第53話:かつてのライバル
それからの数日間、ひまりは地下の特設インフラ施設の奥深くへと、ごく自然に腰を据えていた。お袋の――いや、ハルトのお袋さんのカプセルのすぐ隣にある静かな区画が、今や彼女の絶対的な定位置のようになっていた。
最初の夜、カイは生き残ったすべての幹部とスタッフ――クロエ、ひまり、ニュクサーラ、ソフィア、そして未だにこの最悪の現実に脳内データの処理が追いついていない一握りの生存者たち――を一堂に召喚し、一切の生温いオブラートに包むことなく、事実の全容を冷徹に開示した。
「アイヴィーとエンゾが拿捕(拉致)された」
カイは淡々と言った。その瞳の【漆黒】が、妖しく蠢く。
「そして、それ以外の仲間たちの命は、システムから完全に永久消滅させられた。――俺は、どちらの負債(借り)も、ただの一言も踏み倒してやるつもりはないぞ」
どこの誰からも、反対する反論の呟きすら上がらなかった。
事件の衝撃的なログは、バラバラになった出張所の間に辛うじて機能していた通信網を経由し、その日のうちにティアムーン王国へと到達した。カイはその日の夜、超遠隔の思念伝達を使って、現地にいるエースの意識へとダイレクトにリンク(接続)を確立した。
(――そのままユキの傍らを死守してくれ。聖騎士団の精鋭部隊も、絶対に一歩も離すなよ。この侵略の包囲網が、一体どこの座標まで広がっているのか、未だに全容が読めないんだ)
(了解した)エースの声が脳内に響く。いつものドライなだらしなさの裏側に、本物の、凶悪なまでのシリアスな響きが混ざっていた。(……すまない、カイ。俺が地上の留守を守っていながら、こんな大惨事を――)
(いや、俺のほうこそ、すまない)
そして二日後の午後、ついにネロがこの地下施設へと帰還を果たした。――主との約束通り、世界中の至高の領域から、あの【混沌の申し子たる器】を精錬するための神話級素材を、残さず根こそぎ略奪(回収)して戻ってきたのだ。
……だが、この深淵魔皇は、ただ一人で戻ってきたわけではなかった。
彼の左右を挟むようにして、二人の見慣れぬ、しかしデタラメなプレッシャーを放つ人影が、ごく当たり前のような顔で歩を進めていた。
その二頭の気配を完璧にマークした瞬間、ニュクサーラの表情が、これまでにないほどに引きつった。
「……ネロ」
彼女は、地を這うような低い声で、ゆっくりと問い詰めた。
「あんた、一体全体、世界のどこでどんな最悪の余興(お仕事)を引っかけてきたわけ?」
「よぉ、【ナンバーファイブ】」
男の姿をしたその人影が、不敵にニカッと口元を吊り上げた。
「随分と久しぶりじゃないか。何だ、あれから二年ぶりくらいか?」
「四千百年よ」
隣に直立する女の姿をした人影が、表情を一切変えず、冷淡にその数値を訂正した。
ニュクサーラは、そっと自分の額を押さえて深いため息をついた。
「……あんた、こともあろうに【ナンバーワン】と【ナンバーナイン】の封印を、まとめて抉じ開けて解放しちゃったわけね」
「いや、あいつら、近所の座標でまだ大人しく封印されてたからさ」
ネロは肩をすくめ、拍子抜けするほど平然と言い放った。
「ちょうど素材の略奪ルートのついでだったし、そのまま放置しておくのも、ファミリーのよしみとしてちょっと不作法( rude )かなと思ってね」
「主、あいつらは俺たちの古い往年のライバル(原初の悪魔)たちよ」
ニュクサーラが、カイのほうを向いて呆れたように解説を差し込んできた。
「ナンバーワン、私、そしてネロが進化する前のナンバーエイト。……ぶっちゃけ、私たちの因縁のログは、四千年どころか、数万年規模の暗闇の彼方まで右肩上がりに遡るんだけどね。本当に」
ナンバーワンは、日を追うごとに、いや、一秒経過するたびに右肩上がりに肥大化していくネロの絶対的なステータスを見つめ、心底信じられないといった風に目を細めた。
「……随分とデタラメに強くなったものだな、ナンバーエイト」
「――『ネロ(Nero)』だ」
深淵魔皇の瞳が、一瞬にして冷徹に研ぎ澄まされ、あいつの言葉を鋭く一刀両断した。
「それが、今の俺の正当な名前だ。主から直々に授かった、唯一無二のな。……二度と、俺をそんな過去の、出来損ないの番号で呼ぶんじゃねえよ」
