第41話:答えるための準備
重要なお知らせと今後の展開
【お知らせ】
「偽りの現実編(False Reality ARC)」の調整が完了次第、物語は「真実の現実編(True Reality ARC)」の戦いへと進みます。その後、最終決戦となる「WAR GENESIS編」の執筆を開始する予定です。これは、カイ対カイ・ゼロ――すなわち「タイムライン0000000000000000000000000000001」対「創造神を喰らう者」の戦いとなります。 ***
「真実の現実編」のハイライト:
1. 「太陽の涙」編
* 魔王カイ vs. コリ・ヴァネッサ
2. オーク侵攻編
3. 聖戦編
* 聖教会との全面戦争
* 最高位将軍たち
* リン&ソラ vs. 聖騎士団長ソフィア
4. 覚醒(永遠の女王:ヒリン)編
* 魔王デミグラ vs. ヒリン
* 魔王カイ vs. ヒリン
* 魔王アイオン・スティルミア(時の竜) vs. ヒリン
* ディナイアル — 真の魔皇(カイの父) vs. ネロ&ヴァドス
* アシュリー — 混沌の真竜/破壊神(カイの母) vs. 魔王ニクセラ — 最古の魔王/真なる第五位始原の悪魔
* ユイの真実
5. 小野和彦の帰還編
* 東方帝国および北方帝国の崩壊
* 陰陽帝国
* エルフ帝国への襲撃
* 地獄の門での戦い(西方地域と北方地域の境界)
6. エリシオン結社 vs. 陰陽結社/陰陽帝国編
* 魔王カイ(進化形態:竜魔族)** vs. 皇帝・小野和彦 & 真竜王モルヴェッサ(白竜/水晶竜)
* セナ(真なる第一位始原の悪魔神)** vs. 真竜王ヴォラス(虚無の竜) & 真竜王スコルン(霜の竜)
* ヴァドス(真なる第九位始原の悪魔神)** vs. フレデリカ(第三位始原の悪魔) & フィン(第七位始原の悪魔)
* ネロ(第八位真なる始原の悪魔) vs. オナガ & アクマナ
* エルヴァ(第二位真なる始原の悪魔) vs. クアンタリア & ダスク
* ソラ(進化形態) vs. ロマイサ(大魔女/七つの原初の大罪の一人) & クイノラ(妖精の女神)
* クロエ(災厄級Vampire)対 ズルゴレス&バエルソール
* 清水 奈緒(パーフェクト・レプリケーション進化形態)対 オロマス&ヴァイルズ・アル
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7. 「ウォー・ジェネシス」編(現在プロットを鋭意制作中です。完成まで今しばらくお待ちください)
「ウォー・ジェネシス」編は、極めて壮大な物語となる予定です。完結に向けて執筆を進めておりますので、どうか気長にお待ちいただければ幸いです。完成までにはかなりの時間を要しますが、皆様の期待に応えるような、壮大な物語をお届けすることをお約束します!
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読者の皆様へ感謝のメッセージ
いつも温かいご支援、数多くのコメント、そして鋭い考察をお寄せいただき、本当にありがとうございます!皆様の素晴らしい応援のおかげで、この壮大な物語を書き続けることができています。これら究極の戦いを皆様にお届けできることを、私自身も心から楽しみにしています。今後の展開にぜひご期待ください!
