エピソード73:来訪予定の客
『水平線』に、静かな朝が訪れた。
東の空に淡いオレンジ色の光が広がり、夜の闇をゆっくりと押し戻していく。湿った草葉と遠くの花々の香りを孕んだ涼しい微風が草原を吹き抜け、丘の向こうからは早くも鳥たちの朝の囀りが聞こえ始めていた。
リンは旅の荷物をパンパンに詰めた背嚢を片方の肩にかけ、外に立ち尽くしていた。真っ直ぐに延びる街道を見つめる。
四年前と決定的に違うのは、今回は「行かなければならないから」家を出るのではないということだ。自分の意志で「行く」と決めたからこそ、この場所に立っている。――その違いは、彼女の魂にとって奇妙なほど重要な意味を持っていた。
四年前、ルナリス王立学園へ向かうためにこの『水平線』を旅立った時、彼女はまだ十一歳の子供だった。あの時は両親と離れるのが不安で、全く見知らぬ環境に飛び込むのが怖くて、自分が周囲に馴染めないのではないかと、心の底で密かに怯えていた。色んなことを余計に心配していたのだ。友達はできるだろうか? 講義についていけるだろうか? 恥をかいたりはしないだろうか? ホームシックで泣いたりしないだろうか?
だが、今の彼女は十五歳だ。
四年間におよぶ過酷な学園生活を生き延び、あの『太陽の涙』の異変をくぐり抜け、魔獣や吸血鬼の軍勢と渡り合い、普通の生徒なら一生経験しないような混沌(修羅場)を幾度となく乗り越えてきた。それでもなお、こうして無限に続く街道の前に立つと、リンはある事実に気づかされる。
自分は、また緊張している。――ただ、今回の緊張には、最高に心地いい『ワクワク感(好奇心)』が同居していた。
背後で、小気味いい音を立てて玄関の大扉が開いた。
ソラが自分の背嚢を背負って外へと歩み出てくる。肩紐の位置をきゅっと締め直してから、リンの方へと視線を向けた。
「――準備はいい、リン?」
リンは小さく頷いた。
「うん、オッケー」
ソラは家の方を一瞥した。
「ちゃんとお別れの挨拶はしてきたの?」
リンは首を横に振った。
「ううん、してない」
ソラが怪訝そうに片方の眉を上げた。
「なんでよ?」
「だって、また帰ってくるもん」
リンは不敵にフッと微笑んだ。
「私は今日から冒険者だけどさ、別に今生の別れ(消滅)をしに行くわけじゃないからね」
その回答を聞き、ソラもまた満面の笑みを浮かべた。
「……まあ、あんたらしい言い草ね」
扉が再び開き、母親のアシュレイが姿を現した。
「……お前たち、もう行ってしまうのね」
リンが振り返る。
「うん」
アシュレイは長い間、じっと愛おしい我が娘の姿を見つめていた。その視線には、どこか甘酸っぱくも切ない感情が入り混じっている。眼前に立つリンは、四年前この家を出て行ったあの幼い少女ではもうなかった。顔立ちは大人びており、佇まいは堂々としており、その瞳の奥にはかつてなかった絶対の自信(強さ)が宿っている。
だが――アシュレイの目には、その奥に眠る子供の姿がはっきりと視えていた。この広大な草原を泥だらけになって駆け回っていた小さな少女。転んで擦り傷を作ったくせに、家に帰るなり「絶対に転んでない」と言い張っていた我が儘娘。かつて、あの目の前の山の向こう側で世界が終わっているのだと本気で信じ込んでいた、あの愛おしい子供の姿が。
アシュレイは優しく微笑んだ。
「本当に、立派に大きくなったのね」
リンは堪えきれずに笑声を上げた。
「お母さん、それ昨日も言ったじゃん」
「ええ。そして多分、明日も言うわよ」
リンはやれやれと首を横に振ったが、その唇には確かな幸せの笑みが刻まれていた。いくつかの大切なことは、あの頃から何一つ変わっていなかった。
アシュレイの背後からダニエルが姿を現し、胸の前でどっしりと両腕を組んで二人の若き冒険者を見つめた。
「――荷物はすべて積み込んだか?」
リンが力強く頷く。
「うん。食料、着替え、魔導医薬品、軍資金、周辺の大陸地図……」
そこで、ソラがすっと片手を挙げた。
「――それと、リンが最初の二日間で全ての備蓄を喰い尽くすのを阻止するための、大量の携帯おやつ(非常食)もね」
リンは不服そうに相棒を睨みつけた。
「おい、余計なスキャン(告げ口)をするな」
アシュレイは思わず吹き出し、ダニエルはガハハと豪快に笑った。
「ははは! どうやら本当に、二人で力を合わせて行くわけだな」
「ええ、もちろん!」
ソラが即座に答える。
リンもニカッと笑った。
