第6章。神話 of 古代領域と、紡がれる因果第50話:交差する二つの空と、静止する銀の針。
第6章。神話 of 古代領域と、紡がれる因果
第50話。交差する二つの空と、静止する銀の針
時空のゲートをくぐり抜けたルミナスの目に飛び込んできたのは、息をのむような奇妙な光景だった。
頭上には、二つの空が重なり合うように広がっている。
片方は、彼女がよく知る柔らかな青空。
もう片方は、歯車のような雲が浮かぶ、黄金色に輝く古代の空。
二つの異なる世界の太陽が、天頂で重なり合い、世界の境界線を曖昧に照らし出していた。
「ここが……現代と古代が交わる場所……」
ルミナスが息を漏らしたその瞬間、胸元で「コトリ」と音がした。
彼女が持つ銀色の懐中時計が、ひとりでに激しく震え始めたのだ。
ゴーーーーン……。
遠くから、重厚な鐘の音が響いてくる。
古代領域の眠りを覚ます「目覚めの鐘」だ。その音が響くたび、懐中時計の針が猛烈なスピードで進み、ルミナスの頭の中に強い痛みが走った。
『――思い出しなさい、ルミナス。あなたが何のために時を止めたのかを――』
頭の中に、見知らぬ、けれど懐かしい誰かの声が響く。
まばゆい光が視界を染め、ルミナスの脳裏に、失われた記憶の断片が次々と蘇ってきた。
白い神殿、泣きそうな顔で時計を組み立てる幼い自分、そして、世界が崩壊していく金の光――。
「あ、頭が……! 私は、あの時……!」
ルミナスが記憶の濁流に溺れそうになり、膝をついたその時だった。
「だめだ! すぐにその時計の針を止めろ!」
鋭い叫び声とともに、一人の青年が風のように現れた。
彼は古代の紋様が刻まれた漆黒のコートをまとい、ルミナスの手元へ手を伸ばす。
その瞳は、まるで燃えるような琥珀色をしていた。
「だれ……? あなたは……」
「説明している時間はない! 鐘の音と時計が完全に共鳴すれば、二つの世界が一つに潰れて消えてしまう! 君の記憶と一緒に、すべてがな!」
青年は叫びながら、自身の懐から「黒い歯車」を取り出し、ルミナスの時計にかざした。
ジジジ……と火花が散り、激しく動いていた銀の針が、狂おしい音を立ててピタリと止まる。
同時に、ルミナスの頭痛も嘘のように消え去った。
しかし、あと一歩で思い出せそうだった大切な記憶も、再び深い霧の向こうへと隠れてしまう。
「あ……あと少しで、思い出せたのに……」
ルミナスは悔しさに唇を噛みながら、目の前に立つ謎の青年を見上げた。
青年は冷や汗を拭いながら、真剣な眼差しで彼女を見つめ返している。緊迫した空気の中、二つの太陽が不気味に揺らめいていた。
(第51話へ続く)