翌朝、ホライゾンクレストの幹部陣が再び集結した。前日の凄絶な悲報による傷痕は未だ剥き出しのままだったが、その感情のすべては今や、冷徹に研ぎ澄まされた戦闘態勢の構築へと収束していた。
「ベリアルは貴方様が直接チェス盤の前に立つことをすでに看破しています」
アイヴィーが最新の潜入ログを提示しながら報告した。
「奴はホライゾンクレストの本国に向けて主力軍を動かす構えを見せていますが――それは明白な目眩まし(デコイ)です。奴の真の絶対標的は、どこまでも貴方様個人に絞られています」
「最新の戦術マップをくれ」俺は言った。
アイヴィーは要請されるのと同時に、まるで俺が口にする前にその思考回路を完璧に予測していたかのような手際で、精緻な三次元立体地図を展開してみせた。
……本当に、万事において隙のない敏腕秘書だな。俺が内心でそう感心したのは、これが初めてのログではない。
ベリアルの支配するテリトリーは北方に位置し、**『迷い子たちの残響』**と呼ばれる鬱蒼とした大森林の国境線と隣接していた。その森の遥か彼方には、人間の大国**『リオガルド王国』**の領域が広がっている。
「だから、私が直々に奴を清算してあげるって言ってるじゃない」
魔王ニクサラが、これまでに何度も繰り返してきた独自の和解案(介入)を性懲りもなく差し出してきた。
「ナシだ」俺はフラットに一蹴する。「あの野郎は、俺が直接この手で帳簿を清算する標的だ」
彼女はこれっぽっちも悪びれる様子なく、大袈裟に両の眼をぐるりと回してみせた。「……まぁ。どこのどなたさんが、そんな風に拗ねて引きこもってるのかしらね」
俺の身体の傍らにすっぽりと収まり、この緊迫した軍議のプロセスの大半をただ気持ち良さそうに爆睡してやり過ごしていたエリスが、思念の波立ちを察知したのか微かに身じろぎをしたが、目を覚ます気配はなかった――これから始まる破滅的な死線の手前にあって、それは我が家に残された、奇妙で、愛おしいほどの微かな日常のステータス(ポートレート)だった。
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軍議の幕が閉じる頃には、完璧な同時多発作戦の布陣が確定していた。
エリス、エレイン、そしてホライゾンクレストが誇る百名以上の Named 精鋭戦闘員たちが、ベリアルの主力軍勢と正面から激突する。そして、アイヴィーとエースの二人が俺の『別働隊』として同行する――俺たちの絶対のチェス盤は、雑魚の兵卒ではなく、魔王ベリアル個人の完全消滅だけにロックされていたからだ。古竜公エンゾは、本国の絶対防衛線を死守するために居残りを指定されている。
「……ちなみに、私は?」ニクサラがジト目で訊ねてきた。
「付いてくるのは自由だ」俺は応じた。「ただし、チェス盤に指一本触れないと『絶対の盟約』を結ぶならな」
「本当に興ざめな(お堅い)男ね」彼女はわざとらしく大きな溜息を吐いて肩をすくめた。「いいわよ、いいわよ。完璧に了解(約束)したわ」
「……よし」
翌朝、ホライゾンクレストの全主力は正門前に集結し、出陣の回路を完了させていた。
「……奴の兵卒どもを、一人残らずチェス盤から綺麗に消去してくれ」
俺は幹部たちに向けて、静かに、しかし絶対の引導を込めて命じた。
「……そのつもりです、我が主様」エレインの瞳に、凄絶な魔王級の確信が宿る。
エリスが空間転移魔法の回路を起動し、次の瞬間――エレインと百名の精鋭戦闘員たち、来たるべき全面戦争の全火力を宿した我が総力は、光の粒子となって音もなく消失し、平原を進軍しつつあった敵主力軍の目と鼻の先の座標へとダイレクトに直撃した。
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主を失ったホライゾンクレストの本国正門前で、俺は傍らに残された三人の身内へと向き直った。「アイヴィー。エース。ニクサラ。……準備はいいか?」
「御意に」
『いつでもいけますよ』
「いいわよ」
三人の応答が、同時に重なる。