しかし、ナンバーワンとナンバーナインの二頭は、そのデタラメな警告を、ただのハッタリ(言葉通り)として素直に受け入れるほど、殊勝な性格ではなかった。
古いライバルがいつもそうであるように、あいつらはネロの実力を試す(小テスト)ため、何の予兆もなしにいきなり超高速の奇襲を仕掛けたのだ。
――だが。
それは、お世辞にも『互角の戦闘(殺し合い)』と呼べるシロモノではなかった。
命名による限界突破、そして【深淵魔皇】への融合覚醒。そのプロセスを経て達したネロの絶対的な格付けは、あいつらの脳内データにある過去の数値を、完全に別次元の tier (階級)へと上書きしていたのだ。
ネロは二頭の最大出力を、いつもの退屈そうな、かつ極めて効率的な手際で、まとめてあっさりと片手で撥ね退けて(処理して)みせた。まるで、分を弁えない分からず屋の子供たちの不手際を、ごく淡々と教育し直してやるかのように、だ。
爆煙が晴れた後、ナンバーワンはその場に直立したまま、本気で呆気にとられたように凝視した。
「……どうやって、そこまでの絶対的な出力を手に入れたというのだ」
「だから言っただろ」
ネロはフッと不敵に笑い、自らの漆黒の外套を翻した。
「……俺は、最高の主に『名』を授かったんだよ」
ナンバーナインの瞳の奥が、強烈な好奇心と凶悪なまでの興味の色へと、一瞬にして塗り替えられた。
「……誰が、それをやったの? 原初の限界値を力づくで書き換えるなんてデタラメが可能な存在なら、この私も、その全容をきっちりとデータ(お近づき)に登録しておく価値があるわね」
「魔王カイだ」
ネロは誇らしげに胸を張る。
「我が主なら、名前どころか、あんたたちさえ望むなら、その古びた魂に全く新しい最強の生体インフラ(肉体)をオーダーメイドして上書きしてくれるぜ?」
ナンバーワンとナンバーナインの二頭は、互いに素早く、意味深な視線を交わし合った。
「……その男に、会わせてもらいましょうか」
ナンバーワンが、低く厳かに告げた。
「世界の新しい統治者の器にふさわしいかどうか、私たちの目で直接、システムチェックをさせてもらうわ」
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ネロはあいつらを連れてホライズンクレストへ――いや、正確にはその『無残な残骸』へと帰還したわけだが。目の前の壊滅的な惨状を完璧に認識したその刹那、この深淵魔皇のいつもの絶対的な冷静さは、一瞬にして完璧に決壊した。
「……何が」
地を這うような、極めて平坦な声だった。
「……ここで何が起きた、カイ様」
カイは他の仲間たちに告げたのと同じように、ただ淡々と、理路整然と事実のログを開示した。
ネロの表情の奥底に、常軌を逸した獰猛な殺気が完全に沈着していく。
「……で、あんたはこの理不尽なイベントを、ただのバグとして見過ごす段取り(つもり)なのかい?」
「まさか。あり得ないな」カイの瞳の【漆黒】が妖しく蠢く。
「最優先の実務は、アイヴィーとエンゾの奪還だ。あんたのシステムで、二頭の現在座標を逆探知できるか?」
「ああ、可能だ」
ネロはすでに背を向け、その足を闇へと奔らせていた。
「……すぐに、あいつらを見つけ出してやるさ」
深淵魔皇はそれ以上の余計な言葉を一切残さず、即座に境界を跨いで出撃していった。
カイは残された二頭の原初の悪魔へと、その冷徹な視線を転じた。
「俺に会いたかったんだろ」カイは淡々と言った。
「――ここにいるぞ。何の用だ?」
ナンバーナインは、その潤んだ瞳でじっと目の前の少年を観察していた。
「ネロがこれっぽっちの躊躇もなくあんたの命令に従っている。その一事実だけで、あんたの宿す本当の格付けがどれほどの怪物であるのか、そこらの報告書より遥かに雄弁に物語っているわね」
ナンバーワンが一歩前へ進み出で、完璧な所作で恭しく一礼した。
「もし、あんたにその絶対的な出力を流す度量があるのなら……この私にも、一振りの『名』を上書き(授けて)もらいたいものだね」
カイはほんの少しの間だけ思索を巡らせ、そして静かに頷いた。
「――『ヴァドス(Vados)』だ」
その瞬間、世界に決定的な書き換え(エラー)が発生した――。あいつの全身から放たれたプレッシャーが猛烈に爆発し、悠久の年月を経て凝固していた原初の魂が、全く新しいアイデンティティの元へと完璧に再構築されていく。
