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街への道は(1)

 馬車は屋敷から離れ、しばらく走ると森の中の道に入った。

 街はこの森を抜けた先にあるとリーゼロッテが教えてくれた。

 アタシは馬車の窓から外を眺める。

 切り開かれた森の道はきちんと整備されているようだけど、道から外れればそこは鬱蒼とした森の中で、生い茂る木々は森に影を落とし、森の中に鬱々とした雰囲気をかもし出していた。

 しかし、そういった森の景色を無視すれば、道に覆い被さるようにかかる木々は木漏れ日を作り、森に挟まれた道はキラキラと輝いて見え、十分に目を楽しませてくれた。

「街までもうすぐねえ」

 街に行けると思うと、ワクワクし過ぎてすっごく興奮するわ!

「そういえば、リーゼロッテは街に行ったことがあるの?」

 アタシは隣に座るリーゼロッテを見る。

 リーゼロッテはアタシの質問に頷いた。

「数回だけ」

「おススメの店とかあるかしら?」

「うーん。喫茶店のケーキが美味しかったよ」

「じゃあ、まずはそこに行きましょうか。美味しいケーキを教えてちょうだいね」

「うん」

 街のことを考えると、ついつい頬がゆるんじゃうわ。

 リーゼロッテもニコニコとしていて、アタシと同じで楽しみにしているのが分かる。

 うふふ。

 早く着かないかしら!

 アタシはそわそわとしながら、まだ森を抜けないのか道の先を確認しようと外を見ると、先ほどより馬車のスピードがゆっくりになっていた。

「あら?」

 そのまま外を見ていると、今度は馬車が完全に止まってしまった。

「どうしたのかしら?」

「街はまだ先なのに……」

 アタシはリーゼロッテと顔を見合わせる。

 リーゼロッテには戸惑いの表情が浮かんでいた。

 たぶんアタシの顔も、似たような表情になっていると思う。

 少し待っても、御者からは何も言って来ない。

 リーゼロッテが前の座席の壁を叩いて、どうしたのか御者に尋ねるが、返答はない。

 馬車に脱輪などのアクシデントがあれば、馬車に乗っているアタシたちにも分かるような揺れがあるはずだけど、それも全くなかった。

 何かがおかしいわ。

 窓から外を確認するも、馬車の小さい窓からでは外の様子がよく分からない。

 辺りはシンと静まり返り、先ほどまでののどかな光景からは一転して、森の暗さが不気味さを漂わせていた。

 窓から見える範囲に、動く姿はない。

 時折、風に吹かれた木々のざわめきが聞こえて来るが、鳥などの動物の鳴き声は全く聞こえなかった。

 嫌な雰囲気ね。

 よくないことが起こりそうな気配がビンビンしていた。

 でも、こうやっていてもしょうがないわ。

「リーゼロッテ。ちょっと外を確認してくるから、馬車の中で待っていてね」

「私が行く」

「あら。こういうのはお姉ちゃんの役目なのよ」

 アタシはリーゼロッテを心配させないように、ニッコリと笑いウインクした。

「行ってくるわね」

 リーゼロッテに反論されないうちに、アタシは馬車の戸を開けて外に出た。

 左右に視線を走らせ、窓から見えなかった範囲を確認する。

 誰もいないわね。

 御者はどうしたのかしら?

 御者台を見るために、アタシは馬車を背にしつつ前方に進む。

「え?」

 御者台を見ると、そこには誰もいなかった。

「どういうこと?」

 すぐにリーゼロッテの元へ戻ろうと、アタシは身体を後ろへ向ける。すると、ローブをまとった数人の男たちが、森の中から出て来るのが見えた。

 そのうちの一人が、手を上げて叫ぶ。

「我を喰らい、その力を封ずることをもって示せ!」

 その叫びと呼応するかのように、地面が光る。

 光は二重の円を作り、その円の内側に複雑な図形を描き出している。

 それが、魔法陣だと気が付いた時には遅かった。

 今の魔法は魔法を封じる魔法。

 攻撃手段を奪われた!

「今のは何?」

 リーゼロッテが馬車から出て来る。

「出て来ちゃダメよ!」


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