「おう、一蓮托生(一緒に)だね」
アシュレイがリンの元へと歩み寄り、その細い身体をきつく抱きしめた。リンの尖っていた気配が一瞬にして柔らかく綻ぶ。
「絶対に無理はしないでね」
「うん、分かってるよ」
「……不要なトラブル(危険)に、自分から首を突っ込むんじゃないわよ?」
「うん、善処する」
アシュレイはもう一拍の間、愛おしそうに娘を抱きしめてから、名残惜しそうにその手を離した。ダニエルが真面目な顔でリンを見据える。
「――リン。もしも旅の途中で、自分たちより圧倒的に『強い奴(化け物)』に遭遇したらどうする?」
リンは少しだけ考えるように間を置いた。そして、いつもの不敵で獰猛な笑みを浮かべる。
「――気合いでバック(全力で逃げる)、これ一択だね」
ダニエルは満足そうに重々しく頷いた。
「よし。大正解だ」
ソラはパチクリと目を丸くして父親を見つめた。
「……あら、お父さん。随分とあっさりと現実的な撤退(合理的判断)を肯定するのね」
ダニエルはニヤリと笑った。
「『逃げるべき引き際(潮時)』を完璧に見極めることこそが、一流の冒険者に必要とされる最も重要な絶対スキルだからな」
リンは勝ち誇ったようにソラをビシッと指差した。
「ほら見ろ! お父さんは世界の真理ってやつを完璧に理解してるんだよ!」
ソラはやれやれと最大級のため息を漏らした。
「はぁ……。私の周り、現実主義者しかいないんだけど」
リンは不敵に口の端を釣り上げた。
「勝った(ガッチャ)」
ソラは完全な無のジト目で彼女を凝視した。
「あんた……今の一幕のどこに勝ち負けの要素があったわけ?」
リンはガハハと楽しそうに笑声を響かせた。
出発を前に立ち込めていた重苦しい空気は、二人のいつもの騒がしいやり取りによって、瞬く間に綺麗さっぱりと霧散していった。
ダニエルがゆっくりと街道の先を見据えた。
「――それで、お前たち二人はまずどこを目指すつもりだ?」
リンは背嚢から四つ折りにされた大陸地図を引き抜き、自らの手のひらの上で器用に広げてみせた。朝の心地よい微風に吹かれ、紙面がサラサラと静かに音を立てる。ソラがその隣からぐっと顔を近づけて覗き込んだ。
リンは数日間の旅路の先にある、公的な印が刻まれた巨大都市の一点をビシッと指差した。
「まずは、ここから始めるよ」
ソラが地図の距離感を測るように目を細める。
「……随分と遠いわね」
「まさにそれ」
「なんでまた、そこを選んだのよ?」
「ここが、私たちの実家から一番近い場所に位置する、まともな『冒険者ギルド』の本部がある都市だからだよ」
ダニエルが納得したように重々しく頷いた。
「なるほどな。旅の始まりを登録する(足場を固める)には、極めて合理的で賢明な判断だ」
リンは再び手際よく地図を折り畳み、背嚢へと収めた。
「まずはそこでギルドへの公的登録(ライセンス取得)を済ませる。それから、当面の軍資金を稼ぐための手頃な依頼を斡旋してもらう手筈さ」
「――じゃあ、そのあとは?」
ソラが楽しそうに尋ねる。
リンはどこまでも続く果てしない街道の先を見つめ、その唇に獰猛なほど輝かしい笑みを刻んだ。
「世界を、気の済むまで大冒険するだけだよ」
アシュレイは娘のその表情を見て、そっと微笑んだ。
今のリンの顔を見れば一目瞭然だった。これは一時的な思いつきや、子供の我が儘などでは断じてない。彼女はこの瞬間のために、何年もの間ずっと牙を研ぎ、考え抜いてきたのだ。教科書の中に閉じ込められた死んだ知識でもなく、学園の講義で叩き込まれた退屈な公式でもなく、どこかの旅人が持ち帰ってきた都合のいいお伽噺でもない。――彼女は自らの足でその大地に立ち、世界のリアルを直接その肌で察知したかったのだ。
リンは再び、最愛の両親へと真っ直ぐな視線を向けた。
「……また、必ずここへ帰ってくるからね」
アシュレイは優しく微笑んだ。
「ええ、私たちはいつでもここで待っているわ」
リンは力強く頷くと、街道へと向かって堂々と身体を翻した。
「行くぞ、ソラ!」
ソラもまた、不敵に笑いながらその後ろを追従する。
「ええ、行きましょう、相棒!」
二人の若き冒険者は、力強く大地を蹴って歩み出した。
アシュレイとダニエルの二人は玄関の前に佇んだまま、朝の黄金色の風景の中に溶け込んでいく二人の背中が、徐々に小さくなっていくのをただ静かに見守っていた。
ダニエルが、どこか誇らしげに自嘲気味に呟いた。