「あんたは?」カイはナンバーナインを見た。
「――『セナ(Senna)』よ」
《告知。対象個体の進化条件が完全に満たされました。――進化のルートを選択してください》
カイの選択は、いつだって同じだ。
「当然、両方だ。全部乗せで頼む」
システムへの絶対コマンドが上書きされ、二頭の身体を幾何学的な光の術式構造が順番に包み込んでいった。
極限の進化のプロセスが完了した時、ヴァドスとセナの二頭は、その場に揃って恭しく膝を屈していた。その表情には、主に対する絶対的な忠誠の数値が完璧に刻み込まれている。
「我が忠誠のすべてを貴方様へ、カイ様」ヴァドスが低く厳かに告げた。
セナもまた、その肉体をピンと引き締め、カイを見上げる。「……私たちに、いかなる実務(ご命令)を?」
「『シミズ帝国』を徹底的に監視してくれ」カイは冷徹に命じた。
「ヴァドスは東の帝国領。セナは北の帝国領だ。奴らが西の領域に向けて一歩でも軍勢を動かした瞬間、そのデータを俺の脳内へダイレクトに転送しろ」
「――了解いたしました」
二頭の新たな深淵魔皇は同時に応じるなり、一瞬にして空間を割ってそれぞれの持ち場へと旅立っていった。
クロエはその完璧すぎる主従の誕生のイベントを、いつものジト目で面白そうに眺めていた。
「あんた、本当に飴玉でも配るみたいな手軽さで原初に名前を上書き(連発)してるわね……」
「くれぐれもリミッターを外して自壊しないでよ、ハルト」ひまりが、半ば本気の呆れ顔で釘を刺してくる。
ニュクサーラはただ呆れたように首を振るだけだった。
「……それで、カイ。お袋さんのその『器』の精錬(製造)、いよいよ始める段取りかしら?」
――ニュクサーラがその問いを紡ぎ終えるよりも前に、カイはすでに実務(精錬)を開始していた。
彼はネロが命がけで略奪(回収)してきた至高の至宝の数々を、特設の培養カプセルへと次々と投入していった。
『原初の竜骨』。
『世界樹の創生木』。
『虚無鋼』。
『創生の真髄』。
そして、その中央スロットに【原初混沌結晶】を完璧にセット(ドッキング)した。次の瞬間、空間に幾何学的な術式の奔流が爆発的に咲き乱れ、地下室の全域が一分の曇りもない眩い光によって完全に満たされた。
素材のデータが、ゆっくりと、しかし極めて緻密に融合を開始する。カイの両手の魔力制御に従い、世界に前例のない至高の肉体が、一パーツずつ完璧な輪郭を成して組み上がっていく。彼はそこへ、エレーンと共に安定化させたあの超高純度の【創生エネルギー】を限界まで注ぎ込み、結晶の輝きが右肩上がりにその出力を増していくのを見届けた後、自らの宿す純粋なる【無】の魔力を、その肉体の構造そのものへと直接強制融合させた。
そして。
彼は自らの胸の奥底へとそっと手を伸ばし、生まれて以来、ずっとその魂のストッパーとして眠り続けていたお袋の【混沌の核心】の『半分』と、あの次元結界の残骸から根こそぎ吸収した『もう半分のデータ』を、同時に自らの身体から引き抜いた。
カイは、その二つの核心を、完成しつつある器のド真ん中へと静かに配置した。
カチリ。
二つの破片は、接触したまさにその刹那、完璧に一つの完全なる円へと融合。
じつに八十年以上の歳月を経て、あの【混沌竜】の核心が、正真正銘の完全体として世界にリブート(復元)を果たしたのだ。
カプセルの内部において、コアの周囲に凄まじい速度で生体組織(筋肉)が物質化し、次いで、一分の綻びもない美しい肌がその肉体を覆っていく。そして形成されたその『顔』――それは、カイがこれまでの前世と現世の生涯において、ただの一度も写真として目にしたことのない、けれど夢の中で、断片的な記憶の彼方で、ずっと恋焦がれ続けてきた、最愛の『母親』の顔そのものだった。
肉体の完成と同時に、光を浴びた宝石のような、鮮やかな『深紅の長髪』がカプセルの中へと美しく広がっていく。
彼女は、未だに深い眠り(昏睡)の中にいた。
カイは、呼吸の実務すら完全に失念したまま、ただじっとその瞬間を待った。
ドクン。
――その瞬間、世界に、正真正銘の『最初の鼓動』が力強く鳴り響いた。
(……本当に、ここにいるんだ。お袋が、本当に、我が家に戻ってきたんだな……!)