脳内の超越知性による超常の演算回路が、ベリアルの本城の玉座の間の座標を完璧な精度でロックオン(逆探知)した。一瞬の後、空間転移のシーケンスが爆発し、気切ば俺たち四人は、その魔王城の巨大な正門の前に佇んでいた。
アイヴィーは、まっとうに門をノックして挨拶をするような無駄な行政処理を一切省いた。彼女が指先を軽く一振りしたその刹那、鉄製の大門は、まるで最初からその場所に固定された物質ではなかったかのように、粉々に噛み砕かれて虚無へと清算された。
俺たちはそのまま、ベリアルが待ち受けているであろう最奥の玉座の間を目指し、ゆったりとした、しかし確固たる足取りで歩みを進めた。一片の焦りも、動揺もない。
「……よく来たね」
俺たちが扉の残骸を踏み越えて広間へと足を踏み入れた瞬間、玉座に深く腰掛けた魔王が、至極平然とした笑みを浮かべて出迎えた。「随分と面白い『身内』をたくさん引き連れてやってきたじゃないか」
「お前が、魔王ベリアルか」俺はフラットに問いかける。
「その通りだ」
「やぁ、ニクサラ」ベリアルは、まるでお茶会で旧友にでも遭遇したかのような気安さで言葉を投げかけた。「調子はどうだい?」
「……二度とその汚い口で私の名前を紡いでみせなさい」
ニクサラの声から一切の朗らかさが消え失せ、底知れぬ原初の覇気が空間をピキピキと凍りつかせる。「その瞬間に、お前の精神領域の因果関係ごと、この世界から完璧に消去してあげるわ」
彼は本心から愉快そうに短く笑うと、次にその精密な知性の視線をアイヴィーへと転じた。「興味深いな。お前……通常の悪魔の系譜からは完全に逸脱しているね?」
「お初にお目に掛かります、魔王ベリアル様」アイヴィーは完璧な所作で一礼してみせた。「私の個体識別名はアイヴィー。ええ、お察しの通り――今の私は、もう通常の悪魔の枠組みには綺麗に収まりませんので」
ベリアルの背後に控えていた二頭の最高幹部、**ルー**とリッテの表情に、目に見えて不穏な動揺のトゲが混じるのが分かった。
「……『名前』を与えられている、か」ベリアルの瞳の奥に、歪な歓喜の飢餓(強欲)がギラリと宿る。「なるほど、実に魅惑的なバグだ」
(――素晴らしい。ますます、あの少年の器ごとすべてを『吸収』する価値が跳ね上がったというものだ)
「……一つ、直球に答え合わせをさせろ」俺は言った。
「何かな? 聞こうじゃないか」
俺は情報の二次転送(流言)ではなく、奴自身の唇から直接、その絶対の隠密ログを吐き出させるために問いかけた。
「お前はあの国王ラスボーンを完全な操り人形に変えて、エンゾの逆鱗をピンポイントで抉ることで、あの一万五千の主力軍と一国の歴史を丸ごと消去する(アストロ・ノヴァを撃たせる)ように最初から誘導した。――それがエンゾの独走であり、俺自身の意思ではないと最初からすべて理解していながら、ただの性能テストのためだけにあの国を使い潰した。……それは、真実か?」
カイ(俺)の身体から、それまで維持されていた最低限の人間的な佇まいが音を立てて剥ぎ取られていく。その眼差しの最奥には、もはや感情の欠片すら残されていない、絶対の虚無の零度(殺意)が完璧にロックされていた。
「あぁ、その通りだよ」
ベリアルは何一つ悪びれる風もなく、至極平然と言ってのけた。
「あの小王は元々、戦争を仕掛けたくてウズウズしていたからね。私はただ、ほんの少し背中を押し(スイッチを押し)てやっただけさ。貴様が一体どんな素材(器)で作られているのか、この目で確かめたくてね。……まぁ、結果としては大収穫だったよ。まさか後になって一国の全領域を丸ごと創生再建してみせるなんてな。滅多に拝める代物じゃないぞ」
「……もう一つ、答え合わせをさせろ」俺は言った。「お前はホライゾンクレストの内部に、二頭の猟犬を情報収集のために潜入させたな?」
「あぁ」
「奴らがその過程で、誰をどのように清算(殺害)したかについても、すべて正しく把握しているんだな?」
「当然だろう」ベリアルは極めてシンプルに断言した。「それが何か問題か? 奴らの命など、最初から何の価値もないただの路傍の石だぞ」