「……本当に、手の届かないところまで大きくなったな」
「ええ、そうね」
アシュレイが同意の頷きを返す。――だが、その温かかった笑みが、次の瞬間にはふっと完全に消え去り、奥深い思案の曇り顔へと変質した。
「……あなた。あなたも、あの時『肌で察知した(スキャンした)』でしょう?」
ダニエルの表情が、一瞬にして冷徹なまでに鋭く引き締まる。
「――例の、あの絶対的な存在感のことか?」
「ええ、そうよ」
二人の唇は完全に閉ざされ、しばしの重苦しい静寂が流れた。
あの日の記憶は、四年の歳月を経た今なお、彼らの魂の根源に鲜明に焼き付いて離れなかった。四年前、あの『太陽の涙』の氾濫異変の刹那、彼らの知覚に直接滑り込んできた、あの悍ましいまでの魔素の波形。世界の理を容易くねじ伏せるほどの不条理な暴威。――にもかかわらず、それがどうしようもないほどに『懐かしく、温かいもの』に感じられたという、致命的な矛盾。
彼らは未だ、その謎の全容を解明できていない。そして今、彼らのたった一人の娘が、その『答え』を世界の中から探し出すために、自ら戦乱の渦中へと足を踏み出していったのだ。
ダニエルは静かに街道の先を睨みつけた。
「……あの子は一体、あの世界の果てで『何』を見つけ出すつもりなのだろうな」
アシュレイは祈るように胸の前で両手を組み合わせ、ぽつりと静かに呟いた。
「……ええ、私にもさっぱり分からないわ」
二人の冒険者の旅路は、極めて平穏に幕を開けた。
最初の数時間のあいだ、リンとソラは、色鮮やかな野生の花々と瑞々しい緑の草原に囲まれた、広大な一本の未舗装の dirt road をのんびりと歩み進めていた。朝の太陽が時間を追うごとに天を突き抜けて高く上昇し、夜明けの心地よい肌寒さは、いつの間にか午後の柔らかな温かさへと上書きされていく。
リンは、世界に存在するありとあらゆる事象を、その魂の底から貪欲に吸収しようと躍起になっていた。風変わりな形状の花を見つけては完全に立ち止まって観察し、梢の間を高速で滑空していく魔導鳥を目線で追跡し、遥か彼方に霞んで見える巨万の山脈をじっと凝視する。時折すれ違う、ただの商人の隊商の荷馬車ですら、今の彼女にとっては最高に面白いエンターテインメントに映っていた。
ソラは、いい加減その様子に呆れ果てて声をかけた。
「……あんた、本当に最高潮にテンションが跳ね上がってるわね」
リンは振り返り、不敵にニカッと笑った。
「あったりまえでしょ」
「まだ実家から、かろうじて『十キロメートル』ほどしか進んでないんだけど?」
「それでも最高に良い景色じゃん」
ソラはこらえきれずに楽しそうに大笑いした。
「あはは! あんたがそうやって狂喜乱舞するのは、最初からお見通しだったわよ」
リンは不敵に口の端を釣り上げた。
「ソラだって、本当はワクワクしてん癖にさ」
「まあ、それは否定しないけど」
「だったらさ、最初から素直にその顔を見せなよな」
「私はいつだって超正常稼働中よ」
リンは再び前方へと視線を戻した。
今、彼女の胸の奥には、これまでの全人生の中で一度として抱いたことのないほどの、圧倒的な解放感が満ち満ちていた。あの王立学園での日々は確かに素晴らしかった――そこで最高の相棒と出会い、実家にいたままでは絶対に到達できなかった最高峰の魔導術式をマスターできたからだ。
だが、この外の世界はそれとは根本から異なる。
ここには自分を縛る教官(大人たち)はいない。退屈な講義も、強制的なクラス分けも、次の行動を指示してくる時間割も、どこへ行くべきかを命令してくる鐘の音すら存在しないのだ。
生まれて初めて、リンは自分自身の『進行経路(未来)』の全権を、その手に掌握していた。その確固たる事実が、彼女の唇にこれまでにないほど獰猛で魅力的な笑みを刻ませていた。
――その時。二人の目の前、街道沿いに生い茂る巨木の梢に、突如として一匹の『妙な生き物(小さな魔獣)』が唐突に出現した。
リンは瞬時にその足を完全に止めた。後ろを歩いていたソラが、あわやその背中に激突しそうになりながら慌ててステップを踏む。
「ちょっと、リン!? 何よ突然!?」
リンは無言のまま、梢の一点をビシッと指差した。
「……視なよ、あれ(スキャンしろ)」
ソラがその指先を視線で追跡する。
