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第4章。南の終わりの谷と、狂い出す磁場。第26話。凍土の空中戦と、オレンジの炎。

投稿していなかったお話しです(投稿忘れ)

25話のあとによかったら、読んで見て下さい…、

『ルミナス令嬢の失われた記憶 〜二つの世界を繋ぐ時計仕掛けの神話〜』


第4章。南の終わりの谷と、狂い出す磁場


第26話。凍土の空中戦と、オレンジの炎


「異界の魂を消去し、世界の理を正す。神の秒針からは、何者も逃れることはできぬ」


凍りついた薄青色の天空から、神々の冷徹な声が、地鳴りのような響きを伴って吹き荒れる吹雪の中に轟いた。


次の瞬間、空中でピタリと静止していた無数の雪の結晶たちが、バリバリと空間ごと叩き割られ、全身が巨大な氷の結晶でできた『氷の時間の守護精霊』たちが、一斉に巨大な氷の槍を構えて私たちを目がけて急降下してきた。


「アサヒ、絶対に離れないで! 僕が、神様たちの冷たい秒針を全部叩き切ってみせる!」


ソルが私の前に立ちふさがり、黄金色の魔導剣を強く両手で握りしめた。


彼の身体から、生まれたての太陽のような眩しい『未来(明日)』の魔力が爆発するようにあふれ出し、周囲の極寒の空気をジリジリと熱く震わせる。


「アサヒ様、足元をしっかり支えるよ! 時空固定――『絶対不変の座標(アンカー・ロジック)』!!」


アレン様が杖を氷の床に強く突きたてると、私たちの足元に、まばゆい黄金色の巨大な魔法陣が展開された。 


その瞬間、身体の芯まで凍りつかせようとしていた不気味な時空の嵐がピタリと遮断され、激しい突風の中でも、私たちはしっかりと大理石のような氷の石畳を踏みしめることができた。


「ハァァァァァッ!!」


ソルが地を蹴り、純白の吹雪の中へと垂直に舞い上がった。


重力が凍りついたこの極寒の空間を、ソルはまるで一条の黄金の流星となったかのように、超高速で縦横無尽に駆け抜けていく。


ソルが魔導剣を天空へと一閃すると、彼の剣の軌跡から、何百、何千という『黄金の光のレーザーの嵐』が一斉に放たれた!


光のレーザーは、空中でカチコチに凍りついて浮いている雪の結晶を粉砕しながら、迫り来る氷の守護精霊たちを自動追尾し、その身体へ次々と直撃して大爆発を起こしていく!

 

ドゴォォォン! ズガガガガァァァン!!!


巨大な氷の城の尖塔(タワー)を背景に、ソルは氷の壁を足場にして逆さまに走り、飛び回りながら、凄まじい空中大戦闘を繰り広げていく。


飛び散る黄金の魔力と、粉々に砕け散る守護精霊の氷の破片が、薄青色の空にダイヤモンドダストのようにキラキラと美しく舞い散る。 


その戦闘シーンは、まさにアニメの最高潮のクライマックスのようだった。


しかし、神々が直々に遣わした氷の精霊たちは、どれだけ身体を砕かれても、その文字盤の顔を冷酷に光らせながら、瞬時に周囲の氷を吸い込んで傷を再生させていった。


「無駄だ。凍りついた時間の中では、あらゆる破壊は無意味。すべては最初から停止しているのだからな」


守護精霊たちの冷徹な声が重なり合い、三体の精霊がソルの行く手を遮るようにして、巨大な氷の槍を同時に突き出してきた。


「くっ……! 再生が早すぎる……! 空間そのものが凍りついていて、僕の未来の魔力が吸い取られていくんだ……!」


空中でソルが激しく息を乱し、魔導剣の光が急激に弱まり始める。



ソルを囲むように、冷たい氷の結界が急速に狭まっていく。


(ソル……! あなたの魂の温もりを、こんな冷たい氷の中に閉じ込めさせたりしない!)


私は恐怖を完全にかなぐり捨て、胸のポケットの懐中時計を強く握りしめながら、宙にいるソルに向かって両手を真っ直ぐに突き出した。


「ソル、私の『いま』を使って!!」


魂の底から叫んだ瞬間、私の手の中から、カッと視界のすべてを白く染めるほどの、凄まじい『朝焼けのオレンジ色』の炎の波動が解き放たれた。


ドカァァァァァン!!!


私の放ったオレンジ色の魔力が、


ソルの黄金の光、


そしてアレン様の時空魔法と完全に融合し、


極寒の空全体を包み込むほどの巨大な


「朝焼けのオレンジ色の炎」


へと膨れ上がった。


それは、どんなに冷酷な神の氷であっても、一瞬で蒸発させる


【生まれたての未来の熱】。


「な、んだと……!? 私たちの氷の結界が、内側から溶かされていく……!?」


守護精霊たちが、世界そのものが温かい朝焼けの窓へと作り替えられていく異常事態に、初めて驚愕してその動きを止めた。


彼らの持っていた氷の槍は、オレンジ色の炎の熱に触れた瞬間、跡形もなく水蒸気となって掻き消されていく。


「アサヒ……ありがとう! 君が僕を信じてくれるなら、僕の剣は絶対に折れない!」


ソルが最高に熱い、魂の笑顔を私に向け、オレンジの炎を全身にまとって再び高く舞い上がった。


しかし、二人の絆が極限まで深まり、魔力が限界突破したことと完全に連動するように、私のポケットの中の懐中時計が、壊れるほどに激しく熱を持ち始めた。


同時に、私の視界の半分に、あの強烈な【灰色の異界(地球)】の終末のノイズが、すさまじい地鳴りと共にフラッシュバックしたのだ。


ザザザザザザッ!!!


目の前で燃え上がるオレンジ色の空の向こう側に、激しい超大型の竜巻によって、四角い鉄とガラスの巨塔(ビル)が次々と粉砕され、濁流に飲み込まれていく地球の滅亡の景色。


そして、その壊れていく世界の真ん中に――ルミナス公爵邸にある


【私の部屋の入り口の、あの重厚な木製の白い扉】


のビジュアルが、完全に重なり合って鮮烈に映し出される。


(あ、あの部屋の白いドア……私の部屋の扉は、やっぱり普通じゃない……!)


脳髄を突き刺すような、激しい頭痛が私を襲う。


(あの扉は、この凍りついた時間を溶かし、私のいた世界へ還るための、最後のゲートを開ける『神聖な鍵』なんだ……!)


私たちがここで大切な人を守ろうと戦うほどに、地球の崩壊への秒針が恐ろしい速度で回っていくという、逃げ場のない残酷な連動。


アサヒとソル、アレン様の3人は、この地球規模の終末の秒針をどう止めるのか。


二つの世界の運命をかけた、ハラハラドキドキの壮絶な神話の決戦は、目の前にある巨大な氷の古城の最深部へ向けて、さらに予測不能な深淵へと、激しく加速していこうとしていた。


(第26話・おわり)

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