第三部『ルミナス令嬢の逆ハーレム帝国と、絶対女王の輪舞曲』第66話:十翼の戦域降臨と、狂おしき独占の残響。
第三部『ルミナス令嬢の逆ハーレム帝国と、絶対女王の輪舞曲』
第66話:十翼の戦域降臨と、狂おしき独占の残響
「――お前たち、待ちなさい! 初日から私の帝国で戦争なんて絶対に許さないわ!」
白亜の謁見の間を飛び出し、シオンの空間転移魔術によって私たちが辿り着いたのは、新帝国の国境線――天を突く赤き岩肌と、ホログラムの防壁が複雑に交差する
『境界の荒野』だった。
眼前に広がるのは、息をのむほどに圧倒的な、そして歪な軍勢。
黒い魔力を放つ異世界の魔族の軍勢と、近未来の浮遊型魔導戦車を数百万も並べた神聖王国の騎士団。
世界が強制的に融合したことで、因果の辻褄が合わなくなり、時空の歪みに狂わされた別世界の強者たちが、武器を掲げて咆哮を上げていた。
「ハハッ、こいつは傑作だ。別世界の奴らが融合のバグで、お嬢さんの『女王のデータ』に一目惚れして求婚の暴動を起こしてやがる!」
シオンがゴーグルを叩きながら空中キーボードを高速で掃射するが、数百万の軍勢の魔力圧は、空間そのものをパチパチとバグらせるほどに強大だった。
「アサヒ、危ないから俺の後ろに隠れておいで。……と言いたいけれど、君はもう、ただ守られるだけの令嬢ではないんだね」
アレンが私の隣に並び、不敵に、けれど愛おしさに満ちた琥琥珀色の瞳で私を見つめた。
最高魔導宰相である彼の周囲に、世界を包み込むほどの常夜の闇が渦巻く。
「アサヒが前線に立つなら、僕が君の絶対の刃になる! 敵の魔王だろうが皇太子だろうが、全員僕の光で消し飛ばしてあげる!」
ソルの黄金の髪がプラズマを放ち、太陽の神聖闘気が荒野の大地を激しく揺らす。
地球の幼馴染「朝日くん」だった彼の本能が、私を護るために吠えていた。
「ふふ……アサヒちゃん。夕日、アサヒちゃんが傷つくくらいなら、あの数百万のゴミ虫を、今すぐ一人残らずハサミで切り刻んでバラバラにしちゃうね……?」
夕闇の髪を揺らし、完全にハイライトの消えた瞳で漆黒の双剣を構える夕地。
その歪んだ狂愛の殺気は、敵の軍勢すら一瞬で静まり返らせるほどに冷徹だった。
「調律の準備はできているぞ、アサヒ。お前の新しい『神話の力』を、この世界のバグどもに見せつけてやれ」
クロノが漆黒のコートを翻し、黒い歯車を掲げて不敵に笑う。
数百万の軍勢に対し、私を愛する5人の天才たち。
これまでの数々の冒険と激戦を共に潜り抜けてきた、世界で一番頼もしい私の居場所。
「ええ……! 私たちの新しい世界は、誰にも壊させないわ!」
私が強く叫んだ瞬間、胸元の銀の懐中時計と、右腕の七色の刻印が、まばゆい『至高の極光』を放って大爆発した。
ドサリ、と私の背中から、5人の最強の魔力が具現化した漆黒と黄金、そして紫電に煌めく『|巨大な時計仕掛けの十翼《・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・》』がバサリと展開される。
私の瞳は完全な銀色へと染まり、全身から全時空の支配者たる、圧倒的な女王の威圧感が解き放たれた。
『――全軍、武器を収めなさい。私の国で、これ以上の不純な因果は認めないわ』
十翼を一度力強く羽ばたかせると、私の放った紫電の因果の波動が、数百万の敵軍の全域へと一瞬で伝播していった。
カチリ。
クロノの時間調律と私の力がシンクロし、敵の魔王が放とうとしていた黒い魔力も、皇太子の魔導戦車が放とうとしていたレーザー砲のエネルギーも、すべてがプログラムの根底から『強制初期化《・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・》』され、無害な光の粒子となって霧散していく。
「なっ……何という力だ!? 世界のシステムそのものを、一人で書き換えたというのか……っ!?」
敵の魔王と皇太子が、圧倒的な絶対女王の力(無双)の前に、ガチガチと恐怖に震えながらその場に膝を突いた。
数百万の軍勢が、戦うことすらできずに一瞬で完全制圧されたのだ。
「ふふ、これで大人しくなってくれたかしら」
十翼を収め、ふっと元の姿に戻って息を漏らした、その刹那だった。
「――やはり、君は最高だ。俺の魂も、魔力も、すべては君に狂わされるためにあったんだね」
戦闘が終わった瞬間、アレンが物凄い速度で私を背後から抱きすくめ、その広い胸の中に私を閉じ込めた。
アサヒの凛とした美しさに、彼の独占欲は完全に限界突破していた。
「ああっ! アレン、また先を越すなよ! アサヒ、すごかったよ! ああもう、本当にかっこよくて可愛くて、僕が一番にハグしてあげるんだから!」
ソルが怒りながら割り込み、今度は私の右手をギュッと自分の胸に引き寄せ、熱い太陽の瞳で情熱的な誓いのキスを私の手の甲に落とした。
「ふふ……アサヒちゃん。やっぱりアサヒちゃんは、夕日だけの絶対の神様。あの魔王たちに一瞬でも見とれちゃったから、お城に帰ったら、夕日がいっぱい、ぎゅーってして、アサヒちゃんを夕日の温もりだけで染め直してあげるね……?」
夕日のハイライトのない瞳が、狂おしいほどの悦びと純愛で爛々と輝き、私の腰に細い腕を固く回して離さない。
「チッ、調律者として言わせてもらうが……アサヒ、お前が格好良すぎるせいで、俺の心臓の針まで狂いっぱなしだ」
クロノが赤面しながら漆黒のコートで顔を隠し、シオンも
「ハハッ、お嬢さん、こりゃ俺の電脳ハートも完全にハッキングされちまったぜ」
とゴーグルを上げて最高に愛おしそうな笑顔を浮かべた。
「みんな……ありがとう。でも、戦場で奪い合わないでぇー!」
数百万のひれ伏す敵軍の前で、私への重すぎる愛と独占欲を爆発させて、誰が一番近くにいるかで本気の小競り合いを始める5人の最強の男たち。
ハーレムにはまだ全然慣れないけれど、この息の詰まるほどの密度の過保護な温もりこそが、これからの新しい神話をどこまでも強く進めていく、私の最高のエネルギーだった。
敵の魔王たちを完璧に圧倒し、建国初日の大勝利を収めた私たちは、さらに強まった5人の愛の包囲網にガッチリと護られながら、煌びやかな逆ハーレム王宮へと凱旋する――。
(第67話へ続く)