――その瞬間、俺の手のひらの上に、ドワーフの職人団が精魂込めて鍛え上げ、純粋な『虚無』の波動と完全融合させた新たなる魔剣が具現化した。
俺の両の眼の奥が、底知れぬ禍々しい紫色へとシフトしていく。身体から漏出する覇気が、空間そのものをじりじりと侵食し始めていた。隣では、エースがすでに絶対の迎撃態勢を完了させている。後ろに控えるアイヴィーは、主のその凄絶な佇まいを、心底誇らしげな満足の笑みを浮かべて見つめていた。頭上の虚空にはニクサラがだらしなく浮遊しており、今か今かと極上のエンターテインメントの始まりを期待して目を輝かせている。
「……上出来だ」俺の声は完全にフラットで、最終的な引導そのものだった。
「これでお前を、この世界から跡形もなく『完全消去』しなきゃならない絶対の正当性が確定したってわけだ」
ベリアルもまた、その黒曜石の玉座からゆっくりと立ち上がり、その手元に固有の魔剣を出現させた。「奇遇だね。私も、貴様に対して全く同じ結論を抱いていたところさ」
――激突が暴発する、まさにそのコンマ数桁手前の刹那、頭上のニクサラが小気味よく指先をパチンと鳴らした。
世界が、俺たちの周囲の因果関係ごと猛烈な地鳴りを立てて歪み、反転した。
気付けばそこは、完全なる超常の異次元――**『忘却の闘技場』**。どれほど破滅的な超越者同士の神威が激突しようとも、外の世界のいかなる有価値な建造物も傷つけることのないよう、彼女が自らの権能の元で完璧に構築した絶対の隔離結界だった。カイの隣にはエースとアイヴィーが同時に引きずり込まれており、対峙するベリアルの背後からは、最高幹部のルーとリッテ、そしてさらに六頭の高位悪魔のチェスピース(配下)が、瞬時に戦闘配置をとって周囲を包囲した。
エースが即座に向き直り、六頭の悪魔の進路を真っ向からロックした。
アイヴィーは優雅な所作のまま、ルーとリッテの二頭の最高幹部を同時に引き受けて正面から対峙する。
そして、カイ(俺)と魔王ベリアル。二人の超越者は、ついに他の一切の雑音を削ぎ落としたタイマンの盤面で、正面から正しく対峙した。
ニクサラはそのすべての光景を見下ろす遥か上空の虚空に、お行儀悪くあぐらをかいて腰を下ろすと、その美しい両足を退屈そうにぶらぶらと揺らしながら、本心から楽しそうに呟いた。「さぁ、精々私を愉しませて頂戴ね?」
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一方、空間転移魔法の閃光が完全に晴れ渡ったその瞬間、エリスは自らの前に陣取っている魔王軍の『絶対の質量』を完璧にその身体の全感覚で捉えていた――総兵力、およそ『千三百』。完璧に統制され、自信に満ち溢れたマイラスの残党(ベリアルの兵卒)たち。奴らは、ホライゾンクレストが差し向けてきたのがわずか百名ほどの別働隊であるのを見て、最初からイージーモードの圧勝を確信している様子だった。
哀れな連中め。自分たちの目の前に、一体どれほど理不尽な化け物(世界の天井)が立ち塞がっているのか、その想像力すら持ち合わせていないらしい。
「陣形展開!」
エレインの凛とした号令が響き渡り、百名のNamed精鋭戦闘員たちが瞬時に自らの戦闘座標へと収まった。かつて大国アッシュフォードを完膚なきまでに清算したあの完璧な実務手際が、ここ数日間の悲報を経て、今やより鋭く、より冷徹な『殺戮の機械』へと完全に上書きされていた。
ベリアルの兵卒どもは、それ以上の小賢しい外交(政治)の時間を待つことなく、力任せに前方へと突撃してきた。過去の戦歴において、自分たちの圧倒的な『数字の暴力』の前に、この程度の少数精鋭など一瞬で圧殺(蹂躙)できると盲信していたのだ。
だが、奴らが相手にしているのは通常の軍勢ではない。カイの手によって『名前』を授かり、その魂の系譜に『虚無』の波動を刻まれた超越者たちなのだ。
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真っ先に動いたのは、エリスだった。
