜……それと、ボクの名前は『お前』じゃなくて『奈月』だよ?」


「……わかってる。授業が始まるから、お前も早く席につけ」


「あ、また!!」


「はいはい」


「もう!」



透夜はなかなか名前で呼んでくれないことを奈月は気にしていたが、実は透夜にとって異性を呼び捨てで呼ぶ機会は初めてで照れているだけなのだが、奈月は他人と馴染む瞬間に照れた経験がないので気持ちがわからないだけだった。


しかしその後、透夜が「奈月」の名を呼んでくれるようになった機会が訪れる。


「乙女として輝くことを願った女剣士が起こした事件」とともに。


--------------------


透夜が転入してから1週間が経った。


奈月を「男扱い」する男子をことごとく拒絶し孤立した透夜に対し、いじめが始まってしまう。


ある意味この経験は、高校生の透夜を構成している一部となる経験となるが、小学生の透夜にとっては初めて受けるいじめだ。


奈月を「男扱い」するのに対し、透夜は「人間じゃない扱い」を受けるようになる。


いじめの内容自体は至って単純だが、犯人が特定できない事に関しては複雑だった。


ある時は給食がわざと配膳されなかったり、ある時は机や教科書にいたずら書きされたり、そしてまたある時は、物を隠されてしまったりした。


奈月は「自分を庇ったばかりにいじめられている」とすぐにわかった。


実際に他の男子からは「奈月を男扱いしない透夜は人間ではない」という認識があった。


透夜が何かしらいじめを受ける度に奈月は「大丈夫?」と聞くが、透夜は一向に「大丈夫だ、気にするな」と言うばかり。


それが1ヶ月程続いたある夜のこと。


「どうにかしなきゃ」と思っていた奈月は、夢の中で自分と会話していた。



「あれ!? ボクがもう1人!?」


「ボクは『女の子でありたい』と願っているボクだよ。今日はボクに提案があるんだ」


「え、よくわからないけど、何?」


「このまま透夜がいじめられるのは嫌だよね?」


「もちろんだよ! どうにかしなきゃ!」


「でもそれって、ボクがちゃんと『女の子だよ』って周りに認めさせれば、いじめがなくなるんじゃない?」


「でもどうやって……? 女の子らしい服なんてボクは持ってないよ?」


「大丈夫! だってボクには『輝かせる為の美しき剣』という力があるのだから」


「それでボクが『女の子だよ』って証明できるの?」


「もちろん! 起きたら辺りを見回すだけでいい。あとはボクに任せて!」


「うん、わかった!!」



朝を迎え目覚めた時、何故か鮮明に覚えていた夢で自分に言われた通り、辺りを見回す。


すると、自分が何度も何度も握って振ってきた努力が刻まれた竹刀が目に入って止まる。


立ち上がって竹刀を手に取る。馴染んだ竹刀を握っているはずなのに、まるで別の竹刀……というより、握ったこともない斬れ味抜群の刀を握っているのではないかと思ってしまう。


その瞬間、自分ではない自分が身体を支配した。


--------------------


竹刀を入れた竹刀袋とランドセルを背負って学校へ登校する。


施設には「登校する時はみんなと一緒に」というルールがあるので、いつもならみんなと(奈月は透夜と)登校するのだが、この日はルールを無視して登校してしまった。


奈月に罪の意識はあった。しかし、実際に身体を動かしているのは奈月ではなく『輝かせる為の美しき剣』であるため、奈月にはどうすることも出来ない。


そして、その力を発揮する瞬間がやってくる。


奈月本人は「誰が透夜をいじめているのか」がわからなかったが、『輝かせる為の美しき剣』は賢かった。


この日、あえて透夜と距離を取り「いじめを見て見ぬ振りをする役」に徹することで、犯人が透夜のいない間に犯行する瞬間を目撃する。


そしてその犯人に問い詰めた。



「ねえ、何をしているの?」


「あ? 見てわかるだろ? お前を庇ってるお馬鹿さんに痛い目を見せるんだよ。言っとくが、やってるのは俺だけじゃないからお前がチクった瞬間、お前も同じことされるからな?」