そこにいたのは、不自然なほどに巨大な耳と、爛々と輝く双眸、そしてフサフサとした異様に巨大な尻尾を持つ、見たこともない奇妙な小動物だった。その怪物は木の上から、じっと二人の様子を凝視している。リンもまた、一歩も引かずにその生き物と真っ正面から視線を交わし合った。
小動物が、不気味にコクンと首を右に傾げる。
すると、リンも全く同じタイミングで、コクンと首を右に傾げ返した。
ソラはやれやれと最大級のため息を漏らした。
「……あんたたち、それ一生やり続ける気かしら?」
小動物が、今度はコクンと首を左に傾げる。
リンも寸分の狂いもなく、コクンと首を左に傾げ返した。
ソラは自らの額をそっと手で押さえた。
「はいはい、私は先に行くからね」
その瞬間、小動物は唐突に梢を力強く蹴って跳躍し、大森林の深い闇の奥へとあっさりと掻き消えていった。
リンはパチクリと瞬きをした。
「あ、待て」
彼女が一歩を踏み出し、怪物の後ろを追いかけようとしたその刹那、ソラがガシィッと力任せに彼女の細い腕を掴んで引き止めた。
「――却下です。絶対にダメ」
「だけどさ……」
「ダメなものはダメ」
「めちゃくちゃキュート(面白そう)だったじゃん」
「世間じゃそれを『不可解なバグ(天災の罠)』って呼ぶのよ! そうやって好奇心に負けた間抜けな新米から順番に、化け物の餌食になっていくんだからね!」
リンはゆっくりと大森林の深い闇を見つめ、それからバツが悪そうに相棒へと視線を戻した。
「……まあ、確かにそのロジックは一理あるわ(合理的だな)」
二人は再び街道を歩み出した。数分後、リンは隣を歩く親友をチラリと盗み見る。
「……ねえ、ソラ。もしもさっきの奴が、一ミリも危険じゃないただの雑魚(無害な生き物)だったとしたら?」
「そん時は、私たちが極めて危機管理能力の高い、優秀な判断を下したってだけよ」
「じゃあ逆に、もしも本気でヤバい化け物の擬態だったとしたら?」
「そん時は、私たちが最高に天才で、命拾いをしたってだけよ。文句ある?」
リンは納得したように満足そうに口の端を釣り上げた。
「勝った(ガッチャ)」
ソラは深く、本日最大級のため息を吐き出した。
「はぁ……」
彼女は、この『ガッチャ』というウザすぎる二文字の魔名が、これからの自分たちの全人生において、一生つきまとって胃痛の種になるのではないかと本格的に予感し始めていた。
午後が深まるにつれ、街道の喧騒は徐々にその密度を増していった。
集落間を行き交う商人たちの巨大な隊商。背中に頑強な魔導弓を帯び、仕留めた獲物や大量のサバイバル物資を担いだ熟練の狩人たち。さらには、独自の陣形を組んで堂々と闊歩する、本物の『冒険者』の面々。ある一団は未開の秘境からの大遠征を終えて満身創痍で帰還する途中であり、また別の一団はさらなる高みを目指して遥かな辺境都市へと進軍している最中だった。
リンは歩調を緩めることなく、彼らの一挙手一投足を、その黒い瞳の奥で極めて冷徹に精査し続けていた。
彼女はただ彼らの大層な武器や防具の見た目に、ミーハーに憧れて見惚れていたわけでは断じてない。――彼女は彼らの重心の移動、歩行の挙動、肉体の佇まい、そして何よりも、彼らが無意識のうちにその全身から周囲の空間へと漏れ出させている『魔素の絶対質量』の総量を、寸分の狂いもなく正確に測定していたのだ。
彼女はあの最高峰の王立学園での四年間において、一つの残酷な世界の理を叩き込まれていた。
――『本物の強さ(脅威)とは、必ずしもその外見に比例するとは限らない』、という事実。
どれほど大層なフルプレートの重鎧に身を包んだ戦士であっても、その内実(魔素の格)は、一見すればただのありふれた貧弱な魔導士よりも遥かに脆弱であるというバグは、この世界にいくらでも存在する。逆に、何の覇気も放たずにただ静かに佇んでいる一人の孤独な旅人が、一軍を丸ごと一秒で消滅させるほどの絶対的な暴威(格)をその魂の奥底に秘匿していることだってあるのだ。
リンは、この現実の世界の本当の格付け(ルール)を、その手の中に完璧に掌握したかった。
そして――自分が今、この広大な世界というゲーム(盤面)の上において、一体どれほどの『座標(位置)』に立っているのかを、その目で直接確かめたかったのだ。
すれ違う一人の冒険者を見送りながら、リンが小さく呟いた。
「……強い」
ソラが彼女の顔を覗き込んだ。
「あんた、一目でそこまで判別できるわけ?」
「まあ、ちょっとね」
すぐ後ろから、また別の冒険者が通り過ぎていく。リンはその男の後ろ姿を捉えた。
