新章・第二部『ルミナス令嬢の刻印と、崩壊する多元世界の輪舞曲』。第56話反逆の四重奏と、過保護な抱擁。
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多元世界の機械の巨人から向けられた、数万もの赤色レーザー。
アサヒを生贄に捧げよという非情な宣告に対し、彼女を溺愛する4人の男たちの逆鱗が触れました。
異世界の冷たいネオン街で、神話をも超越する最強の反逆バトルが幕を開けます!
新章・第二部『ルミナス令嬢の刻印と、崩壊する多元世界の輪舞曲』。
第56話。反逆の四重奏と、過保護な抱擁
「――放て。因果の不純物を塵に還せ」
機械の巨人の冷酷な音声が響いた瞬間、周囲の高層ビル群から、数万という赤色のレーザー光線が一斉に私を目がけて掃射された。
夜空を埋め尽くす、死の網。
「アサヒ、目を閉じておいで」
アレンの低く甘い声が鼓膜を揺らす。
彼が私の腰を強く抱き寄せた刹那、私たちの周囲に展開されていた
『深淵の障壁』が漆黒の巨大な球体へと膨れ上がった。
ズガガガガガガガガッ!!!!
空間を融解させるほどのレーザーの豪雨が漆黒の壁に弾かれ、激しい火花がネオンの街を白く染め上げる。
数万の即死兵器を片手間で防ぎきるアレンの魔力は、この並行世界に来てさらに底が知れなくなっていた。
「アサヒの髪一本、傷つけさせないって言っただろッ!!」
ソルの怒号が轟く。
アレンの影から飛び出した彼の全身から、超新星爆発のごとき黄金の神聖闘気が噴出した。
「極星太陽光波!」
ソルの両手から放たれた奔流のような光線が、レーザーを放っていた高層ビルの上層部ごと、機械の巨人たちをまとめて消し飛ばしていく。
ネオンの夜空が、ソルの放つ圧倒的な黄金の光で昼間のように塗り替えられた。
「ふふ……アサヒちゃんを狙う悪い機械は、夕日がお掃除してあげる……」
影に潜んでいた夕日が、巨人の足元から滑り出るように出現した。
完全にハイライトの消えた瞳に、私への歪んだ狂愛を宿しながら、漆黒の双剣が美しく円を描く。
ザシュ、ザシュ、ザシュッ!!!
空間の距離すら無視した彼女の
『断絶の十字』
が、巨人のホログラムを形成していた数千の電子コードを、一瞬で微塵切りに切り刻んだ。
「おい、トドメは俺に回せ! 因果の歪みを調律する!」
漆黒のコートを翻したクロノが、黒い歯車を虚空へと叩きつける。
カチリ。
クロノが世界の時間を一瞬だけ狂わせると、再生を始めていた機械の巨人のシステムが完全にフリーズした。
そこへ、アレンが放った巨大なブラックホールが、防衛兵器の残骸ごと巨人を跡形もなく虚無へと呑み込んでいく。
ドゴォォォォォン……ッ!!!
圧倒的。たった4人で、多元世界の最新鋭の防衛システムを完全に蹂躙してしまった。
「はぁ……はぁ……」
戦闘が終わった瞬間、私の右腕の
『紫色の歯車の刻印《・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 》』
が、まるで脈打つようにドクドクと熱を持ち、激しい目眩が私を襲った。
「あ、れ……?」
力が抜け、地面に倒れそうになった私の身体を、4人の手が同時に、もの凄い勢いで抱きとめた。
「アサヒ!? どこが痛むんだい? 俺の魔力を注ぎ込むからね!」
アレンがすぐさま私をお姫様抱っこで抱き上げ、冷たいネオンの地面から私を遠ざける。
彼の琥珀色の瞳は、世界への殺意から一転して、私への過保護な心配で激しく揺れていた。
「アサヒ、しっかりして! 生贄なんて、そんなお母さんの仕掛けた伏線、僕が絶対にぶっ壊してあげるから!」
ソルが私の右手を両手で包み込み、自分の頬にすり寄せるようにして必死に熱を分け与えてくれる。
「アサヒちゃん……痛いの痛いの、夕日に全部ちょうだい……? 痛みが消えるまで、ずーっと、ずーっと抱きしめてあげる……」
夕日が私の背中にぴったりと張り付き、細い腕で私の身体を壊れ物を扱うように固く抱きしめた。
ハイライトのない瞳には、私を二度と誰にも渡さないという底なしの執着が満ちている。
「チッ、刻印の熱が上がってやがるな。アサヒ、無理に意識を保とうとするな。俺たちがいる。お前を誰の生贄にもさせやしない」
クロノが私の額に冷たい手を当て、時空の乱れを抑えるように優しく魔力を流し込んでくれた。
4人の、息が詰まるほどの濃密な愛と過保護な包容。
世界中から敵に回されようとも、この人たちだけは絶対に私の味方でいてくれる。
「みんな、ありがとう……。私、大丈夫よ……」
アレンの腕の中で、ソルの温もりに包まれ、夕日の抱擁を感じながら、私は少しだけ瞳を閉じた。
ネオン煌めくこの『ネオ・アルカディア』のどこかに、お母さまが遺したもう一つの真実があるはず。
私たちは、4人の腕の中に護られながら、異世界の最深部へと足を進める――。
(第57話へ続く)




