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第6章。神話の古代領域と、紡がれる因果。第46章。神話の古代領域と、先祖たちの残影。

『ルミナス令嬢の失われた記憶 〜二つの世界を繋ぐ時計仕掛けの神話〜』


第6章。神話の古代領域と、紡がれる因果


第46話。神話の古代領域と、先祖たちの残影


至高神の圧倒的な槍を私の『朝焼けのオレンジ色』の魔法で弾き返し、二つの世界線を完璧にメビウスの輪へと繋ぎ直したあと。中央の時計仕掛けの神殿の奥、巨大な時計の文字盤の真ん中にカチリと音を立てて開かれた、まばゆい光のゲート。


「さあ、みんなで手を繋いで。この光の向こう側が、お母様たちと先祖の因果が眠る、本当の始まりの場所さ」


アレン様が白銀の魔導衣の裾を夕風に揺らしながら、その黄金色の瞳を優しく細めて私を見つめた。


私、ソル、アレン様、そしてソルの胸にしっかりと抱えられた精霊クレピュスクの4人は、互いの存在を強く確かめ合うようにして手をきつく繋ぎ合い、渦巻く光のゲートの中へと同時に飛び込んだ。


視界が激しい茜色とオレンジ色の光の津波で埋め尽くされ、激しい時空の浮遊感が全身を包み込んでいく。



(……チクタク、チクタク、チクタク……)



耳の奥で、ひどく重厚で、まるで大聖堂の鐘のような深い秒針の音が規則正しく響いていた。


ハッと目を開けると、そこには、先ほどまでいたきらびやかな神殿とは全く違う、息をのむほどに神聖で、どこか懐かしい世界が広がっていた。


「わあ……! すごい、キラキラしてる……!」


ソルの胸の中で、クレピュスクが茜色の瞳を丸くして歓声をあげた。


そこは、見渡す限り透明なクリスタルガラスでできた、巨大な大迷宮のような古代の神殿だった。


壁も床もすべてが夜空の星を閉じ込めたかのように青白く発光しており、私たちが一歩歩くたびに、床のクリスタルが「カラン、カラン……」と涼やかな氷のような音を立てて波紋を広げていく。


窓の外を見上げると、そこには一日中、生まれたての美しい『朝焼けのオレンジ色』の空がどこまでも広がっていた。


世界の時間が生まれる前、数百年前にお母様ユウコとソル、アレンの先祖たちが暮らしていたという、伝説の【神話の古代領域】。


「アサヒ様、足元が少し滑りやすいから気をつけて。僕のすぐ隣を歩くといいよ」


アレン様が魔法のランタンで暗いクリスタルの通路を優しく照らしながら、さりげなく私をエスコートしてくれる。


彼の長い黄金色の髪が私の肩にさらりと触れるたび、私はその大人の包容力に、胸がキュンと切なくなるのを隠せなかった。


アレン様はいつだって、私が一人で抱える孤独に、目線だけで一番深く寄り添ってくれる。


「おい、アレン。アサヒをあんまり自分の方に引き寄せるなよ。トラップなら、僕の未来の魔力ですぐに気がつけるから」


すぐ後ろから、ソルが少しぶっきらぼうな声を上げて、私の右手をその細い手でギュッと強く握りしめた。


ソルの手は、相変わらず私の知っている、世界で一番愛おしい【魂の温度】を宿している。


今日の朝も記憶を神々に消されて目覚めたはずなのに、彼は私の隣に立つと、言葉ではなくその手の熱さだけで「君を絶対にアレンには渡さない」と伝えてくるのだ。


「二人ともありがとう。でも、私はもう16歳よ、子供じゃないわ…」


私は二人の不器用な優しさに頬をほんのり赤くしながらも、じれったくて温かいその恋の火花に、深く自然な笑みがこぼれてしまった。


お互いに「こいつには負けない」と男の意地を張り合いながらも、死線を共にして背中を預け合ってきたソルとアレン様。


この二人がいてくれるからこそ、私は16歳の未熟な令嬢であっても、ゆっくりと、一歩一歩前を向いて成長していける。


私たちが本棚のようにクリスタルの本棚が並ぶ通路の奥へと進んだ、その時だった。


キィィィィィン――――!!


神殿の最深部にある、巨大な鏡のようなクリスタルの壁が、まばゆい茜色の光を放ち始めた。


私の胸のポケットにある懐中時計が破裂しそうなほど熱くなった瞬間、壁の表面に、お母様ユウコと、ソル、アレンの先祖たちが3人で笑い合っている、数百年前の『過去の幸せな記憶の映像』が、アニメのスクリーンが広がるようにありありと映し出されたのだ。



(お母様……! 私は絶対に、あなたたちの遺してくれたこの絆を、未来へ繋いでみせる!)


私が強い決意を胸に、お母様の残した壁画へと一歩近づいた、その刹那。


ガガガガガガガッ!!!


神殿全体のクリスタルの歯車たちが耳を劈くような悲鳴を上げて急停止し、美しかった朝焼けの空が、何の前触れもなく不気味どす黒い紫色へと一転した。


空間の裂け目から這い出てきたのは、全身が青銅の歯車でできた、これまでの何倍も巨大な神々の直属の『時間の守護精霊』たちだった。


「来るよ、アサヒ! 僕たちの『いま』の絆を、神様たちなんかに消させない!」


ソルが黄金色の魔導剣を引き抜き、私の前に全力で飛び出した!


「僕だって、君との未来を神様の手から奪い返してみせるさ」


アレン様も不敵に微笑み、その白い手から巨大な時空の魔法陣を展開してソルの背中を支える。


お母様ユウコと先祖たちが遺した神話の謎、 そして、じれったい三角関係を胸に秘めたまま立ち向かう、神々の最高位の兵との新たなるド派手な大空中魔法バトル。


16歳のアサヒが、仲間たちと共に一歩一歩ゆっくりと成長しながら進む、二つの世界の運命をかけたハラハラドキドキの時計仕掛けのファンタジーは、この美しい古代の世界を舞台に、さらに大迫力の映像美を伴って、激しくその運命のネジを巻き直していこうとしていた。


(第46話・おわり)

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