「へぇ、そうなんだ! ……それなら」


「ん?」



奈月は竹刀を持って、犯人の右腕に当たるか当たらないかぐらいのスレスレで竹刀を横に振った。



「は? お前何がしたいん……あああああ!!!!」



犯人であるクラスメイト男子は、突然の激痛に右手を押さえて転がる。



「痛い!! 痛い痛い痛い痛いぃぃぃ!!!」



突然痛みに絶叫するクラスメイトを見て、他のクラスメイト3人が彼に駆け寄って「おいどうした? 大丈夫か!?」と聞きながら、押さえた右手を見る。


しかしそこには傷が何1つも無い。駆け寄ったクラスメイト達のうち1人が奈月を睨んで問う。



「奈月! お前、何をした!?」


「透夜をまたいじめようとしたから、注意しただけだよ?」


「嘘言うな! その竹刀でこいつの右手を叩いたんだろ!?」


「……そういえば、君たちはこっちを見てクスクス笑っていたよね? だったら同罪」


「はぁ? いい加減にし……ああああっ!!!!」



こっちを見てクスクス笑っていた男子3人もまとめてスレスレで斬る。


彼らが味わっている痛みとは、腕を「斬りつけられた痛み」。竹刀をスレスレで振っているため「切り落とされた痛み」程まではいかない。


この能力には、竹刀や木刀などでも業物同様の斬れ味で斬る効果がある。しかし、この能力の都合がいい点は「美しき剣であるため、決して(けが)れることがない」部分であり、人を実際に斬って仕舞えば剣が血で(けが)れてしまうので、肉や皮膚が実際には斬れないようになっている。


ただし髪の毛や伸びた爪のような切っても剣が(けが)れない物に関しては、普通に斬れてしまう。


4人もの男子が痛みに絶叫していれば、騒がしい教室で授業の準備をしている先生も流石に気付いた。



「4人ともどうした!? 奈月ちゃん、竹刀で叩いたりした?」


「いいえ。ボクは竹刀を振っただけです」


「なんでこんなところで竹刀を振る必要があるんだ!?」


「透夜の机にいたずらしようとしたからですよ? ……というか先生。なぜ気付かないんですか?」


「んむ……」



いじめをどうにかしたいと考えるなら、1番良い……とは言い切れないが、先生に相談するという手もある。


しかし、このクラスの担任も「見て見ぬ振り」をする人で、透夜が気にしないのをいいことに「このクラスにいじめは無い」としているのだ。


奈月自身は、先生が見て見ぬ振りをしている理由に気付けないでいたが『輝かせる為の美しき剣』はだいたい予想がついていた。


ようやく理由がわかった奈月と『輝かせる為の美しき剣』の意見が一致した瞬間、先生にも同じように制裁が下される……が。



「何してるんだ、奈月?」



ちょうど透夜が教室内に入ってきて、奈月に問いかけた。


奈月は竹刀を竹刀袋にしまい込み、透夜に笑顔を向けて答える。



「ううん、なんでもないよ?」


「……。」



奈月が能力を解除した瞬間、4人は激痛が消えて気絶する。

どうにか斬られずに済んだ先生も恐怖から我に返り、4人を保健室に連れていく為「席について大人しくしていなさい」と指示を出した。


この小学校で「奈月が何をしたのか」がわかったのは、奈月本人と既に「重度の中二病患者」となっていた透夜のみだった。


児童4人が気絶したことについては、担任に責任が問われた。


担任は「天利 奈月が竹刀で4人を叩いた」と言い訳をしたが、そのような痕が見受けられないし、叩いた目撃情報が皆無だったため、奈月が疑われることは無かったが、今まで特例として認められていた「剣道の稽古がある日のみ学校に竹刀を持ち込んでも良い」というのが全面禁止となった。


