新しい扉
ジークベルトにはないものを身に付けようと、悪あがきした結果、アタシは武器にムチを使うことで落ち着いた。
剣での鍛錬もそうとうしたけれど、『最弱種族の竜槍者』のジークベルトは剣を使っていたから、得意武器を変えるのはアリだと思った。
ジークベルトが使いそうにない武器で、アタシに向いている武器。
そう考えて思い付いたのが、ムチだった。
ムチキャラは『最弱種族の竜槍者』には出ていない。
それに、ムチは前世でたまに使っていたから慣れているし、ちょうどいいと思った。
練習してみると、ムチはしっくりとアタシの手に馴染んだ。
魔法との相性も良いようで、こうなってくると、アタシには剣よりも遥かに向いている武器となった。
「さあて、答えてもらいましょうか」
アタシの足の下で、後ろ手縛りにされた背中を見せて悶える魔族の男に、アタシは口の端を吊り上げて笑みを見せた。
他の魔族も縛り上げて、納屋の隅に転がしてある。
「くっ、何だこの縛り上げ方は!」
「うふふ。アタシの一番得意な縛り方よ」
魔族の男を足で転がして、仰向けにする。
男の身体には縄がかけられているけれど、アタシは身体を縄が這うように縛り、身体の正面で六角形が出来るように形作った。
アタシの一番得意な、亀甲縛りが出来上がっていた。
「魔族の身体に亀甲縛りもなかなかおつなものね」
せっかくだから、アタシは男の上着を脱がして縛り上げた。
狼男のような体躯を持つこの魔族は、手の先から肩にかけて、獣のようなこげ茶色の毛を生やしていた。
毛深い場所では縄が毛に埋もれ、露出している肌との境目から縄が現れて、むっちりとした肌と筋肉に食い込んでいる。
場所によって見え隠れする緊縛は、チラリズムに似た色気があっていいものねと、アタシは一人悦に入る
他の魔族たちも亀甲縛りで縛り上げてから、床に転がしてあった。
縄を外そうとうねうね動いているけれど、アタシの緊縛はそう簡単に抜け出せるものではない。
しかも動けば動くほど……。
うふふふ。
「くそっ。ほどけ!」
足元の魔族が、身体をくねらせながら暴れ、アタシを睨む。
「アタシ、アナタに聞きたいことがあるのよ」
「誰が答えるか!」
魔族は反抗的な態度を見せる。
縛り上げられて何も出来ない状態だというのに、まだまだ元気が有り余っているようね。
縄を引きちぎろうとして、魔族は顔を赤くしている。
「ぐぐっ。何故切れない……!」
普通の縄だったら、簡単にちぎれていたでしょうね。
でも、これはアタシが用意した特別製。
肉体強化型の魔族でも、あっさりちぎれたりしないのよ。
「このくそ悪魔族があ!」
「立場が分かっていないようねえ」
アタシは抵抗を続ける魔族を見て、艶然と微笑んだ。
「でも、アタシ。そういうの嫌いじゃないわ」
持っていたムチを振って、ピシリと地面に打ち付ける。
「元気な子が相手だと思うと、ゾクゾクしちゃうの」
魔族がビクリと身体を揺らし、ようやく怯えた顔を見せた。
「アタシがアナタの新しい扉を」
魔族の腹の上に右足をのせて、アタシは顔に笑みを浮かべながら右足へ体重をかけた。
「開いて、あ・げ・る」




