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捕われて聞いたのは(2)

 アタシはとんでもない話を聞いて、思わず身体に力が入り、アタシを吊るしているであろう鎖がカチャリと鳴ってしまった。

 しまった!

「起きたのか?」

 アタシに誰かが近寄って来る足音がする。

 アタシは呼吸を落ち着かせた。

 この場をマリアンネと脱出出来ればそれでいいと思っていたけれど、そうもいかなくなったわね。

 魔族を酷い目に合わせているなんてデマを、誰が吹き込んだのか聞きださなきゃ。

 アタシは近寄って来る魔族との間合いを、足音で計る。

 相手はアタシの正面から近付いて来ていた。

「おい、起きて――」

 ここだわ!

 声の距離がアタシの攻撃範囲内に入った。

 アタシは目をカッと見開く。

「こいつ! 起きてやが――」

 腕と腹に力を込めて、両足をぐいんと持ち上げ、アタシの正面にいる犬のような尖った耳が頭から生えた魔族の男の首に足をかける。

 そして、足を魔族の男の首に絡みつかせ、アタシは身体を捻って足だけで魔族の男を宙に浮かせた。

「な! がっ!」

 足の間で焦る魔族の男を、土が剥き出しの地面に、頭から叩き付ける。

「ぐうっあ!」

 頭を強く打った魔族の男は、アタシが足を離すとそのままバタリと倒れた。

 よし!

 まずは一人!

 アタシはさっと視線を走らせ、状況を確認する。

 場所はどこかの納屋。

 地面には魔法陣。

 たぶん魔法封じの魔法。

 意外と用意周到ね。

 敵の数は奥に残り四人。

 驚いてとっさに動けないでいる。

 マリアンネは……アタシと同じように隣で吊るされていた。

 吊るしているのは、天井から延びている鎖。

 鎖の先にはフックが付いていて、アタシたちは手首を拘束している縄を、フックに引っ掛けられて吊るされていた。

 これならいける!

 腰を曲げて足を頭上まで持ち上げ鎖に巻きつかせ、アタシは身体を固定するとフックから縄を外した。

 そして、フックを手で掴み、足を鎖から離してクリンと身体の上下を戻すと、そのまま地面にふわりと下り立った。

 アタシの手を縛っていた縄も、パラリと簡単にほどき、両手を自由にする。

「取り押さえろ!」

 二人の魔族がアタシに両脇から襲いかかって来た。

「うふふ」

 アタシは余裕の笑みで、スカートを左手で摘まんでまくり上げる。

「何をっ?」

 スカートから見える白い足に戸惑ったのか、魔族たちの目線がアタシの足に集まり、魔族の足が鈍った。

 アタシは太ももに取り付けていたホルダーに入れていたものを右手で探って掴み、取り出すと同時に振り回した。

 ピシンという音とともに、それが地面を叩き付け、軽く土煙が立つ。

 調子は上々。

 とんでもないデマで少しばかり頭に血が上ってしまったけれど、貧血だったからちょうどいいぐらいだわ。

「さあ、かかっていらっしゃい」

 身体検査をしなかったことを後悔するといいわ。

 艶然とした微笑みで、ムチを持ったアタシは魔族を挑発した。


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