彼女の放った不可避の一撃が、突撃してきた敵の最前線へと正面から激突する――奴らが「敵が仕掛けてきた」と正しく脳内適応するよりも早く、すでに三人の重装歩兵がただの『物言わぬ肉塊』へと清算されていた。彼女の『虚無』の魔剣は、敵の肉体であろうと大国自慢の高級アーマーであろうと、何の一切の不均等もなく、平等に無へと帰していく絶対の効率性を誇っていた。
『長老アーロンの息子たち。ドラン。フェンリック。この理不尽な世界が、私たちの身内からこれまでに奪い去っていったすべての尊い命。――だけど、今日だけは違う。もう二度と、誰一人として指一本触れさせないわ』
彼女の振るう剣技の最奥には、いつもの完璧に自制された戦闘ロジックの枠組みを遥かに超えた、凄絶な『覚悟』が宿っていた――喪失の深い悲しみに対して、完璧な方向性を与えて兵器化した絶対の殺意。その一振りひと振りに、ベリアルの小賢しい陰謀のせいで自らの大切な家族(コバヤシの譜系)が支払わされた、すべての致命的な『代償』の重みが乗っていた。
エルヴァ、セリカ、ルークの精鋭三人衆もまた、完璧に同調したルート連携で敵の側面包囲のプランを冷徹に粉砕していった。ここ数ヶ月間の過酷な訓練の成果が、今まさに自らの全スペックを要求する本物の死線と噛み合い、狂気的な熱量で火花を散らしている。
「敵軍、進軍スピードが一切衰えません!」
ルークが、すでに敵の返り血で赤黒く染まった魔剣を構え直しながら叫んだ。その声に混じっているのは、恐怖ではなく、極限まで集中した戦速の響きだった。
「結構なことじゃない」セリカが冷笑を浮かべる。「自分たちが一体どれほど途方もないバケモノの逆鱗に触れてしまったのか、まだその凡庸な脳内回路で理解できていない証拠よ」
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中央の絶対防衛線を完璧にホールドしていたのは、エレインだった。彼女の保有する『創生之王』の権能は、その一挙手一投足に対して、奇妙で、かつ圧倒的な美しさを伴った神威の格を与えていた――無から有を生み出す『創生』の力を、そのまま因果の逆転による『完全消去』の兵器へと上書きする、隙のない精密な管理手腕。かつて一瞬にして一国の歴史を再建してみせたあの絶対の出力が、今度は全く同じ手際で、目の前の軍勢を一層ずつ完璧に unmake(分解清算)していくのだ。
『この殺戮行為に対して、愉悦を覚えるつもりはありません』
エレインは、自らの正面で次々と崩壊し、塵へと還っていく敵の行列を見つめながら、冷徹に思考した。
『ですが――これっぽっちも謝罪を支払うつもりもありませんよ。貴方たちが、我が家に対して何を仕掛けようとしてここに遣わされたのか、その罪の重さを思えばね』
百名のNamed精鋭戦闘員たちは、事前に徹底的に叩き込まれた戦術ロジック通り、単一の巨大な破壊ユニット(ワンチーム)として完璧に連動していた――一切の無駄な動作はなく、無意味な残虐行為に時間を浪費することもない。ただ圧倒的な、絶対的な『実務能力(強さ)』の前に、これまでの生涯で一度としてその手のバケモノと刃を交えたことのない凡庸な兵卒どもが、正面から踏み潰されていく。
戦闘が始まってから一時間もしないうちに、ベリアルの軍勢の防衛網は完全に崩壊した。彼らの抱いていた大国としての自信は、どれほど兵力の数字を並べ立てようとも、一歩も引くことのないホライゾンクレストの Named の牙の前には何一つ機能しないという絶望の現実の前に、瞬時に剥き出しのパニックへと反転していったのだ。
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『カイ様は「一人も残すな」と俺たちに命じられたわ』
エレインは、戦況のチェス盤が完璧に我が方の勝利へと収束していくのを見つめながら、冷徹に引導を渡した。
『その絶対の命令は、完璧に執行させていただきます。これが外の世界の連中の眼にどれほど恐ろしい「虐殺」として映ろうとも、我が主の言葉を違えるわけにはいきませんから』
