定番の脱出方法は
出かけると決めたものの、問題はある。
このドレスを着たままで、屋敷を抜け出すという問題が。
屋敷から街までは、リーゼロッテが乗って来た馬車に、こっそり乗りこむことになっている。
だから屋敷さえクリア出来ればいい。
屋敷の中は誕生日パーティーの準備で、使用人たちがそこら辺じゅうを行ったり来たりしている。廊下に出れば、すぐに見付かりそうだった。
こういう時の脱出の方法は、やっぱあれよね。
アタシは部屋の中のカーテンを集めて、全て結んで繋げた。そして、そのカーテンの端を、窓まで寄せたローテーブルの足にくくり付ける。
「これでいいわね」
アタシはカーテンをぐいぐいと引っ張り、ほどけないことを確認した。
「よしよし」
アタシは窓を開けて、外をキョロキョロと見回す。
外に使用人はいないようね。
今日は屋敷内の準備をすることになっている。
普段、外の仕事をしている使用人たちも、中の準備に借り出されているとマリアンネが言っていた。
「大丈夫そうね」
屋敷の門の方を見ると、先に屋敷を出たリーゼロッテの馬車が止まっている。
「準備は万端」
アタシは長さがたっぷりあるカーテンを両腕いっぱいに抱えた。
「作戦決行よ!」
開けた窓から、アタシは抱えたカーテンを外に投げた。
カーテンは窓から垂れ下がり、二階のこの部屋から、地面までのロープになった。
「うふふ。カーテンロープは定番中の定番よね」
アタシは窓の枠に立つと、後ろ向きになってカーテンを掴んだ。
壁を地面のようにして足を着け、しっかりとカーテンを掴みながら、足と手を交互に動かし下りていく。
今まで鍛えた身体をもってすれば、二階からの脱出なんて簡単よ!
アタシは街への期待に心をワクワクさせながら、地面に下り立った。
一応、左右を確認し、アタシはなるべく草木に隠れながら門へと走る。
誰も止めるものはいない。
うまくいったわ!
門へと辿り着いたアタシは、なるべく音をたてないように少しだけ門を開き、その隙間からするりと外へ出た。
門の外に止まっていた馬車の扉が開き、リーゼロッテが顔をのぞかせる。
「おまたせ!」
アタシはリーゼロッテが待つ馬車の中へさっと入った。
リーゼロッテが奥の席に座り、アタシもその隣に座る。
リーゼロッテは馬車の壁を叩き、御者へ出発の合図を送った。
「楽しみだわ」
「うん。私も楽しみ」
アタシとリーゼロッテは笑い合う。
しかし、なかなか馬車が出発しない。
「合図が聞こえなかったのかしら?」
リーゼロッテがもう一度、壁を叩き、御者に合図を出す。
すると、今度は馬車が動き出した。
馬車はアタシとリーゼロッテを乗せ、滑るように走り出した。




