第8話:二つの夢
私はこの人生で目を覚ましてから、前世の夢を一度も見たことがなかった。東京のことも、あのアパートのことも、最後まで終えることのできなかったあの襲撃のことも。
いつの間にか、私はそう思い込んでいた。
ハルトは、ここまで私について来ることができなかったのだと。
あの街角に、ほかのすべてと一緒に置き去りにされてしまったのだと。
――私は間違っていた。
夢はありふれた光景から始まった。
いつだって、最悪の夢というものはそういうふうに始まる。
私は楓の住んでいた地域の近くにある横断歩道に立っていた。頭上では街灯がゆっくりとオレンジ色に明滅している。
そして、健司が私の向かいに立っていた。
まるで、同じ信号が変わるのをただ待っているだけの、二人の男のように。
「元気そうだな」
健司が言った。
穏やかで、気楽な声。
私を殺す六時間前に電話で話したときと、まったく同じ声だった。
「それなりにな」
私は答えた。
「お前に車で轢き殺されたことを考えれば、まあ元気にやってるよ」
健司は笑った。
本当に笑った。
まるで私が自分自身の殺人について話しているのではなく、本当に面白い冗談でも言ったかのように、頭を後ろへ反らして笑った。
「ログアウトすればよかったんだよ」
彼は言った。
「そうすれば、俺たち二人とも面倒なことにならずに済んだのに」
「金が欲しいなら、普通に言えばよかっただろ。たぶん、俺は助けてたぞ」
「いや」
その言い方は、あの夜とまったく同じだった。
車のドアを開けたまま、私を見下ろしていたときと同じ。
焦りもなく。
まるで、どこか親しみすら込めるように。
「同じじゃなかっただろ」
私は、その言葉に答える前に目を覚ました。
胸が苦しかった。
暗闇の中、宿の部屋の天井を見つめていた。
――同じじゃなかった。
一体、それはどういう意味なんだ。
何をするにしても、「そう感じること」にこだわる人間なんて、どんな人間なんだ。
私は長い間、横になったまま、その言葉について考え続けた。
そして、考え続けるうちに、昔からの、歓迎したくない考えが一つ、私の中に入り込んできた。
私は、健司を何の疑いもなく信じていた。
電話がかかってきた。
私は行った。
ためらいもなかった。
疑いもしなかった。
何も。
そして、それが私を殺した。
二匹のドラゴンが、私を殺すためにあの山へやって来た。
理由は、今でも理解できていない。
私は一体、何をしたというんだ。
健司のことですら、これまでの人生すべてを知っていたはずなのに、その裏切りを見抜けなかった。
そんな私が、この世界で、何もかもをまだ理解しきれていない中で、次に現れる誰かをどうやって見抜けばいい?
なら、新しいルールを一つ決めよう。
誰かを信じることをやめるわけじゃない。
ただ、無条件に信頼を与えることはやめる。
それだけだ。
その後、私はなかなか眠りにつけなかった。
そして、ようやく眠りについたとき――二つ目の夢が待っていた。
今度の夢は、最初から普通ではなかった。
私は、見たことがないはずなのに、知っている場所に立っていた。
家の近くにある、あの開けた場所。
けれど、何かがおかしかった。
空気は、天候とはまったく関係のない熱で満たされていた。
そこには父がいた。
剣を掲げ、私には直接見ることすらできないほど巨大な何かと向かい合っている。
そして私は、夢の中で説明されることなく理解していた。
これは、すでに起こった出来事なのだと。
父が何を言っているのか、私は聞き取れなかった。
ただ、彼の口が動いているのが見えた。
落ち着いていて、慎重で、あのドラゴンたちがやって来た夜と同じ、静かな声。
彼が何を言ったのかは分からない。
けれど、向かいにいるその怪物は、その言葉を気に入らなかったらしい。
爆発には、音がなかった。
夢の中では、ただ光だけがあった。
完全で、絶対的な光。
それが一瞬にして、あの場所全体を飲み込んだ。
そして、ほんの一瞬前まで父が立っていた場所には――何もなくなっていた。
私は息を荒くしながら目を覚ました。
身体が、心より先に悲しみを理解してしまったときのように。
私は父に何も聞けなかった。
本当の意味では、一度も。
なぜあれほど家を空けていたのか。
「仕事」とは、一体何だったのか。
父になる前、彼がどんな人間だったのか。
本当の意味で、何一つ聞けなかった。
そして今となっては、もう二度と聞くことはできない。
少なくとも、父本人からは。
私は暗闇の中で身体を起こした。
両手を膝の上に押しつけ、震えが収まるまでじっとしていた。
そして、怒りがあの山での夜と同じ場所へ静かに収まっていくのを感じた。
大声を出すようなものではない。
家具を壊す必要もない。
ただ、冷たい。
永遠に消えない。
私が受け取るべきだったものの一つとして、ほかのすべてと一緒に心の中へしまい込まれる。
二匹のドラゴン。
一つの借り。
何が必要だろうと、必ず返してもらう。
日の出前、私は階下のテーブルでドランに見つかった。
一度も口をつけていない飲み物を前に、ただぼんやりと座っていた。
「ひどい夜だったか?」
彼はそう言いながら、私の許可を待つことなく向かいの席に腰を下ろした。
「まあ、そんなところ」
ドランはしばらく私を見つめた。
初めて会った夜に見せた、あの再評価するような視線と同じだった。
ただ、今回はもっと優しかった。
危険を見極めようとしているというより、明らかに眠れていない子供を見ているような目だった。
「話したいか?」
「別に」
私は答えた。
「少なくとも、今は」
ドランは頷いた。
気楽に。
無理強いする気配はまったくなかった。
そのことを、私は口には出さなかったが、ありがたいと思った。
「そうか」
彼は言った。
「なら、何か食え。何であれ、それは朝飯を食ったあとも消えたりはしないだろう」
――その通りだ。
私は食べた。
夢は、どこにも行かなかった。
けれど、それでも、夜の間に私の中の何かが変わっていた。
より静かに。
より硬く。
そして、どの扉を開けたままにしておくべきなのか、少しだけ慎重になった。
悲しみは後部座席に座っていてもらえばいい。
それでいい。
ただ、今日は少しだけ、悲しみにハンドルを握らせよう。
たぶん、それくらいなら――私は受け入れられる。