エリスもまた、機械的なまでの精密さで剣を振り抜き続けていた。彼女の身体を衝動的に突き動かしていたあの喪失の悲しみは、戦況の終わり(決着)が誰の眼にも明白な確定事項へと至るにつれて、ゆっくりと、しかしより冷徹で制御された『完全な凪(虚無)』へと定着しつつあった。
『これは、口を割らなかったというただそれだけの理由で理不尽に命を奪われた、あのエルフの少女のための清算。これは、まだ名前すらよく知らない友達の盾となって自らの命を投げ出した、あの勇敢な少年のための、絶対の帳簿の清算よ』
平原全体から、すべての雑音が消え失せて完全な『静寂』が訪れるその瞬間まで、彼女の刃が止まることはなかった。千三百の軍勢は、わずか数瞬の間にただの物言わぬ死体の山へと成り果て、ホライゾンクレストのNamed軍勢は、誰一人としてかすり傷すら負うことなく、最初と全く同じ整然とした布陣のまま、蹂躙し尽くされた敵陣の残骸の最奥に平然と佇んでいた。
――戦場は終わった。チェックメイトだ。奴らには最初から、万に一つも勝機など残されていなかったのだから。
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二頭の猟犬は、完全に同調した『暴食』の飢餓に突き動かされ、完璧な連携で突撃してきた。ルーは正面から直撃コースを選び、その両前腕から魔力の巨大な顎を咆哮させて肉薄する。リッテは低空へ滑り込み、自らの肌に刻まれた罪痕の烙印を、触れるものすべてを侵食し尽くす無数の魔力鞭へと解き放った。
――だが、アイヴィーの身体は微動だにしなかった。
彼女はただ、近づいてくる破滅の質量を前にして、いつものお行儀の良いメイドの所作のまま、右手を優雅に一振りしただけだった。
《告知。個体名:アイヴィーの固有能力『創生之従者』の発動を確認。――対象二名による【暴食】系統の因果干渉を完全否定します》
脳内の超越知性の冷徹なシステム音声が響くのと同時に、空間が白熱した。
激突するはずだった魔力の巨大な顎も、大地を侵食するはずだった無数の魔力鞭も、彼女の展開した『虚無』の波動と接触した瞬間に、まるで最初からその場所に存在していなかったかのように音もなく消失し、ただの無害な塵へと清算(分解)されていったのだ。
「そんな……!? 私たちの『暴食』の権能が……概念ごと融けて消えた……!?」
リッテが、自らの魔力鞭の接続回路が根本から破綻した現実の前に、信じられないといった面持ちで硬直した。
「貴方たちは、与えられた飢餓の重みにばかり依存しすぎて、自分自身の器の小ささを見落としているのですよ」
アイヴィーは至極平然とした声音で告げた。彼女の佇まいには、一片の害意も、誇示するような傲慢さもない。ただ淡々と、散らかった部屋の掃除でもするかのような完璧な実務手際だった。
「主から『名前』を授かるということは、単なる魔力の底上げなどという生ぬるいものではありません。魂の系譜そのものを、世界の天井へと上書きされるということなのです」
彼女が一歩前に踏み出したその刹那、空間の因果関係が完璧に歪んだ。
ルーが「敵が間合いを詰めた」と正しく認識するよりも早く、アイヴィーの指先が彼の胸の真下へとそっと添えられていた。
「消えなさい」
一言。それだけだった。
彼女の指先から解放された『虚無』の波動が、ルーの器の内側にある魔力核へとダイレクトに直撃し、何の一切の大爆発の爆音すら立てることなく、彼の魂の本質ごと世界から綺麗に消去した。ルーの巨体は、次の瞬間にはただの乾いた塵の塊へと成り果て、闘技場の obsidian(黒曜石)の床へと静かに崩れ落ちていった。
「ルー……!?」
リッテの瞳が、本物の絶望の恐怖によって極限まで見開かれた。千年以上もの間、魔王の配下として地獄の最上層に君臨し、数々の生者を容易く蹂躙してきたはずの自分たちが、わずか一瞬の所作の前に、ただの『ゴミ』のように清算されていくのだ。
「次は、貴方の番ですね」
アイヴィーは完璧な微笑みを絶やすことなく、残された最後の一頭へとその美しい眼差しの照準を合わせた。