「……あれは、凡骨だね」
ソラはニィッとからかうように微笑んだ。
「早くも品定めを始めてるじゃない、新米冒険者さん」
「私はただ、客観的に観察してるだけだって」
「それを世間じゃ『上から目線』って呼ぶのよ」
リンはやれやれと両肩をすくめてみせた。
「かもね」
ソラは楽しそうに笑声を上げた。――だが、二人の背後に広がる大森林の奥深くで、空間の位相がほんの一瞬だけ、妖しく『うねった』ことに、どちらも気づくことはなかった。
一秒にも満たない刹那の間、何か(・)がその闇の向向から、二人の無防備な背中を冷徹に凝視していたのだ。そして、その気配の波動は一瞬にして掻き消えた。
日が完全に沈む頃、二人の少女は街道沿いにひっそりと佇む、小さな宿場町(集落)へと辿り着いていた。
それは決して、大層な規模の都市ではない。主要な街道を挟んで、数軒の石造りの建物と馬小屋、鍛冶屋、酒場、よろず屋、そして小規模な『冒険者ギルド』の出張所が並んでいるだけだ。だが、リンにとっては、それこそが全く新しい未知の世界への本当の入り口に視えていた。
彼女はギルドの看板の前で足を止めた。
「――よし。ここが、私たちの最初の『攻略地点』だわ」
ソラも背嚢を担ぎ直して微笑んだ。
「うん、やっと着いたね」
二人は重厚な木製の扉を押し開けて、中へと足を踏み入れた。
室内には、香ばしい肉料理の匂いと古びた木材の香りが立ち込めている。いたる所の卓では、屈強な冒険者たちが酒杯を交わしながら、直近で仕留めた魔獣の討伐譚について大声を張り上げて談笑していた。部屋の最奥の窓口では、報酬の査定を巡って誰かが受付嬢と言い争っている声まで聞こえる。
リンとソラが窓口へと近づくと、一人の受付嬢が顔を上げた。
「――いらっしゃいませ。ギルドへようこそ」
リンが最高の笑みを浮かべる。
「こんにちは」
「本日のご用件は? 討伐依頼をお探しですか?」
「ううん、まだ」
リンは受付のカウンターへとそっと掌を預けた。
「――私たち、ここで冒険者としての公的登録(ライセンス取得)をしたいんだよね」
受付嬢は二人の少女の顔を見つめ、それから旅の荷物が詰まった背嚢へと視線を巡らせた。
「……お二人とも、ですか?」
「うん、二人一緒に」
「かしこまりました。問題ありませんわ」
受付嬢は営業用の完璧な笑みを浮かべ、二人の前へ一枚ずつの公的登録書面を滑らせた。
「それでは、まずお名前から伺いますね」
「リンだよ」
「ソラです」
「ご年齢は?」
「十五歳」
受付嬢の手が、ピタリと止まった。
「……お二人とも、十五歳ですか?」
「うん、そうだよ」
彼女は再び、二人の佇まいをまじまじと観察した。
「……一応確認しますが、ご両親の公的な許可(承諾)は得ていますか?」
リンはニカッと不敵に笑った。
「今日の朝、最高に温かい笑顔で見送ってくれたからね。完璧にオッケー(合理的)だわ」
受付嬢はこらえきれずに小さく吹き出した。
「ふふ、それなら結構ですわ」
彼女は筆記魔導具を走らせ、書面を埋めていく。
「過去に、実際の戦闘経験はありますか?」
リンは僅かに躊躇いを見せた。
「……まあ、一応ね」
ソラも重々しく頷く。
「いくつか、修羅場はくぐってます」
「正規の軍事訓練の経験は?」
「ないよ」
「公的な冒険者育成機関への所属歴は?」
「ないね」
「――どこかの、高等魔導学園の在籍歴は?」
「あるよ」
「……どこの学園ですか?」
リンが平然と言い放った。
「ティアムーンの、ルナリス王立学園だよ」
その瞬間、受付嬢の両眉がクッと驚愕に跳ね上がった。
「……なるほど。その若さでそれほどの絶対の自信(覇気)を放っている理由が、今ので完全に理解できましたわ。エリート中のエリートですのね」
リンは頭の横をガリガリと掻いた。
「いや、そこまで大層な自信があるわけじゃないんだけどさ」
ソラが冷ややかなジト目を彼女へと向けた。
「どの口が言うのよ。あんた、今日の朝、謎の魔獣(化け物)に向かって全速力で突撃しようとしてたじゃない」
「だって、めちゃくちゃキュートだったじゃん」
「あんたを丸呑みにできるサイズの化け物よ!?」
「それでもキュートなものはキュートでしょ。ロジックが通ってないね、ソラ」
受付嬢は二人の息の合った漫才を見て、楽しそうに大笑いした。
「あはは! だんだん、お二人の生態が分かってまいりましたわ」
