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第6章。神話の古代領域と、紡がれる因果。第47話。クリスタルの迷宮と、魂の共鳴技。

『ルミナス令嬢の失われた記憶 〜二つの世界を繋ぐ時計仕掛けの神話〜』


第6章。神話の古代領域と、紡がれる因果


第47話。クリスタルの迷宮と、魂の共鳴技


バリバリ、バリバリバリ――!


数百年前のお母様ユウコたちの幸せな映像を映し出していた、巨大なクリスタルの壁が、神々が放った紫色の雷撃によって無残に引きちぎれ、凄まじい爆音と共に砕け散った。


その空間の裂け目から姿を現したのは、全身に冷酷な時計の針をまとった、巨大な『時間の守護精霊』たちだった。


彼らが巨大な光の槍を振り下ろすたびに、星のように輝いていたクリスタルの床や壁が、パリン、パリンと涼やかな音を立てて粉々に粉砕されていく。


「アサヒ、絶対に僕の後ろから離れないで! こいつらは一匹残らず、僕の光で消し飛ばしてやる!」


ソルが黄金色の魔導剣を引き抜き、その細い身体から、生まれたての太陽のような『未来(明日)』の黄金の魔力を爆発させた。


彼は地面を強く蹴り上げると、上下左右の感覚が狂いそうなクリスタルの通路を、まるで一本の黄金の流星となったかのように超高速で垂直に舞い上がり、魔獣の群れに向かって真っ直ぐに突撃していった。


「ソル、相変わらず力任せで危なっかしいね。……アサヒ様、僕の隣を離れないで」


アレン様が私の前に一歩踏み出し、掲げた白い手から巨大な黄金色の『時空結界』を展開した。


魔獣たちが放つ紫色の電撃の槍がアレン様の障壁に激突し、激しい爆音と共に弾き返されていく。


衝撃の風圧で私の漆黒の髪とアレン様の白銀の魔導衣が激しくなびいた。


「ソル! 右の本棚の影からもう一体来ているわ!」


ソルの胸からふわりと飛び出した茜色の精霊クレピュスクが、空中を舞いながらソルの死角を指さした。


「分かってる! アレン、左の柱の奴の時間を止めて!」


「了解さ。――『時間停止(クロノ・スタシス)』!」


アレン様が杖を強く床に突きたてると、黄金の光の波動がクリスタルの空間を駆け抜け、ソルの背中を狙っていた魔獣の動きが、砕け散るガラス と破片ごと空中で『ピタリと静止して』固まった。


普段は私を挟んで、目線すら合わせようとしない二人の少年。


なのに、乱舞する魔獣の爪が私を掠めようとした瞬間、ソルの放った黄金の流星と、アレン様の白銀の時空の刃が、まるで一本の光の鎖のように空中で完璧に交差し、敵の身体を弾き飛ばした。


「遅い!!」


「そっちこそ、背中ががら空きだよ!!」


唇の端をわずかに吊り上げ、一瞬だけ重なる黄金色の瞳と瞳。お互いの呼吸のすべてを肌で測り合うようにして、二つの異なる光の円舞曲(ワルツ)が、きらきらと輝くクリスタルの迷宮を美しく切り裂いていく。


しかし、神の最高位の精霊たちの猛攻は凄まじかった。


傷を負っても瞬時に周囲のクリスタルを吸い込んで再生する精霊たちの前に、アレン様の結界がピキピキと音を立てて砕け散り、ソルも空中からはじき飛ばされて壁へと激しく打ち付けられた。


「くっ……! 再生が早すぎる……っ!」


二人の身体から魔力が消えかけ、巨大な神の槍が容赦なく私を押しつぶすために天から振り下ろされる。


(いやだ……! 誰も死なせない! 過去を呪って立ち止まるのは、もう終わりなんだ!)


私は恐怖を完全にかなぐり捨て、胸のポケットの懐中時計を強く強く握りしめながら、天の神々に向かって両手を真っ直ぐに突き出した。


私の魂の奥底からあふれ出したのは、あの生まれたての未来の熱――『朝焼け と オレンジ色』の魔力のすべてだった。


相手を「助けたい」と強く願う16歳の私の気持ちに呼応して、私のオレンジ色の光がさらに眩しい火花を散らして爆発する。


新しい共鳴魔法――


『刻限の輝石(クロノ・ルミナス)』


の光が迷宮全体へと波打って広がると、精霊たちが創り出していた不気味な紫色の空間が、一瞬にして温かい朝焼けのオレンジ色へと塗り替えられていった。


「みんな、今よ!! 私の光と一緒に、あの神様たちを打ち破って!」


4人の視線が、その極限の嵐の中で完璧に交差した。

茜色、


アメジスト色、


黄金色、


そして私の朝焼けのオレンジ色


――四つの異なる魔力が、神殿の空間を虹色の烈風となって激しく吹き荒れる。


まずはクレピュスクが茜色のドレスを翻し、何千ものアメジスト色の光の矢を一斉に放った。


その精霊魔法の矢が敵の視界をすべてアメジスト色の光の粉で埋め尽くし、冷酷な光の槍の動きをガチリと縫い止めた刹那、アレン様の杖がキィィィンと高い音を立てて放つ黄金の時空魔法が、神の時間の流れをグニャリとねじ曲げ、ソルの足元に次々と風の足場を創り出した。


アレン様の時空魔法が神の防壁をパリンと叩き割っていく。


「アサヒの光を……みんなの『いま』を、絶対に消させない!!!!!」


ソルはその風の足場を蹴り、私の放ったオレンジ色の熱をその刃に120%吸い込ませ、オレンジの炎をまとって天空へと一気に跳躍した。


ソルは無言のまま、神の文字盤の真ん中へ向けて一直線にブレの無い光の軌跡を描き、一本の巨大な黄金の光の槍となって空中を鋭く滑空していく。


ソルの掲げた魔導剣から放たれる黄金の光の残影と、アレン様が時空を加速させる白銀の風が、私の放った朝焼けのオレンジ色と空中で完璧に一つに溶け合い、天を衝くほどの巨大な光の螺旋の竜巻となった。


そのすべての光と音の嵐の真ん中を、ソルの放った渾身の光の刃が、アレン様の魔法に導かれるようにして、神の心臓部へ向かって眩しい閃光と共に激しく炸裂した。


ズガガガガガガガガァァァン!!!!


凄まじい光の爆発と共に、時間の守護精霊たちは光の粉となって跡形もなく砕け散り、神殿を覆っていた冷たい運命の暴風がサラサラと音を立てて元の穏やかな朝焼けの姿へと戻っていった。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


すべての敵を退け、世界に穏やかな朝焼けのオレンジ色が戻ってくる。


ソルが私の元へ着地し、私の右手をその細い手でぎゅっと包み込むように握りしめてくれた。


アレン様も、私の左隣に静かに寄り添い、黄金色の瞳で私の顔を優しく見つめている。


過去は変えられないけれど、この仲間たちと手を繋いで生きている『いま』の温もりは、何があっても絶対に変わらない本物の奇跡だ。


お母様ユウコが遺した壁画の謎、そして、胸に秘めたじれったい恋と友情。


二つの世界の未来をその手で掴み取るための、ハラハラドキドキの壮絶なる時計仕掛けのファンタジーは、最初の精霊を打ち破ったことで、いよいよお母様たちの過去の神話の核心が眠る


【クリスタル迷宮の最深部】へと、


激しくその運命のネジを巻き直していこうとしていた。


(第47話・おわり)

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