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第5章。時計仕掛けの神域と、始まりの部屋。第40話。中央の時計仕掛けの神殿決戦の予兆。

『ルミナス令嬢の失われた記憶 〜二つの世界を繋ぐ時計仕掛けの神話〜』


第5章。時計仕掛けの神域と、始まりの部屋。


第40話。中央の時計仕掛けの神殿と、最終決戦の予兆。


西の谷の古い遺跡の祭壇から、キィィィン……と高らかに響き渡った茜色の光のメロディ。


それは、お母様ユウコが遺してくれた『白紙の預言書』が、すべての時間の終わりの始まりを指し示した、最後の道標(地図)だった。


私、ソル、アレン様の3人は、遺跡の魔獣たちを退けたあと、その光の導きに従って、ついにこの世界『エルドラド』のすべての時間が収束する究極の聖域――


【中央の時計仕掛けの神殿】


の入り口へと辿り着いていた。


「――すごい、空気の匂いが違うわ……」


大理石の重厚な大門をくぐり抜けて中に一歩足を踏み入れた瞬間、私はその圧倒的な情景に息をのんだ。


神殿の中は、ひんやりとした神聖な空気が満ちており、呼吸をするたびに時間の魔力が肺の奥までピリピリと刺すようにして伝わってくる。


見上げるほどに高い天井に向かってそびえ立つのは、白金(はくきん)と透明なクリスタルで編まれた、無数の巨大な『時間の歯車』たちだった。


大小さまざまな歯車が、カチ、カチ、カチ……と、世界の呼吸そのもののようにして噛み合い、厳かに、でもどこか狂おしいほどのハイスピードで回転し続けている。


その真鍮の部品が擦れ合うたびに、まるで無数のオルゴールが同時に鳴り響いているかのような、神秘的な高い金属音が神殿全体に響き渡っていた。


「アサヒ様、足元に気をつけて。ここから先は、すべての時間が渦巻くルールの終着点だ」


アレン様が、白銀の魔導衣の裾を神殿に吹き抜ける不思議な時空の風に揺らしながら、私の左側にそっと寄り添った。


彼の黄金色の瞳は、いつになく真剣で、私の背負っている「冷たい雨の日の運命」のすべてを、目線だけで優しく包み込んでくれている。


その大人の包容力に、私は胸の奥がキュンと切なくなるのを隠せなかった。


「アサヒ、僕だって絶対に君の隣を譲らないからね。何が来たって、僕が君の無敵の盾になる」


右隣に立つソルが、負けん気の強い視線をアレン様に向けながら、私の右手をその細い手でギュッと強く握りしめた。


朝、目覚めたときは神々のプログラムによって私の顔を忘れていても、今の彼の魂は、本能で「アサヒを絶対に手放したくない」と熱く叫んでいる。


その一途で不器用な手のひらのぬくもりが、私の胸を優しく、強く締め付けた。


アサヒを巡って、言葉には出さないけれど、静かに愛おしい火花を散らし合うソルとアレン様。


そんな距離感のなか、私たちは神殿の最深部にある、巨大な『始まりの時計』の前へと歩み進めた。


その、刹那だった。


ヒュゥゥゥゥ――ッ!!


と、神殿の奥から、肌を刺すような冷たい突風が吹き荒れた。


何万という歯車が、キィィィン!と悲鳴を上げて一斉に逆回転を始めたのだ。


それと完全に連動するように、私の視界のすべてを真っ二つに引きちぎる、あの強烈な『灰色の異界(地球)』のノイズが大音量の轟音と共にフラッシュバックした。



ザザザザザザザッ――――!!!


カン、カン、カン、カン……!


耳の奥深くに向けて、あの遺跡で聞いた、地球の【警告の鐘の音】のような不気味な警報音が、過去最高のリアルな音量で激しく鳴り響いた。


大雨が降りしきる世界線。


水没していくビル群。


お母様が、雨の日の冷たい運命の濁流から、娘の私の命を救うために、何百年の時を超えて異世界にあの「始まりの私室」を遺してくれた、究極の愛の真実。


(お母様……。私はもう、過去の後悔(昨日)に流されるだけの令嬢じゃないわ!)


胸のポケットの懐中時計が、壊れるほどの熱を持って脈打つ。


私が「いま」を生きる覚醒を果たすほどに、地球の崩壊への秒針が回っていくという過酷な連動。


だが、今の私の心には、恐怖を打ち破るほどの熱い絆が宿っていた。


「愚かな時間の迷子たちよ。因果を書き換えるその魂を、今度こそ時空の塵へと消去せん」


神殿の割れた天空から、世界の理を司る『時間の神々』の冷徹な声が響き渡った。


次の瞬間、空間そのものをドロドロに溶かしながら、天空から山ほども巨大な『神の光の秒針の槍』が、凄まじい風圧の暴風を巻き起こしながら、私を目がけて真っ直ぐに突き降ろされてきた!


「アサヒの『いま』を、神様たちなんかに消させない!!」


ソルが黄金色の魔導剣を引き抜き、生まれたての太陽のような未来の魔力を爆発させて天空へと力強く舞い上がった!


ソルの放った黄金の魔力が、神殿に吹き荒れていた冷たい突風を、熱い『黄金の烈風』へと一瞬で塗り替えていく。


ソルは音速のスピードで空中を縦横無尽に駆け巡り、魔導剣から何千という光の矢を放って、神の槍の風圧を真っ向から撃ち破っていく!


「君の過去も未来も、すべてを僕たちが神の手から奪い返してみせるさ」


アレン様も妖しく不敵に微笑むと、その白い手から巨大な時空の魔法術を展開してソルの背中を支える。


彼が時空を操るたびに、神殿の空気がぐにゃりと反転し、カメラワークが見えるような大迫力の空中魔法戦闘が繰り広げられていく。


飛び散る黄金の光の粒子が、風に乗ってキラキラと美しく空間に舞い散る。


お母様ユウコが遺してくれた優しさの謎を解き明かし、二人の男の子とのじれったい恋と友情を胸に秘めたまま立ち向かう、世界の運命をかけた本当の最終決戦。


すべての時間が美しく重なり合い、ハラハラドキドキの最高潮を迎えた時計仕掛けのファンタジーは、光と音、そして三人の絆が巻き起こす熱い朝焼けの風を伴って、今、完璧なる新しい明日への扉をこじ開けようとしていた。


(第40話・おわり)

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