すべての公的書面の記述が完了したその時、受付嬢はカウンターの上に、二つの小さな透明な結晶板(水晶ディスク)をそっと並べ置いた。
「――それでは、最後に一つの公的試験を行います」
リンはその美しい結晶を見つめた。
「これ、一体何をするもの(バグ)なの?」
「これは、対象の『魔素保有絶対質量』、および『属性適性』を寸分の狂いもなく正確に測定する装置ですわ」
リンは頷いた。
「なるほどね、了解」
彼女は躊躇うことなく、その細い掌を結晶板の表面へと真っ直ぐに押し当てた。
最初の数秒の間、何も起きなかった。
だが次の瞬間、結晶の内部から淡いオレンジ色の魔力光がじわりと溢れ出し、その全域へと滑らかに拡散していった。受付嬢は手元の測定器を見つめる。
――その光は、時間を追うごとに徐々に、その輝きを増していった。さらに強く。まばゆいほどに、激しく。
リンは不審げに眉をひそめた。
「……ねえ。これ、何か不都合でも起きてる?」
受付嬢は答えなかった。――いや、答える余裕すら持てなかったのだ。
放たれていた眩い魔力光が、突如として不気味にパチパチと明滅を起こし、次の瞬間――何の前触れもなく、すべての光が綺麗さっぱりと掻き消えて完全なる無へと戻った。
受付嬢は、手元の測定器が示した数値をただ呆然と凝視していた。
リンがぐっと顔を近づけて紙面を覗き込む。
「……何これ? どうなったの?」
その女性はガタガタと震える手で測定器を握り締め、信じられないものを見る目でリンを見つめた。
「……貴女の、この測定結果の数値……あまりにも、異例すぎる(アブノーマル)」
「異例、ってどれくらいよ?」
「……分かりません。私のこれまでの全人生において、このような波形は一度として記録されたことがありませんもの……っ!」
リンはパチクリと瞬きをした。
「……そいつは、最高に不安を煽られる回答だね」
受付嬢は完全に顔を引き攣らせ、戦慄の表情で呟いた。
「――魔素の絶対質量が、測定の閾値を突き抜けて『限界突破』を起こしている。こんなバグ……あり得ませんわ……っ!」
ソラが怪訝そうに顔を近づけた。
「……限界突破って、一体どういう意味よ?」
「……つまり、この真実の水晶の規格じゃ、彼女の魔素の絶対質量を正しく『分類』しきれなかった、ということですわ」
リンは自分の白くて細い掌を見つめた。これだけの騒ぎを起こしておきながら、彼女自身の肉体には何の異常も、普段との違いも感じられなかった。
受付嬢は慌てて補足を付け足した。
「あ、でも、決して何か公的に危険な化け物だと判定されたわけではありませんからね! 安心してくださいな」
「なら、オッケー(合理的)だわ」
その女性は手早く手続きを終えると、リンの前へ一枚の小さな結晶の板を差し出した。
「――はい、これで公的登録は完璧に完了ですわ。貴女の『冒険者証』です」
リンはそれを受け取った。カードの表面に魔力で刻まれた、自分の魔名――『リン』の二文字を見つめる。
その文字をじっと見つめているだけで、彼女の唇にふっと、何とも言えない温かい笑みが浮かんでくる。これまでの数年間、自分はただの学園の『生徒』に過ぎなかった。だが今、この瞬間から――彼女は本物の、この広大な世界を駆ける『冒険者』になったのだ。
その直後、ソラも自身の登録を迅速に完了させた。彼女の測定結果も『風属性超高適性』という異例の数値を示してはいたものの、先ほどのリンが引き起こした規格外の限界突破に比べれば、まだギルドの常識の範囲内(カテゴリー内)に収まる代物だった。
受付嬢はソラへも同じようにカードを手渡した。
「卒業おめでとう。これからの大活躍を期待していますわ」
ソラは満面の笑みを浮かべた。
「ええ、ありがとうございます!」
リンはすぐに、窓口の隣に掲げられた巨大な依頼掲示板へと視線をやった。
「で……」
ソラもその視線を追跡する。
「あんた、登録が終わった一秒後にはもう仕事を探し始めてるわけ?」
「当然でしょ。旅をするには、何よりもまず現実的な軍資金が必要なんだから」
「それは、最高にぐうの音も出ない正論ね」
リンは掲示板へと歩み寄った。そこには、周辺の地域から寄せられた様々な公的依頼が、ピンで大量に留められていた。
薬草の採取(採取クエスト)。商人の護衛(護衛クエスト)。定期便の配達。迷子の家畜の捜索。低級魔獣の定期間引き――。