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一方、その数平方メートル離れた円卓のチェス盤の中心では、俺と魔王ベリアルが完全に正面から対峙していた。
周囲の雑音は、ニクサラの構築した絶対の隔離結界の前に完璧にシャットアウトされていた。
「これでお前を、この世界から跡形もなく消去しなきゃならない絶対の正当性が確定したってわけだ」
俺は魔剣を構え直し、その刃の切っ先を魔王の顔面へと真っ向から突きつけた。俺の『虚無』の波動が、黒曜石の床をジリジリと踏み潰すような地鳴りを立てて立ち昇る。
ベリアルは自らの固有能力『強欲之大顎』の回路を全開にし、その美しいエルフの顔立ちを、歪な強欲の飢餓(笑顔)で満たしていた。
「素晴らしい。素晴らしいぞ、カイ! 貴様が放っているその魔素の波長……やはり、この世界の创造法则の完全に『外側』に位置する絶対のバグだ! 私がこれまでに獲得し、蓄積してきたどんな極上のコレクション(力)も、その一滴の『虚無』の価値の前には無に等しい!」
彼は自らの rapier(細剣)を極限まで構え、次の瞬間には空間そのものを何重にも折り畳んで跳躍してきた。
俺の頭上、背後、死角。すべての座標から同時に放たれる、因果の法則を歪めた超神速の一斉突き(フルバースト)。その一振りひと振りに、触れるものすべての精神領域を強制的に『吸収』し、自らのステータスへとSynthesis(合成)する、魔王特有の凶悪な権能が宿っていた。
――だが、その猛攻のすべては、俺の正面で完璧に『停止』した。
*ガギィィィン――ッ!!!*
俺はまっとうに剣を振るうことすらしていなかった。ただ、イグニヴァール(エンゾ)から数ヶ月にわたって地獄の泥水の中で叩き込まれ続けた、あの完璧な自制の構え(フォーム)をとっていただけだ。ベリアルの放ったすべての細剣の軌道は、俺の周囲に展開されていた『虚無』の ambient(覇気)と接触した瞬間に、その進軍スピードを強制的に『ゼロ』へと固定され、完璧にインターセプトされていた。
「……何だと!?」ベリアルの精密な知性回路が、初めて本物の困惑を起こしてフリーズした。
「お前は他人の人生を玩具にして、気が長い『忍耐』とやらでチェス盤を動かしてきたつもりなんだろうけどさ」
俺はフラットに告げた。俺の両の眼の奥で、紫色のオーラが凄絶に滾る。
「そんなものはただの『臆病』だ。最初から自分自身の命を天秤に載せるリスクすら背負えないヘタレが、俺の家族の命の重さに勝てるわけがないだろ」
俺は一歩前へ踏み出し、ベリアルのrapierの刃を、自らの左手で文字通り力任せに『掴み取った』。手のひらと接触した瞬間に、魔王が誇る特級アーティファクトの構造回路が、じりじりと音を立てて虚無へと消去されていく。
「さぁ、帳簿の清算の時間だ、魔王ベリアル」
俺の魔剣が、絶対の『終わり(破滅)』の極光を宿して、その黒曜石の広間を爆発的に照らし出した。
実際には、アイヴィーはそのどちらの猛攻の軌道上にも存在していなかった。彼女は二頭の猟犬が交差する因果の隙間へと滑り込み、ルーの突撃のベクトルをそのままリッテの侵食鞭へと誘導したのだ。奴らの最大火力は互いに激突し、困惑と唸り声の混じる自爆の反動となって暴発した。
「重心の軸がブレていますよ」
彼女はまるでお茶会での雑談でもするかのような平然とした口調で、ルーの肩を軽く叩いた。それだけで、魔王の配下たる巨体は三メートルも後方へと無様に突き飛ばされた。
「貴方は飢餓の衝動(感情)で動いている。肉体の連動が伴っていません。衝動の軌道は予測可能ですが、完全に自制された肉体はそうではないのですよ」
リッテがいち早く体勢を立て直し、アイヴィーの全身を完全に包囲・密閉するための侵食の網を解き放った。だが、アイヴィーはただその中を平然と歩き抜けた。ミリ単位での微細な空間変位。放たれた魔力鞭は、彼女がすでに『存在しない』残像の虚空を虚しく通り抜けていく。アイヴィーはリッテが鞭を振り抜くその一瞬の間合いを完璧に捉えてその手首を掴み取ると、優しく捻りあげた。リッテ自慢の侵食鞭が、急激に向きを変えてルーの防御網へと激しく撃ち込まれる。