そのたった一発の鼓動の数値は、この世界のすべての常識を根底から震わせる、あまりにも古く、あまりにも強大な絶対波動となって、大陸全土へと瞬時に伝播(奔流)していった。
ニュクサーラが最初にその気配を肌で感じ、高座の上でピタリと動きを止めた。
はるか彼方の座標でアイヴィーとエンゾの足取りを血眼になって逆探知していたネロは、その絶対的な波動を前に完全に足を止め、その口元に最高の、不敵な笑みを浮かべた。あいつの胸の中に、今回の復讐の任務とは全く関係のない、本物の温かな喜びの数値が弾き出されていたからだ。
シミズ帝国の国境守備隊の死角に潜入したばかりのヴァドスとセナの二頭も、自らの身体の芯を巨大な津波のようなプレッシャーが通り抜けていくのを、ただ静かに感じ入っていた。
自身の砦の最深部に座していたカズヒコ・オノは、その波動を感知した瞬間、静かにその目を閉じた。
(……フッ、本当にやり遂げやがったか、あのバケモノめ)
エラリア・シルヴァレンヌは、その絶対的な大質量が【常緑王朝】の最奥にまで到達したのを感じ取り、自らの数万年の記憶の彼方に眠っていた、とっくの昔に忘れ去られていたはずの古い古い『一頭の竜の影』を、否応なしに思い起こされていた。
そして。あの真竜ヴォラスとスコルンの二頭は、その波動が空間に木霊した瞬間、その肉体を限界までカチカチに硬直させた。魂のログが弾き出したその照合データは、一瞬の狂いもなく、完璧にあいつらの『答え』を指し示していたからだ。
――姉上が、復活した。
ナオ・シミズは、陽の光がただの一筋すら届かぬ暗黒の間において、ただ不敵に、最高に楽しそうに微笑むだけだった。
培養カプセルの前に直立したまま、カイは自らの手で創り上げた最高のお袋の姿を見つめていた。――傷一つない完全な状態で、今ここに実在し、ただ穏やかに眠りについているその姿を。
これまでの過酷な年月、自分の胸の奥底でずっと疼き続け、今回のイベント(壊滅)が起きるまでその本当の形すら理解できていなかった『剥き出しの傷口』が、今、完璧に、そして静かに塞がっていくのを感じていた。
「おかえり、お袋」
カイは、誰の耳にも届かぬ極小の声で、静かに呟いた。
彼女からの応答は、まだない。まだ、その時は訪れていない。
――だけど。彼女は間違いなく、今ここに、確かに『実在』のだ。
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お袋(混沌竜)の鼓動が世界を揺るがした、まさに三日後のことだった。
【常緑王朝】からの正式な使者が、カイの元へ一通の直筆の書状をもたらした。地下施設の外に直立し、隣にひまりを従えた状態で、カイはその封を静かに切った。
送り主は、エルフの女帝エラリア・シルヴァレンヌ。正真正銘、彼女自身の直筆だった。
書状には、ホライズンクレストの壊滅に対するお悔やみが記されていた。そして彼女は、その大惨事の中で少なからぬ数のエルフが命を落とした事実を知り――その報告書の中に刻まれていた『とある致命的な詳細データ』を目にした瞬間、人生で最大級の衝撃に直面したのだという。
――あのイベントで死亡したエルフの長老。あいつはかつて、何らかの不和の段取りによってエルフ帝国を出奔し、完全に疎遠になっていた『彼女の実の息子』だったのだ。
彼女の提示した条件は、極めて pragmatism (理路整然とした実利)に基づいた全面同盟だった。
エルフ帝国は西の領域に位置し、ホライズンクレストは南、そしてアシュフォード、ミラス、ロシャンのすべてが、あのシミズ帝国が次に仕掛けてくるであろう侵略の絶対防衛圏(射程内)にある。近隣の魔王たちの領地も同様だ。もしシミズがこの西の領域を根こそぎ略奪(支配)すれば、カイがこれまでの年月をかけて積み上げてきた日常のインフラも、それ以上に遥かに古いエルフの歴史も、すべて連鎖崩壊(全滅)することになる。
(……あいつの言うことは間違いないな。これはもう、俺一人の復讐の枠に収まるような、そんなちっぽけな大波じゃない)
しかし、その書状には『書かれていない真実』があった。――のちにヴァドスとセナの二頭が水面下で血眼になって回収してきた極秘の諜報データによって、カイはナオ・シミズの本当の行動理念を完璧に言語化することになる。
彼女は、決して誰かに操られて(傀儡として)動いていたわけではなかった。
