エピソード5: 目を逸らさなかった男
時には、探し求めた人ではなく、絶望の中で偶然出会った人が、人生を変えることがある。
孤独に歩き続けてきたカイが初めて出会ったのは、答えではなく、ただ隣にいてくれる一人の人間だった。
これは、長い旅の中で生まれた、小さな始まりの物語。
私は、頭では頑なに認めようとしなかった決断を、身体が勝手に下すまで、六日間歩き続けた。
倒れた瞬間のことは覚えていない。覚えているのは、木々の並ぶ景色が横向きに傾いたこと。そして、次に目を覚ましたとき、そこはもう森の地面ではなかった。
小さな焚き火。木の煙と古い革の匂いが染みついた毛布。そして、まるで他にすることなど何もないかのように、向かいに座って刃物を研いでいる男。
なるほど。死んでない。
それは――この時点では、実際のところちょっとした嬉しい驚きだった。
男は人間だった。少なくとも、一目見ただけならそう見える程度には。
野外で過ごした年月のほうが、屋内で過ごした年月よりずっと長い人間特有の、風雨に晒されたような風貌をしていた。
顎から鎖骨へと伸びる長い傷跡がある。古く、白くなった傷だった。もうずっと昔に、本人にとっては何の意味も持たなくなったような傷。
「目が覚めたか」
男は砥石から視線を上げずに言った。
「よかった。三マイルも死体を運んで、無駄だったのかと思い始めてたところだ」
「……ここはどこだ?」
「お前が倒れた場所から三マイル離れたところだ。それ以上知る必要があるのか?」
なるほど。確かにその通りだ。
起き上がろうとした瞬間、すぐに後悔した。
身体中が痛む。
何日もの間、頑固さだけを燃料にして動き続けた身体が、ようやくそのツケを払っているような痛みだった。
男は何も言わず、水筒を放ってよこした。
俺がもう一度話せる程度に水を飲むまで、黙って待っていた。
「俺はドランだ」
男が言った。
「お前は?」
「カイ」
「カイだけか?」
「カイだけだ」
男はそれ以上、何も聞かなかった。
そのことを、俺が思っていた以上にありがたく感じていたことは、口には出さなかった。
自分がまだ話す準備のできていない過去を、無理に聞き出そうとしない人間なんて、どの世界でも珍しいものだから。
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俺が何者なのか。
ドランがそれに気づくまで、一日もかからなかった。
俺が一度だけ、彼の視線を自分の手に感じたことがある。
何も考えずに、アンチマナの糸を一本引き出したときだった。
六日間、ただひたすら真っ直ぐ歩き続け、ほとんど飢え死にしかけた後でも、まだ自分の力が使えるのかを確かめるためだった。
中心は赤。
その周囲から、紫が滲み出ている。
かつて国境近くの町で、ある商人が俺から目を逸らしたのと同じ色。
そして、俺自身の母親の顔に浮かんだ、俺には見せたくなかった表情と同じもの。
けれど、ドランは目を逸らさなかった。
ただ、ぴたりと動きを止めた。
重要な何かを計算し直している人間が見せる、あの静止だった。
「そんな色は、今まで見たことがない」
やがて彼は言った。
慎重な声だった。
敵意はない。
ただ、慎重だった。
「そうだな」
俺は答えた。
「俺もだ。少なくとも、他の誰かに同じものがあるのは見たことがない」
「その色が何を意味するのか、知っているのか?」
「知らない」
そこだけは、本当だった。
「ただ、二体のドラゴンが、それを理由にするには十分すぎるほどの何かだと考えて、俺の両親を殺したことは知ってる」
そこまで言うつもりはなかった。
それでも、言葉は勝手に出てきた。
平坦で、静かな声だった。
そして、一度口にしてしまうと、取り消したいとも思わなかった。
ドランは長い間、何も言わなかった。
やがて砥石を置いた。
「お前、何歳だ?」
「八歳」
「それで、六日間一人で歩いてきたのか?」
「その前から数えるなら、もっと長い」
ドランは鼻から息を吐いた。
笑いとも、ため息ともつかない吐息だった。
「神々よ。分かった」
彼はそう言って、まるで既に決断を下していて、それをわざわざ宣言する必要などないかのように、再び砥石を手に取った。
「何者であろうと、お前はもう六日間も一人で歩ける状態じゃない。だから、もう歩かせない」
「俺は、あんたにどこかへ連れて行ってくれなんて頼んでない」
「そうだな」
ドランは認めた。
「お前は頼んでない」
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もっと俺が抵抗したと言いたいところだ。
でも、そんな力は残っていなかった。
その時の俺は、身体だけじゃなく、心のどこかでも疲れ切っていた。
その部分は、何もかもを経験する前の、ただの八歳の子供だった。
脚が疲れていたんじゃない。
一人でいることに、疲れていた。
「ここから二日歩いたところに町がある」
夕食の最中、ドランが言った。
幸いなことに、自分で焼いて焦がしたものではなかった。
「小さな町だ。重要な人間は誰も立ち寄らない。つまり普通は、重要な誰かがそこで何かを探していることもない」
彼は続けた。
「そこで休め。これから自分が本当は何をしたいのか、考える時間もできるだろう」
「それで、あんたは? あんたは俺から何を得たいんだ?」
俺がそう尋ねると、ドランは思っていた以上に長い間、その質問について考えた。
「まだ分からない」
やがて彼は答えた。
「俺のほうが、お前のそのオーラのせいで殺されるかどうかを判断したら、もう一度聞いてくれ」
少なくとも、正直ではある。
正直なら、俺は付き合える。
「何の意味があるのか、俺にも分からない」
俺は言った。
「ただ、これは俺のものだってことだけは分かってる。それに、これを理由に俺を殺そうとする次の相手に、いちいち謝るつもりもない」
その言葉を聞いた瞬間、ドランの表情がわずかに変わった。
それが何だったのか、俺には分からない。
承認とも違う。
それ以外の何かとも言えない。
ただ、一人の男が、もう一度何かを計算し直していた。
そして今度は、最初に考えていた場所とは少し違うところへ、その答えを置いた。
「寝ろ、カイ」
ドランが言った。
「二日間の道のりは長い。それに、今度は空腹のまま歩かせるつもりはない」
その夜、俺はその六日間で一番よく眠った。
何も解決したわけじゃない。
それでも眠れたのは、初めてだったからだ。
山を出てから初めて、俺が眠っている間、見張ってくれる誰かがいた。
たった一人。
それは、俺が持っていた家族とは違う。
でも――何もないわけじゃない。
これは、始まりだ。
ドランは、特別な登場をしたわけではない。
ただ、倒れていた少年を見つけ、手を差し伸べただけだった。
でも時に、人の人生を変えるのは、大きな奇跡ではなく、小さな優しさなのかもしれない。
カイにとって、これは初めて得た「一人じゃない」という証だった。