リンはそれらの一挙手一投足を、その黒い瞳でじっと精査していった。やがて、彼女の指先が、ある特定の依頼書の前でピタリと停止した。
「――『ゴブリンの討伐』」
ソラがその隣へと滑り込んできた。
「これにするの?」
リンは相棒を見た。
「あんた、ゴブリンと戦いたい?」
「ロジック(合理的)に考えれば、これが一番手っ取り早いでしょ。構造が単純だし、何より新米向けにしては報酬が良いもん」
「まさにそれ(ガッチャ)」
リンは掲示板から、その依頼書を力任せに引き剥がした。
「よし。これが俺たちの、記念すべき最初の『攻略任務(初クエスト)』に決定だわ!」
ソラもまた、不敵にニィッと笑う。
「私たちの、本当の最初の冒険ね」
リンは剥ぎ取った依頼書を天高く掲げてみせた。
「おう、初陣(初冒険)だわ!」
二人の若き冒険者は互いに顔を見合わせ、刹那の間、無言で視線を交わし合った。やがてリンがニカッと、最高に獰猛で魅力的な笑みを浮かべる。
「勝った(ガッチャ)」
ソラはやれやれと肩を落としてため息をついた。
「はぁ……。私、やっぱりあんたと一緒に旅に出たこと、今の一秒で最高に後悔し始めたわ」
その日の夜。二人の少女は、集落にある小さな宿屋へと身を寄せていた。
あてがわれた部屋は決して広くはなかったが、サバイバルをするには十分に清潔で心地よい空間だった。左右の壁際に二つの頑強なベッドが並び、その間には木製の小さな卓。窓辺には小さな魔導オイルランプが置かれ、室内に夜の温かみのある柔らかな琥珀色の光を投げかけている。
屋外では、宿場町の喧騒が時間を追うごとに徐々に静まり返っていき、遠方を行き交う旅人たちの話し声も、今や完全なる夜の静寂へと呑み込まれて消え去っていた。
リンは卓の上に自分の冒険者カードをそっと置き、それをじっと見つめていた。この結晶の板は、単なる公的な身分証明書などではない。――それは、彼女にとって真なる『自由の証明』であり、新しい未来の幕開けそのものだった。
彼女はゆっくりとベッドから立ち上がり、窓辺へと歩み寄った。防魔ガラスの向こうには、広大な夜の天空が広がり、数え切れないほどの無数の星々が宿場町の闇を美しく飾り立てている。
ソラが、掛け布団の中から彼女のその横顔を見つめた。
「……あんた、まだあのこと考えてるでしょ」
リンは小さく頷いた。
「うん。あの、絶対的な存在感のことだよ」
ソラは静かに、親友の言葉に耳を傾ける。リンは窓の手すりに両腕を預けた。
「あいつが一体何者なのか、今の俺にはさっぱり分からん(特定不能だ)」
ガラス窓に、自らの黒い瞳が不気味に、だが確かな意思を持って反射している。
「だけどな……あの日感じたあの波形だけは、絶対に気のせいなんかじゃねえんだわ」
彼女の魂は、あの不条理なまでの感覚を完璧に記憶していた。――空間を圧殺するほどの奇妙な重圧、世界の理を容易くねじ伏せるほどの絶大な魔素。……にもかかわらず、その絶望的な暴威(格)の底にべっとりと張り付いていた、どうしようもないほどの懐かしさ。まるで、自分の本当の『家』に帰ってきたかのような、あの絶対的な温かさ。
リンの頭脳では、そのバグの全容を未だに処理しきれていない。だが――彼女は必ず、その真相を暴くのだと誓っていた。
「俺が必ず、あいつを直接この目で視て(見つけ出して)やるさ」
ソラはフッと、愛おしそうに微笑んだ。
「なら、私も一緒に行ってあげるわ。二人で見つけ出しましょう」
リンは振り返り、相棒を見つめた。
「二人で、一緒に?」
ソラは力強く首を縦に振った。
「ええ、一緒にね」
リンは満足そうに口の端を獰猛に釣り上げた。
「ガッチャ」
ソラはこらえきれずにクスクスと大笑いした。
「もう、いいからさっさと寝なさいってば。おやすみ、リン」
「おう、おやすみ、ソラ」
室内に、しんと静まり返るような静寂が訪れた。
二人の若き少女は、これからの街道の先にどんな未知の脅威が待ち構えているのか、現時点では知る由もなかった。遥か最果ての暗黒要塞において、最凶の魔王たちが円卓を囲んで謀略を巡らせ始めていることも。突如として出現した百層の魔塔が、すでに全世界の戦略的な警戒を引き寄せ始めていることも。
そして何よりも――リンがその魂の底で探し求めている、あの圧倒的な存在感の張本人が、すでにこの世界を手のひらの上で転がし始めて(動き始めて)いるということすらも、今の彼女たちには想像すらつかない代物だった。