ジローの持つ【支配】の術式が、彼女の背中を侵略に向けて強力にエスコートしたことは確かだろう。だが、もう一つの大罪特性【強欲】に関しては、彼女の魂にはただの一ミリも purchase (付け入る隙)を見出せなかったのだ。なぜなら、ナオ・シミズという怪物は、自らを強欲だなんてこれっぽっちも思っていなかったからだ。
彼女の脳内システムにおいては、西の領域のすべては最初から『自らの所有物』として当然のように格付けされていた。ただこれまでは、この領域に点在する最高位魔王たちの絶対的な出力や、未だ全容の掴めぬ【西の竜】の不気味な生存の噂を警戒し、完璧なタイミング(日常)をじっと辛抱強く待っていただけに過ぎない。
だが、あの真竜ヴォラスとスコルンとの絶対同盟が、そのパワーバランスの数値を完全に書き換えた。
長年温め続けてきた自らの野望を、力づくで具現化するための絶対的な武力を手に入れたのだ。
(ジローがこの大波を創り出したんじゃない、か)
カイは、脳内でそのデータを冷徹に噛み砕いた。
(あいつはただ、ナオ・シミズが最初から狂おしいほど欲しがっていた爆弾の、すでに配線が完了していた『起動スイッチ』を、偶然見つけてポチッと押しただけに過ぎないんだ)
それは、単なる他人の操り人形なんかよりも、遥かに、絶望的なまでに危険なバケモノであることを意味していた。
カイはエラリアからの不可侵および共同防衛の提案を、一瞬の躊躇もなく受諾。さらにその日のうちに、ドワーフ王国へも同等の同盟パスを強制接続した。
この西の領域の諸国家が、歴史上初めて、互いの信頼なんかではなく『生き残るための絶対的な実利の必要性(システム要件)』によって、完璧な一枚の防壁へと統合されたのだ。
翌日。【常緑王朝】の大評議会において、緊急の国際最高幹部会が招集された。
カイは直属の護衛としてクロエとセリの二頭を随行させ、ひまりは地下施設に残り、お袋のカプセルの絶対防衛に就いた。
会談の場へと跨いだ瞬間、そこにはエルフ帝国、アシュフォード、ミラス、ドワーフ王国、そしてフィオラーノ領のすべての統治者たちがすでに直立しており、その全員の視線が、主役であるカイの登場へと完璧にロックオンされていた。
エルフの女帝エラリアは、カイが予想だにしていなかった段取りで会議の幕を開けた。――一国を統べる女王としてのプライドを完全にデリートした、直球の、心からの謝罪だった。
「……ホライズンクレストの惨劇について、心からお悔やみ(謝罪)を申し上げるわ、カイ。そして、貴方が支払うことになってしまったあまりにも過酷な対価(喪失)に対しても。――私が、もっと早くに貴方の元へ手を伸ばしておくべきだったわ」
彼女は、手元の報告書ログを極めて淡々と開示した。
シミズ帝国の軍勢は、『元々は自国に帰属するはずの魔導兵器を正当に回収する』という不条理な建前を掲げてホライズンクレストを強襲。そして現在、その勢いのままこの西の全域へと一気に右肩上がりに軍勢を拡大させる段取りを、公然と進めているという。
「その、貴方の創り上げた兵器(大量破壊兵器)についてだけど」エラリアが真っ直ぐにカイを見つめる。
「……それらは本当に、シミズの所有物だったの? 実際のところ、それらはどれほど危険な天災要素を孕んでいるのかしら」
「あいつらの物なんかじゃ断じてない。全部俺の退屈しのぎの産物だ」カイは淡々と言った。
「だけど、その本当の最大出力の破壊力がどれほどの規模になるのかは、俺自身まだテストしたことがないんだ。……お袋がさ。俺がそれらのデタラメな兵器をデモンストレーションするのを、強くこだわって完全封印(禁止)してたからね。『そんな不条理なモノを外に見せびらかしたら、近隣の国々が、今度は俺たちを侵略者だと勘違いしてアラートを鳴らし始めるわ』って、俺を必死に制してくれてたんだ」
「エレーン……」エラリアがその名を呟く。「……その子について、教えてもらえるかしら」
「エルフだ」カイの声が低くなる。
「うちの国のすべての交易と、内政の実務を完璧に回してくれていた、最高の仲間だった。――あの大襲撃のイベントで、死亡したよ」
会議室全体の空気が、一瞬にして完璧な死の静寂へと塗り替えられた。
「……他に、誰を失ったの?」エラリアの声が、一段と低く、悲痛なトーンへと落ちていく。
「エリス。エレーン。それから、あの未開の山で出会ったエルフの長老と、その家族。――あいつの妻も、あの健気だった娘も、全員だ」
エラリアの身体が、ピタリと、完全に凍りついた。
「その長老の……名前を」
彼女の absolute (絶対的)な仮面の下から、掠れた声が漏れ出た。
「……何という名だったのか、正確に言語化(教えて)ちょうだい」
カイは、あいつの脳内データをそのまま告げてやった。