事件は「今年いっぱいで担任を解任し、他校へ異動」という方向で解決するかと思われたが、奈月が起こす事件はここからが本番だった。


--------------------


奈月が能力を発動して以来、学校では「奈月が男扱いされること」と「透夜がいじめられること」が一切無くなった。


しかし、奈月の中ではまだ問題が2つあった。


1つは、まだ施設で男扱いされているということ。


そしてもう1つ、奈月自身が「女の子」として認識されているわけではないということ。


透夜がいじめに遭うことはなくなったが、奈月の本当の願いは「周りにも女の子として見られること」だ。


奈月はその事について悩むが、もう1人の自分……正確には『輝かせる為の美しき剣』が「剣を振ればいいんだよ」と言い続ける。


目の前で激痛に苦しんだ4人を見た奈月は拒否し続けるが、最終的にまた剣を握ってしまう。


この能力における「代償」とは、奈月が心の中で持ち続ける「女の子らしさ」を失っていくというものだ。

しかし、奈月はその事に気付いていない。

それどころか、そもそも「代償」があることすら知らない。


『輝かせる為の美しき剣』とは「女の子として輝かせる」為の力ではなく、「女剣士として輝かせる」為の力なのだ。


皮肉にも、技を磨く為に剣を振っているわけではない奈月にはぴったりの能力となっていた。


そして、自分の能力を勘違いしている奈月は再び、施設で自分を「男扱い」してくる男子を斬りつける。



「そうやって竹刀を持っていると、余計に男みたいだな! あははは!!」


「ならこの斬れ味。試してみる?」


「お前、それ竹刀なんだから斬れるわけないだろー?」


「せいっ!」



またも当たらないスレスレで竹刀を振った。



「なんだよ奈月! 全然当たって……うあああああっ!!! あああっ!!!」


「どう? この斬れ味。ボクを男扱いしたり、挑発したりしなければ、こんな痛みを味わわずに済んだのに」


「ふぅ……ふぅ……ふぅ……奈月ぃぃぃ!!」


「おいおい、なんの騒ぎ……ってどうした!?」


「君もボクを男扱いすると、こうなるよ?」


「奈月、お前……。前よりもなんだか少し、男前になってないか?」


「話を聞いてなかったの? じゃあ、同罪」


「え?」



施設内で2人目の犠牲者が出ようとしたその時、2人の間に透夜が入る。


透夜の存在を瞬時に気付いた奈月は手を止める。



「何をしてるんだ、奈月?」


「ねえ、透夜。どうして今回もこのタイミングでボクの名を呼ぶの?」


「……俺は何をしているのかと聞いてるんだ。質問に答えてくれ」


「ボクはね、ボクのことを男扱いする人や、透夜をいじめる人を懲らしめているんだよ? 透夜も質問に答えてね」


「奈月が呼べと言ったから呼んでいるだけだ。たまたまタイミングが前回と被っただけだろ?」


「前回と……ってことは、この前ボクが何をしたのかわかってたんだね?」


「ああ、そうだ」


「だったら止めないでー? これはボクがボク自身の為にやっていることなんだ。こうしていれば、ボクは女の子として認められる」


「奈月、それは違う。お前がその力を使うことで本来持っている女の子としての魅力を徐々に失っているんだ……それがわからないのか?」


「ボクには透夜の言っていることがわからないよ……邪魔をするなら、いくら透夜でも容赦はしないよ?」


「……女と戦うのは嫌だが、奈月を止める為なら仕方ないな」


「こんな時でも、ボクを女の子として見てくれるんだね……。いくよ、透夜!」


「来い、奈月!!」


「せああああっ!!!」



奈月は相手が透夜とはいえ、他の男子同様に「斬りつけられる痛み」を味わわせようと当たらないスレスレに剣を振る。



「ごめんね、透夜」


「……。」


「え?」



今までの4人と同じようにしているはずだが、透夜は痛みで転がらない。


奈月は激しく動揺した。



「なんで!? どうして!? 透夜は痛くないの!?」


「ああ、痛くない」


「なら、今度こそ本気で行くよ!」


「……。」



お世辞にも広いとは言えない廊下で、一方的に竹刀を振る奈月と、それを受ける透夜。


奈月が意図せず竹刀を当ててしまった廊下の壁には能力による斬撃の跡が残るが、透夜が激痛で転がる様子が全く見えない。


奈月は覚悟していた。


今まで剣の斬撃を受けた4人が奈月に向けた恐怖の視線を透夜からも向けられてしまうことを。


しかし、何度剣を振って当てても倒れない透夜を見て、奈月の心に炎が熱く燃え上がる。


その炎は敵を倒せない苛立ちはなく、自分を防御だけで止める為に立ち続けてる透夜への恋心だった。


透夜が自分と同じように何かしら能力を使って自分を止めに来ていることは何となくわかっていたが、それでも「男勝りの女剣士・天利 奈月」の全力攻撃を自分が出せる全力を以って凌いでいる「自分(奈月)を女の子として見てくれる男・黒山 透夜」に恋せずにはいられなかった。


施設にいる子供のほぼ全員が2人のやりとりを見ているが、誰も動けず声も出せない。


それは2人の攻防が子供の域を超えているからではなく、攻撃を受けてしまった男子でさえ痛みを忘れて見入ってしまうほど、奈月の顔が「目の前の男子に恋する女子」だったからだ。


