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避けなければいけないもう一つのこと(2)

 アタシとリーゼロッテが婚約したのは七歳の時。

 その年にリーゼロッテが襲われたなんて話は聞かなかった。

 襲われたのを隠していたのか、それとも襲われていなかったのか、アタシでは確認することが出来ず、ここが本当に『最弱種族の竜槍者』の世界なのか判断することが出来なかった。

 けれど、今回の襲撃があったことで、『最弱種族の竜槍者』のリーゼロッテが婚約した年を正式発表した年だと考えていた可能性が出て来た。

 確かに、普通の婚約なら正式発表するまでは、簡単に解消することが出来る。

 十三歳までの婚約はあくまでお試し期間となっていて、両家に異存がなければ、十三歳の年に婚約を発表することになっている。

 ただアタシとリーゼロッテの婚約の場合は、ボルネフェルド家の政治の道具で、十三歳になるまでもなく婚約は決定事項だったから、リーゼロッテが正式発表を婚約した年だと考えているなんて思わなかった。

 リーゼロッテにとって今年が婚約した年ならば、『最弱種族の竜槍者』のリーゼロッテが言っていたクラウスに助けられた年も、今年ということになる。

 それを裏付けるように、リーゼロッテは襲われ、そこをクラウスに助けられた。

 考えてもいなかったクラウスとの遭遇は、アタシにとって衝撃的だった。

 アタシは遠い目で、先日のクラウスの姿を思い出す。

 まだまだ幼いものの、『最弱種族の竜槍者』のクラウスの面影があって、勇ましくもあり、可愛らしくもあり、前世では見られるチャンスのなかったその幼い容姿に、身体の奥がキュンキュンした。

 これから『最弱種族の竜槍者』のクラウスへと成長するのかと思うと、ワクワクとドキドキが止まらなかった。

 短い邂逅は、アタシに懐かしいトキメキをもたらしてくれた。

 けれど、今のアタシは、そのトキメキに浸っている場合じゃない。

 婚約した年のずれは、アタシには最悪の情報だった。

 アタシは苦々しい思いで歯噛みする。

 ここが『最弱種族の竜槍者』の世界と全く同じ世界なのか、アタシが半信半疑になっていたのには、もう一つ理由がある。

 それは少ないながらも『最弱種族の竜槍者』に出てくるジークベルトの過去と合わなかったから。

 リーゼロッテに価値観を変える出来事があったのと同じように、『最弱種族の竜槍者』のジークベルトにもまた、価値観を大きく変える出来事があった。

 なんとも思っていなかった魔族を、死滅させたいと思うようになる出来事が。

 それにより『最弱種族の竜槍者』のジークベルトは、クラウスやリーゼロッテと敵対し、死ぬまで戦うことになった。

 そこまで魔族を憎むことになる出来事が起こったのが、ジークベルトとリーゼロッテが婚約した日。

 アタシは婚約したのが七歳の時だと思っていたから、その年に事件らしいことが何も起こっていなかったことで、ここが『最弱種族の竜槍者』なのかどうか確信が持てなかった。

 もしかしたら、『最弱種族の竜槍者』と似ているだけで、全く別の世界なのかもしれないとも思った。

 もしもの時を考えて、『最弱種族の竜槍者』のストーリーを避けるために色々と行動しながらも、前世の記憶を思い出した日に感じた安堵を、そのまま享受してもいいのだと思いたかった。

 でも、リーゼロッテが婚約日を正式発表の日だと思っていたのなら、それが起こるのは今度の誕生日パーティーの日となる。

 絶対に避けなければいけないもう一つの死亡フラグが、四日後に迫っていた。


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