その瞬間、エルフの女帝としての完璧な絶対の気品( composure )が、一瞬にして内側からバキバキに決壊した。溢れ出す絶望の悲しみが、彼女のステータスを猛烈に侵食していく。
「……私の、息子だった子よ」
彼女は、ボタボタと涙を流しながら、極小の声で呟いた。
「……何万年も前に帝国を出奔して以来、私はあの子のデータを一度だって更新(再会)することが叶わなかった。――ごめんなさい、カイ。貴方の喪失に対してだけでなく……それが、他ならぬ私自身の『最悪の喪失』でもあったということに、今の今までただの一ミリも気づけなかった不甲斐なさを、許して頂戴……」
部屋を満たすプレッシャーのベクトルが、この瞬間に完全に別次元のモノへと上書きされた。――ただの事務的な戦況報告なんかではない。今ここに、共通の最悪の悲しみを共有した『家族(身内)』としての絶対的な連帯のインフラが、完璧に構築されたのだ。
「……貴方は、このシミズ帝国との全面戦争(お仕事)に、どう臨む段取りかしら?」
長い、長い静寂の時間が過ぎ去った後、エラリアがその瞳を鋭く研ぎ澄まして尋ねた。
「あんたたちが考えているような、そんな生温い戦争をするつもりはないよ」カイは淡々と言った。その瞳の【漆黒】が、妖しくきらめく。
「一介の兵士どもの軍勢(有象無象)を相手におままごとをする気なんて毛頭ない。俺の狙う絶対的な標的は――ヴォラス、スコルン。そして、ナオ・シミズ。その『三つの首』だけだ」
その瞬間、評議会は蜂の巣をつついたような大狂乱の渦へと叩き落とされた――正気か、不条理だ、二頭の真竜とあの無敗の女帝を同時に相手取って、生存できる勝率など世界に実在するはずがない、と諸王の怒号が飛び交う。
だが、エラリアがそのすべての雑音を、鋭い一声で一刀両断にクローズさせた。
「――静カフェ(静まりなさい)! カイがその三頭の絶対的な化け物を引き受けて正面からケリをつけてくれるというのなら、奴の企み(ビジョン)は、すでに我ら全体の国益と同盟のインフラに、完璧に右肩上がりに合致しているわ! あいつには、その復讐の実務を好きなだけ遂行させればいい。残された我らの連合軍が、東と北の国境から押し寄せてくる敵国の兵士どもを、総力戦で完璧に迎撃(手揉み)する。――これ以上の美しい段取りはないわ!」
カイはその決定を、静かに受け入れた。
――だが、その作戦行動が正式に確定するよりも、一瞬早く。
空間の深層から、あの深淵魔皇ヴァドスの【超遠隔思念伝達】が、限界突破のアラートとなってカイの脳内へと鋭く突き刺さった。
『――主! 奴らが動いた! 両方の戦線、東も北も同時だ! 今この瞬間から、本格的な侵略(進軍)が開始されたぞ!』
ほぼ同時に、評議会の重厚な鉄扉が勢いよくぶち破られ、血相を変えた前線の斥候兵たちが議場へと乱入してきた。脳内データと全く同じエラーログの報告――シミズ帝国の東部軍、ならびに北部軍の圧倒的な大質量が、すでに国境線を跨いで侵撃を開始した、と。
エレーンを失った後のエラリアの決断と実務の速度は、常軌を逸した次元に達していた。彼女は魔剣を抜き払い、瞬時に全軍へと絶対コマンドを上書きする。
「――全軍、直ちに出撃! ここにいる諸王、すべての同盟戦力――今この瞬間から、我らの日常のすべてを懸けて、絶対防衛戦を執行するわよ!」
「――了解!」
満場一致の、狂ったような鬨の声が議場全体を激しく震わせた。
彼女は、最後にカイの直立していた高座のほうへと、直球の視線を向けた。
「……カイ、貴方は――」
だが、彼女がその言葉を最後まで紡ぎ切るよりも前に。
【竜魔王】カイ・コバヤシの姿は、すでにその座標から、影も形も完全に消滅(消え去)っていた。
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地下の特設インフラ施設へとリブート(帰還)したカイを、ひまりが完璧な戦況報告を携えて出迎えた。
「東方の教会から聖騎士が十万」彼女は冷徹に告げた。「北方も同数よ。さらにそれぞれの戦線に重装歩兵が三十万ずつ。――総勢八十万の大質量(軍勢)がこちらへ向けて進軍中よ」
「……それで?」カイは、姉の表情の奥にあるさらなる綻び(エラー)を読み取って訊ねる。
「教会の最高戦力たる【聖二十二輝光】の複数個体がすでに戦場に現れたわ」彼女は声を潜めた。
「ヴォラスとスコルンは?」カイが尋ねる。
「ヴァドスとセナのシステムスキャンでも、あの二頭の魔力波形は未だに検知されてないわ」
「ネロは?」