透夜は、竹刀が自分の身体に当たる痛みに耐えながら奈月に問いかける。



「奈月。散々お前を男だと馬鹿にしていた奴らを見てみろ……どんな顔してる?」


「わからない。透夜が相手だから、他の男子を見ている余裕がないんだ……」


「そうか……ならば」



透夜は一瞬だけ武装型を発動して、透夜の腕に当たる竹刀の反動を『拒絶』で強化して弾く。


急に強くなった反動で奈月の手から竹刀が離れると、透夜に対する恋心を抑えきれなくなった奈月は透夜を全力で抱きしめる。



「ねえ、透夜」


「な、何?」


「ボクの名前を呼んで」


「奈月?」


「そうだよ。……透夜、ボクね」


「ん?」


「透夜のこと、大好き!」


「……。」



奈月は元から「自分は女の子でありたい」と願っていたため、能力を発動していた透夜に触れた瞬間から、能力を使って剣を振った「代償」が拒絶されて本来の「女の子としての魅力」を取り戻していた。


この日以来、かつては奈月を「男扱い」していた施設やクラスメイトの男子達は「恋する女の子である奈月」を毎日見ているうちに、奈月を女の子としてしか見られなくなり、2度と「男扱い」して馬鹿にすることが無くなった。


奈月の能力『輝かせる為の美しき剣』はその後も使えるが、高校生になるまで使わなかった。


奈月に竹刀をプレゼントし「重度の中二病患者」にした張本人である虹園はその結果に満足し、能力で壁を傷付けたことを不問にした。


奈月の能力により激痛を味わった人たちと、それを目撃した人の記憶は、奈月が高校生となり紅ヶ原女子高等学校の代表となる際に消されることとなり、当時奈月が起こした事件については全て解決となったのだった。


--------------------


そして現代に戻り、5年振りに透夜と会う日がやってきた。


約束の10時に、沙希と2人で咲苗の元へ訪れる。


一軒家のインターホンを鳴らして出てきたのは、まず咲苗だった。



「やあ2人とも来たねー! 上がって上がって!」


「お邪魔しまーす!」


「お邪魔します」



家に上がると、透夜の姿は無かったので沙希が咲苗に質問する。



「咲苗姉さん。透夜は?」


「透夜ならもうすぐ帰ってくるから、少し待ってて! ……美味しいケーキを買わせに行ってるのよう!」


「なるほど、そうなのですか」


「愛しい王子様に早く会いたい気持ちはよーくわかるけど、美味しいケーキの為に我慢して頂戴ねっ!」


「わっかりましたー!!」


「奈月。透夜は王子様とは程遠いと思うのだけれど?」


「えー、そうかなー? ボクにとってはいつまで経っても王子様だよ? まぁ、白馬……ではないけど」


「そう。私にとっては姫をさらう黒い騎士の方が近いと思うわ」


「うふふふ! 恋する乙女っていいわねぇ! ……っておお? 噂をすれば」



玄関の扉を開けて「ただいま」という声が聞こえたので、2人は競争するかのように玄関へと向かう。


最後に見た時よりも遥かに男らしくなった透ける夜を見て一瞬動揺した2人だが、5年経った今でも恋をしていると実感する。



「おっかえりー!」


「おかえりなさい」


「……2人とも久しぶりだな」



遅れて玄関へとやってきた咲苗は手を叩きながら「はいはい、3人とも早く手を洗ってこっちに座って座ってー!」と子供扱いをしてきたが、特に突っ込むこともなく、言われた通りにする。


奈月も沙希も透夜に聞いて欲しい話ばかりだったようで、透夜にとって疲れる1日となった。


6年前に奈月が透夜にした告白の答えは今も聞いていないが、奈月は気にしていなかった。

というのも、当時は気にしていたが次第に「友達としてだと受け取ったのでは?」と思うようになったからだ。


いつかもう1度。すぐ隣に友であり恋のライバルでもある沙希がいるが、もう1度告白をするつもりでいる。


でも今は再会を喜ぼう。そして、また明日から共に頑張ろうと思った奈月だった。




呼んでくださりありがとうございます。夏風陽向です。


今回は奈月を中心とした物語でした!


本来の予定ではこの後、奈月が紅ヶ原女子高等学校で起きた事件を解決する話を入れる予定でしたが、それはまた沙希を中心として物語が書けたらにしようと思います。


本編の更新は、ちょっと難しくなってしまったので、遅くて来週の水曜には投稿したいと思います。



今後ともよろしくお願いいたします!

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