今の彼女たちは、ただの、新しい未来(初クエスト)に胸を躍らせる十五歳の新米冒険者に過ぎない。
前方に延びる道は果てしなく長い。だが――その長い街道のどこかに、必ず彼女たちの求める『真実(答え)』が眠っているのだ。
――そして、その宿場町から遥か、遥か遠方の地。
刻一刻と夜の闇が深まりゆく最果ての天空、一人の圧倒的な影が、眼下に広がる広大な大陸を見下ろす巨万の山脈の頂(頂き)に、静かに直立していた。
――魔王ニクセラ。
彼女は片手に、先ほどディーヴォから渡されたあの薄い暗黒魔導報告書を携えていた。
もたらされた情報は、あまりにも不十分で、非合理的(不満足)な代物だった。ただの二文字の魔名、突如として現れた百層の魔塔、ごく最近システムから魔王として公式認定されたばかりの未知の存在。――『カイ』。
彼女の手に握られているのは、かろうじてそれだけのデータに過ぎなかった。もっと劇的な真相が隠されていると期待していただけに、この不都合なまでの情報の少なさは、逆に不気味だった。
ニクセラは報告書を乱暴に折り畳み、冷徹な視線を水平線の彼方へと向けた。
彼女の立っている座標からは、当然あの百層の魔塔の姿を直接視認することはできない。――にもかかわらず、その方角から、空間の位相を突き抜けて『微かな、だが致命的に奇妙な違和感(波形)』が絶え間なく押し寄せてきているのを、彼女の知覚素子は確かに察知していた。
彼女の真紅の双眸が、冷酷に、鋭く細められる。
「……貴方が、あの噂の新参の魔王ってわけね、カイ」
巨万の山風が猛烈な勢いで山頂を吹き抜け、彼女の漆黒の長い髪が、その風を浴びて妖しく激しくなびいていた。
彼女はこれまでの気の遠くなるような全人生において、数え切れないほどの圧倒的な絶対者たちと渡り合ってきた。――ある者は傲岸不遜たる態度で自滅し、ある者は慎重になりすぎて機を逸し、またある者は「自分の強さこそが絶対だ」とクソみたいなデタラメを信じ込んで自ら破滅の檻へと飛び込んでいった。
だが、この『カイ』という新参のバグは、それらのどれとも根本から異なる匂いを放っていた。
なぜだか理由はさっぱり説明できない。あの突如として現れた異常な魔塔のせいか。あるいは、彼の全身を取り巻いている、あの感知不能なほど精緻な魔素の隠蔽のせいか。……あるいは、ただの、その二文字の魔名の響きのせいだろうか。
カイ――。
ニクセラは眉間に深く皺を寄せた。
その瞬間、彼女の魂の最深部を成す術式の奥底で、何か(・)が唐突に激しく胎動した。
それは、記憶……? いや、違う。記憶などという生易しいデータではない。それよりも遥かに質の悪い、魂の根源に直接響き渡るような不気味な『共鳴』。
誰かのすぐ隣に並び立って戦っていたという、どうしようもないほどの確信。誰かの、聞き覚えのある低い声。――共に笑い合った笑声。凄惨を極めた、絶望の戦場。
――だが、その不気味なエコーは、一秒の後には何の前触れもなく綺麗さっぱりと掻き消えた。
ニクセラの表情が、一瞬にして冷徹なまでに険しく引き締まる。
「……今の、一体何のバグ(錯覚)だっていうの……?」
彼女は静かにその双眸を閉じ、内省の演算領域を展開した。――が、何も検知されなかった。そこにあるのは、ただ吹き荒れる山風の音だけ。完全なる、沈黙。
彼女は再び、その真紅の眼眸を開いた。あの奇妙な感覚は、とっくの昔に霧散して消え去っていた。
ニクセラは遥かな地平線の先にある、あの見えざる魔塔の方角を睨みつけ、その唇に不敵で、獰猛な笑みを刻んだ。
「――面白いじゃない」
彼女はクスクスと、喉を鳴らして妖しく呟く。
「……これはもう、私が直接そっちへ出向いて、その顔を拝みに行ってあげるしかないわね」
彼女は踵を返し、巨万の山頂の闇の奥へと、一陣の風となってその場から掻き消えていった。
彼女の真なる『調査』が、今ここに、本物の幕を開けたのだ。
――この時、宿場町にいる新米冒険者のリンも、最果ての山頂を降りた魔王ニクセラも、未だ知る由はなかった。
自分たちの歩むべき運命の進行経路が、現時点において、すでにどれほど残酷に、かつ完璧に一つの座標へと収束し始めているのかという、その絶対的な因果の恐怖を。
しかし現時点において、彼女たちをその致命的な真実から遠ざけている障壁は、たった一つしか存在しなかった。
――『時間』。
そして世界には、その理不尽なまでの猶予が、いくらでも贅沢に残されていたのだ。