「あいつなら、アイヴィーとエンゾの幽閉座標を完全に逆探知したわよ」ひまりが言った。「北方の『氷結島』の地下深く、結晶の封印陣の中に囚われているわ。あいつなら『あんなおもちゃ(結界)、一瞬で粉砕して見せますよ』って、絶対的な確信を吐いてたわ」
「よし」カイは淡々と頷いた。
彼は次に、傍らに控えるソフィアへとその冷徹な視線を向けた。
「アシュフォード王国が、最初に奴らの東方軍のプレッシャーを受けることになる。ソフィア、あんたは今すぐあそこへ向かってくれ。現地軍の防衛を直接エスコートするんだ」
「了解よ」
彼女は迷いなく頷くや否や、即座に『霧のゲート』を跨いで前線へと奔り去っていった。
残された決戦の布陣は、極めて迅速に確定した。――カイ、ニュクサーラ、クロエ、ひまり、そして一歩も引かずにこの場に居座り続けていたラヴェシア。ティアムーン王国におけるユキの絶対防衛に関しては、エースが直属の精鋭部隊と共に引き続きその実務(お留守番)を死守している。
「……私は一度、自分の領域へと帰還させてもらうよ」
ラヴェシアが、心底名残惜しそうに、しかし理路整然と告げた。
「本拠地からこれほど遠く離れた座標にいては、私の宿す魔王としての絶対権限の出力を完璧に維持しきれないからね」
「分かった」カイは言った。「ここまで付き合ってくれて、本当に感謝してるよ」
彼女が自らのゲートを抉じ開けて撤退したことで、この世界大戦の最終的な段取り(チェス盤)が完璧に固定された。
出撃の直前、カイは培養カプセルの前へと最後にもう一度だけ歩み寄り、お袋の穏やかに眠るその顔を見つめた。
(まだだ。……俺にはまだ、片付けなきゃならない最悪の実務(復讐)が残ってるからな)
彼は地下施設全体の基礎インフラに対し、持てる持てる最大出力の【創生結界】を強制発動。これまでに創り上げてきたどんな防壁よりも、遥かに完璧な、逆立ちしたって誰も触れられない絶対封印を施した。
「……お袋が目を覚ます前に」
カイは、誰の耳にも届かぬ極小の声で、静かに、しかし絶対的な誓いを空間に刻みつけた。
「――俺は必ず、ここに帰ってくるよ。まずはあいつらに、溜まりに溜まった最高額の対価(負債)をきっちりと支払わせてからな」
次の瞬間、彼の肉体はその座標から、音もなく空間転移(消滅)した。
戦場は、完璧にそれぞれの絶対ラインへと分割(スロット化)された。
カイとニュクサーラは東方戦線、あの深淵魔皇ヴァドスの監視塔の座標へ。
クロエとひまりの二頭は北方戦線、セナの防衛拠点へと一瞬でゲートを跨いだ。
ソフィアはアシュフォードの防衛ラインに直撃。ラヴェシアは自領のインフラを固める。
ネロはアイヴィーとエンゾを強制奪還すべく、凍てつく氷結島へと猛然と突進していく。
そして、西の領域の全連合軍が、東と北から侵撃してくるシミズ帝国の八十万の大質量を迎え撃つべく進軍を開始し――ここに、世界大戦の全容が、正真正銘の『破滅のビジョン』となって完璧に始動した。
カイは、東方の国境線にそびえ立つ、ヴァドスの超巨大な監視塔の最上階へと姿を現した。
彼はただ、その屋根の上にだらしなく腰を下ろし、急ぐ様子もなく、遥か彼方の地平線で両軍の魔力が激しく火花を散らし始めるのを、冷ややかに見つめていた。
(……俺の戦いは、まだあそこじゃない。まだ、その時じゃない。一介の兵士どもが何万人死のうが、俺がわざわざこの手を汚してやる実務(理由)なんて、どこにもないからな)
彼は不動の姿勢のまま、ただじっと待った。視界の果てで渦巻く戦火の嵐を眺めながら、彼の脳内データは、かつて失った愛おしい名前の数々を、静かに、そして永続的に反芻し続けていた。――エリス。エレーン。ドラン。フェンリック。俺がその背中に背負い、一生かけても絶対に手放さないと誓った、すべての魂の記憶を。
――そして、それは何の予兆(予兆)もなく、唐突に発生した。
戦場のはるか、遥か彼方の座標において。
空間そのものを強制解体するほどの、凄まじいデタラメな四つの絶対プレッシャー(魔力波動)が、一瞬にして世界に物質化したのだ。
――ヴォラス。――スコルン。――ナオ・シミズ。――ジロー。
(……それと、もう一つ。なんだこれ? 俺の脳内データに存在しない、全く未知の不気味な格付け(データ)が混ざってやがるな)
監視塔の端に直立していたヴァドスが、その身体をメキメキと強張らせ、即座にそのソース(発生源)へと鋭い視線をロックオンした。次の瞬間には、カイのすぐ隣にニュクサーラが姿を現す。彼女の美貌からすべての余裕が完全にデリートされ、その瞳は、滅多に見せることのない本物の化け物(原初)の光へと鋭く研ぎ澄まされていた。
