避けなければいけないもう一つのこと(1)
クラウスとクラウスの父親に助けられたあと、アタシはアタシを探しに来た馬車で、リーゼロッテと一緒に屋敷へ戻った。
アタシはすぐにベッドへと連れて行かれ、狙われたリーゼロッテはそのまま帰らせることが出来ないので、リーゼロッテの屋敷に使いを出して襲撃があったことを伝え、リーゼロッテの屋敷から迎えを出してもらった。
リーゼロッテを見送ることは出来なかったけれど、表に出たマリアンネから、リーゼロッテと迎えの者がずっと謝罪していたと伝えられた。
そして、ようやく落ち着いたアタシは、背中の傷の影響か、クラウスと会えた嬉しさからか、高熱を出して寝込んでしまった。
背中に傷があるせいで、ずっとうつ伏せのまま寝込んで二日目の昼に、父と母がやって来た。
ケガをしたら飛んで帰って来るぐらいには思われていたのかと驚いたけれど、ベッドに寝ているアタシの様子を見に来た父と母は、何かを期待するかのような顔で現れ、アタシと少し喋ると、落胆した顔をして部屋から出て行った。
それ以降、一度も顔を合わせていない。
ベッドに寝込んで三日目の夜。
だいぶ熱の下がった頭で、両親のあれは何だったのか寝ながら考えた結果。
あれは、言葉遣いが女言葉から戻っていることを期待されていたのね……。
熱で変わったのだから、熱で戻るのではないかと。
どうりで背中の傷について、何も聞かれなかったはずだわ。
父と母はアタシの体調よりも、言葉遣いの方が重要ってことね……。
まあ、いいわ。
今に始まった話じゃないもの。
それよりも、アタシには考えなければならないことがあるのよ。
アタシは枕に沈めた顔の向きを、右から左に変えて頭を切り替える。
今回の襲撃について。
アタシは今回の襲撃に覚えがあった。
思い出しながら、アタシはキュッと眉間にシワを寄せた。
リーゼロッテが襲われて、あわやというところをクラウス親子に助けられる。
それは『最弱種族の竜槍者』の後半巻で明かされる、リーゼロッテの過去話と同じだった。
リーゼロッテの過去については、『最弱種族の竜槍者』の中で数回ほど出てくる。
そのうちの一つが、リーゼロッテが襲われて、魔族に助けられた話。
馬車での帰り道、数人の男たちに襲われたリーゼロッテは、剣で斬りつけられ、命を落としそうになる。そこを、少年に助けられ、魔族に回復魔法で救われるという話だった。
その出来事が『最弱種族の竜槍者』のリーゼロッテの価値観を変え、王族の血筋でありながら、魔族側に付いて戦う理由となる。
この時の小説の内容は、リーゼロッテがクラウスを好きで流されて魔族側に加わっているんじゃないかと仲間に言われ、リーゼロッテ自身にも魔族を助けたい気持ちがあることを説明する為に、リーゼロッテが思い出話をする。そして後日、その助けてくれた少年がクラウスだと分かり、リーゼロッテは運命を感じて、ますますクラウスを好きになるという流れである。
この助けられた時期が、リーゼロッテが婚約した年ということだった。




