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第5章。時計仕掛けの神域と、始まりの部屋。第39話。遺跡の迎撃戦と、踏み切りの向こう側の記憶。

投稿していなかったので、よかったら、読んで見て下さい…、38話のあとに。

『ルミナス令嬢の失われた記憶 〜二つの世界を繋ぐ時計仕掛けの神話〜』


第5章。時計仕掛けの神域と、始まりの部屋


第39話。遺跡の迎撃戦と、踏切の向こう側の記憶


「グォォォォォォッ!!」


遺跡の奥深くに広がる茜色の暗闇から、青銅の歯車を全身にまとった巨大な『時間喰いの魔獣』たちが、地鳴りのような咆哮を上げて次々と飛び出してきた。


彼らが鋭い爪を振り下ろすたびに、白大理石の古い柱がバリバリと音を立てて粉砕され、静止していた夕暮れの空気に激しい火花が飛び散る。


「アサヒ、絶対に僕の後ろから離れないで! こいつらは一匹残らず、僕の光で消し飛ばしてやる!」


空中へと垂直に舞い上がったソルが、黄金色の魔導剣を天空へと力強く突き上げた。


彼の身体から放たれた眩しい『未来(明日)』の魔力は、まるで生き物のように空中をうねる無数の『黄金の光の矢』となって、迫り来る魔獣たちを自動追尾し、次々と大爆発の炎で包み込んでいく。


ドゴォォォン! ズガァァァン!!


「相変わらず、力任せで危なっかしい戦い方だね、ソル。……アサヒ様、僕の結界の隣に」


アレン様が私の前に一歩踏み出し、掲げた白い手から黄金色の巨大な『時空結界』を展開した。


魔獣たちが放つ紫色の電撃の槍がアレン様の障壁に激突し、激しい爆音と共に弾き返されていく。


衝撃の風圧で私の漆黒の髪とアレン様の白銀の魔導衣が激しくなびいた。


「ソル、上からもう二体来ているわ!」


私が結界の中から叫び、本棚やタワーのように立ち並ぶ遺跡の柱の影を指さす。


「分かってる! アレン、左の柱の奴の時間を止めて!」


「了解さ。――『時間停止(クロノ・スタシス)』


アレン様が杖を強く床に突きたてると、黄金の光の波動が空間を駆け抜け、ソルの背中を狙っていた魔獣の動きが、砕け散る大理石の破片ごと空中で『ピタリと静止して』固まった。


「ハァァァァァッ!!」すかさずソルが空中を鋭く滑空し、オレンジの炎の衣をまとった剣で、静止した魔獣の文字盤を真っ二つに一刀両断にする。


お互いに私を巡って静かに意地を張り合う二人なのに、戦いの中では一言交わすだけで背中を預け合う、最高にかっこいい男たちの友情の絆。


じれったくなってしまうような熱い共闘が、茜色の遺跡の中で美しく繰り広げられていく。


しかし、魔獣たちを退けた、その刹那だった。


遺跡の最奥にある、大きな白大理石の祭壇が、カチ、カチ、カチ……と、不気味な音を立ててまばゆい茜色の光を放ち始めた。


ザザッ、ザザザザッ――――!!!


カン、カン、カン、カン……!


私の視界のすべてを真っ二つに引きちぎるように、あの強烈な『灰色の異界(地球)』のノイズが大音量でフラッシュバックした。


耳の奥を劈くのは、地球のあの


【警告の鐘の音】


のような不気味な警報音。


そして、私の胸のポケットにある懐中時計が破裂しそうなほどの熱を持った瞬間、祭壇の光の向こう側に、一人の女性の『過去の記憶の映像』が、アニメのスクリーンが広がるようにありありと映し出された。


それは、雨の日の地球の踏切の前。


激しい大雨に打たれながら、傘もささずに、大粒の涙を流して立ち尽くしている、若き日のお母様――ユウコの姿だった。


そこにあるのは、お母様自身がかつて経験した、雨の日の冷たい運命の濁流の記憶。


『……私は、異世界の初代聖女としてのすべてを捨てて、この世界(地球)へやってきた。……いつか、この踏切の向こう側から、私の命よりも大切な、愛しいアサヒという新しい時間が生まれる。……たとえ私が先に病気で死んでしまっても、アサヒ、あなたがこの手を離さずに「いま」を生き抜いてくれるなら、私は何百年の時を超えて、何度だってあなたを救いに行くわ……』


お母様ユウコが泣きながら、まだ見ぬ未来の私(アサヒ)に向けて、冷たい運命の向こう側の虚空へ手を伸ばしている切なすぎる映像。


「お母様……! あなたは、私が生まれるよりもずっと前から、私のために……!」


私が涙をポロポロと床へと溢れ落としたその瞬間、懐中時計の中の四つの歯車が、キィィィン!と今までにないほど高い音を立てて激しく共鳴を始めた。


私の魂の奥底からあふれ出したのは、過去と未来を完璧に繋ぎ合わせる、あの温かい『朝焼けのオレンジ色』の魔力のすべてだった。


ドカァァァァァン!!!


私の放ったオレンジ色の光の波動が、遺跡全体を包み込むほどの巨大な「朝焼けの無敵の防壁」へと膨れ上がり、残っていた神々の魔獣たちのすべてを一瞬にして跡形もなく消滅させ、浄化していった。


「はぁ、はぁ, はぁ……」


すべての敵を退け、世界に静かな夕暮れの茜色が戻ってくる。


ソルが私の元へ駆け寄り、私の震える右手をその細い手でぎゅっと握りしめてくれた。


アレン様も、私の左隣に静かに寄り添い、黄金色の瞳で私の顔を優しく見つめている。


過去は変えられない。


お母様が地球で亡くなってしまった悲しい過去も、お母さんが冷たい運命の前で涙を流していた切ない記憶も、変えることはできない。


けれど、この二人の男の子と手を繋い(手を繋いで)生きている『いま』の温もりは、何があっても絶対に変わらない本物の奇跡だ。


「アサヒ様……。どうやら、お母様がこの遺跡に遺した白紙の預言書の続きが、次の目的地を指し示しているようだね」


アレン様が、祭壇の上に浮かび上がった新たな茜色の道標を見つめながら、その瞳を妖しく光らせた。


明かされたお母様の始まりの記憶の真実、親子の深い絆、そして胸に秘めたじれったい恋と友情。


二つの世界の未来をその手で掴み取るための、ハラハラドキドキの壮絶なる時計仕掛けのファンタジーは、次なる目的地である【中央の時計仕掛けの神殿】への大冒険へと、激しくその運命のネジを巻き直していこうとしていた。


(第39話・おわり)

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