「――お出ましよ、カイ」あいつは低く冷淡に呟いた。
カイは、答えない。
ただ静かにその場に立ち上がると、自らの肉体を天空へと音速を超えて奔らせた。
三頭の絶対的な化け物たちは、天空を一直線に飛行した。眼下に広がる戦場の喧騒など、一瞬にして遠く後方の雑音へとフェードアウトしていく。
彼らがたどり着いたのは、両軍の防衛圏から完全に隔離された、不気味なほどに広大で何もない『完全なる更地(荒野)』。
(……なるほどね。あいつら、あえてこの座標をチェス盤の戦場として指定してきたわけだ。これからここで巻き起こるデタラメな破壊の質量を考えれば、周囲に軍勢がいれば一瞬で巻き添えを食らって全滅するからな)
荒野の向こう側には、五つの人影が直立して彼らを待っていた。
至極冷静に、何の急ぎもせず佇むナオ・シミズ。そのすぐ隣をキープするジロー。
絶対的な警戒のプレッシャーを湛える、真竜ヴォラスとスコルン。
そして――カイのパッシブ能力【時空間知覚】が、その五人目の存在を完璧に捉えた瞬間、脳内アラートが激しく狂った数値を弾き出した。
衣服の奥にあるその佇まいは、外見の若々しさに反し、この世界のどの歴史よりも、遥かに、絶望的なまでに古すぎる絶対的な格付け( tier )を宿していた。
カイ、ニュクサーラ、ヴァドスの三頭が、その対面の座標へと重々しく着地した。
――だが、その五人目の正体を完璧に照合したその刹那。
ニュクサーラの絶対的な冷静さが、一瞬にして木っ端微塵に決壊した。
「……デミグラ(Demigra)」
あいつの声から、隠しきれない驚愕のノイズが漏れ出る。
「……あんた、とっくの昔に世界から完全消滅させられたはずじゃなかったの!?」
「ああ、死んでいたさ」
デミグラと呼ばれたその化け物は、至極冷静に、まるで世間話でも残すかのようにクスクスと笑った。
「……だがね、こちらのナオ・シミズ殿が、私の魂を世界からサルベージして、全く新しく生まれ変わらせて(リブート)くれたのさ。白状すれば、彼女の用意してくれたこの新しい生体インフラ(器)のオーダーメイドの職人技は、お世辞にも文句のつけようがないほど至高の逸品でね」
(……一回完全に殺した過去のバケモノを、自らのインフラで何事もなかったかのように完全復活させて手下に従えてる、か。なるほどね。これまでにあの女について仕入れてきたどんなエラーログよりも、今の一事実のほうが、遥かに、絶望的なまでに危険な怪物であることを証明してやがるな)
カイは、顔に刻まれた【漆黒】の瞳を細めながら、そのデータを冷徹に脳内アーカイブへと格納した。ナオ・シミズが、適切な最高峰の素材さえ揃っていれば、他に一体どれほどの過去の天災どもをこの世界にリロードできるのか、その全容を警戒するために、だ。
二陣営が互いに魔剣の刃を抜き放つよりも、ほんの一瞬早く。
ナオ・シミズのすぐ真横の空間において、漆黒の地獄の業火が爆発的に咲き乱れ、その火炎の奥底から、一人の極めて妖艶な、かつ至極平然としたドレス姿の女がのっそりと姿を現した。
「ずいぶんと遅い応答だったじゃない」
ナオ・シミズが、ごく軽い調子で彼女にジト目を向けた。
「大変申し訳ございません、ナオ様」その女はクスクスと不敵に笑う。
「……貴女の実のお兄様がね、どうにも水面下で色々と余計な段取りを敷いておいでで、その目を盗んでここまで移動してくるのに少し手こずってしまいましたの」
「――ミレラ(Mirella)」
ニュクサーラが、即座にその正体を脳内データから引っ張り出して叫んだ。
「あんた、なんでそんな場所に直立してるわけ!?」
「この世界大戦において、ナオ・シミズを決して完全消滅させないための、ただの防衛実務よ」ミレラと呼ばれたその魔王は、あっさりとそう言い放った。
「……なぜ、あんたほどの魔王が、一介の人間をそこまでして絶対保護(お世話)するのよ?」
「ただの『絶対契約』さ」ミレラが微笑む。
「彼女の、あの実のお兄様との間に、私が魔王の爵位(称号)を手に入れるよりも遥か、遥か昔の時代に完全に締結された、ね」
その言葉を耳にした瞬間、深淵魔皇ヴァドスの表情が、一瞬にして鋭く強張った。
「……カズヒコ・オノ(小野一彦)」
カイは、本気でパチクリと目を叩いた。
「……待て。カズヒコの野郎が、あんたの実の兄貴なのか?」
「ただの異母きょうだい(ステップ・シブリングス)よ」
ナオ・シミズは、至極当然の事実を告げるように、平然と言い放つのだった。




