嬉しい来訪
玄関ホールにいたリーゼロッテは、大きなカバンを持っていた。
「どうしたの? リーゼロッテ」
「こんにちは。ジークベルト様」
リーゼロッテはカバンを置いて、スカートを掴み、礼の形を取る。
「今日はジークベルト様に贈りたいものがあって来ました」
「贈りたいもの?」
「ええ、それで……」
リーゼロッテが周りをチラチラと見る。
これは二人きりになりたい時のリーゼロッテね。
「とりあえず、アタシの部屋に行きましょうか」
アタシはリーゼロッテのカバンを持つ。
大きさに比べ、カバンは軽かった。
何が入っているのかしら?
アタシは考えながら歩き出す。
リーゼロッテもアタシの隣を歩き出した。
「カバンありがとうございます」
「いいのよ」
部屋に戻ると、マリアンネがお茶の用意をしていた。
「お茶の用意が終わったら、自分の仕事に戻っていいわよ」
「ありがとうございます」
マリアンネが頭を下げる。
アタシとリーゼロッテはソファに座った。
マリアンネはお菓子とお茶をソファの前のローテーブルに置くと、一礼して部屋を出て行った。
「ちょっと早いけど誕生日おめでとうジークベルト」
「ありがとう」
「実は誕生日プレゼントを持って来たんだ」
リーゼロッテがカバンを引き寄せ、その中身を取り出して立ち上がった。
「え?」
アタシはリーゼロッテが出した物を見て驚いた。
それは水色に近い青色のドレスだった。
「ドレスがプレゼント?」
リーゼロッテが両手で広げるドレスは、明らかにリーゼロッテより大きい。
リーゼロッテのドレスじゃないのは確かだ。
「そう。正確には女の子になって、自由に行動する時間をプレゼント!」
リーゼロッテはさらに金色の長いエクステをカバンから取り出す。
金色はアタシの髪の色だ。
「女の子の格好ならジークベルトって分からないだろうし、これなら街に出ても大丈夫でしょ? これで私と一緒に遊びに行こう」
「リーゼロッテ……!」
アタシは口に手を当てて感動した。
リーゼロッテには街に遊びに行けない不満をこぼしたことがあった。
それを覚えてくれていたのね!
アタシは立ち上がり、テーブルを回り込んで、ドレスを持っているリーゼロッテに感情のままギュッと力強く抱き付いた。
「ありがとう、リーゼロッテ!」
「わわっ」
リーゼロッテは抱き付かれることを予想していなかったのか、アタシの抱き付いた勢いに負けて、少し後ろに下がった。
「嬉しいわ! アタシ、ドレスが着たかったの!」
腕の中から解放してリーゼロッテを見ると、苦しさからか顔を赤くしていた。
ちょっと喜びを大げさに表現しすぎたかしら?
でも、嬉しかったのよ!
街に行けることもそうだけど、念願の女の子の服が着られるのよ!
アタシの服は全てオーダーメイドで作られていて、どんな服を作ったか両親に筒抜けだったから、ドレスを作ってもらうことは出来なかったし、街に出ることを禁止されていたから、こっそりドレスを買うことも出来なかった。
せっかく前世の巨体から解放されたというのに、まだ一度も女の子の格好になれていなかったのよ!
「さっそく着てみるわね!」
アタシはドレスとエクステをリーゼロッテから受け取り、スキップしながら寝室に移動した。