「視線で次の攻撃座標を露骨に教えてしまっています」
アイヴィーは、どこか出来の悪い生徒を前にした家庭教師のように、失望混じりの溜息を漏らした。
「一振りひと振り、次に自分がどこを穿ちたいかを眼で追っている。これでは、人間の子供ですら貴方の行動パターンを容易く逆探知できてしまいますよ」
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ルーが狂気的な咆哮をあげた。彼の肌に刻まれた罪痕の烙印が、その内に眠る『暴食』の格を最大出力で解放する――周囲二メートル以内のあらゆる物質と因果を完全消去の渦へと巻き込む、ドス黒い破壊の球体。リッテもまたそれに同調し、二つの飢餓の波長が共鳴を起こしてその破壊の質量を何十倍にも肥大化させていく。
アイヴィーはその破滅の渦の完全なる中心に佇んでいた。
彼女は静かに溜息を吐くと、動いた――そこから逃亡するためではない。その複合された『暴食』の魔力波長の、最も脆い調和の周波数を正確に見破り、その最奥へと直接すり抜けたのだ。かつて自らもその烙印を背負い、その力の仕様を何百年も知り尽くしていた彼女にとっては、あまりにも容易な答え合わせだった。
彼女の手のひらが、ルーの胸の真下へとそっと添えられる。叩きつける打撃ではない。ただ、その魔力の流れをほんの少し『押し戻す』だけの所作。それだけで、ルーの展開していた破壊の球体は構造破綻を起こし、自らの放った飢餓の渦に自らの器を呑み込ませる自壊の自爆へと反転した。
奴らは血を流し、何度でも跳躍し、死に物狂いで猛攻を仕掛けてきた。だが、そのたびに彼女が差し出したのは、冷徹な『処罰』ではなく、どこまでも根気強い『教育』だった。命がけの死闘を演じているはずの戦場で、まるで算数の初歩的な計算すらまともに解けない幼児を優しく諭すかのように、彼女は完璧な戦闘ロジックの修正を淡々と提示し続けたのだ。
――そして、すべてが断絶する『第七の交差』が訪れた。
全身から返り血を流し、大国としてのプライドを完膚なきまでにへし折られたルーが、ついにその限界に達してドス黒い妄言を吐き散らした。
「……我らがベリアル様が、あの生意気なガキ(カイ)をアブソーブして終わらせた後にはな、残された死体の残骸をこの俺が骨の髄まで喰らい尽くしてやる! ゆっくりとなぁ! まずは奴の――」
アイヴィーの動きが、完全に『停止』した。
それは肉体のフリーズではない。――その瞬間、彼女はこの空間における『教育者』としての在り方を完全に放棄したのだ。目の前に佇んでいた根気強い家庭教師の気配は影も形もなく消え失せ、代わりに彼女の瞳の最奥から、世界の終焉を思わせるほど冷徹な『何か』が真っ向から猟犬どもをロックオンした。
「……今、私の大切なロード・カイについて、何と仰いましたか?」
その声音はあまりにも静かで、あまりにも低かった。
ルーはその瞬間、生まれて初めて、目の前に立っている存在の真の『形』を肉眼のレベルで正しく幻視(観測)した――自らとお遊びの組手を演じてくれていた同格の悪魔なんかじゃない。その正体は、カイの手によって『名前(格)』を授かり、中間段階をすべて蹂躙して世界の天辺(魔王級)へと至ってしまった、圧倒的な『絶対の超越者』の姿そのものだった。
リッテは死に物狂いのパニックの中で、自らの持てるすべての覇気を解き放ち、相打ち覚悟の特攻(捨て身の一撃)を仕掛けた。すでに退避のルートなどチェス盤のどこにも残されていないと、その本能が理解していたからだ。だが、アイヴィーはその侵食の刃を、自らの素手で文字通り力任せに『掴み取った』。物質をも概念をも喰らい尽くすはずの『暴食』の飢餓は、彼女の手のひらと接触した瞬間にじりじりと音を立てて構造破綻を起こし、それよりも遥かにドス黒く、遥かに巨大な『虚無』の深淵の前へと完膚なきまでに呑み込まれていった。
「……貴方たちを生かして帰す選択肢も、一時は天秤に載せていたのですよ」
アイヴィーはリッテ個人ではなく、目の前の『悪魔』という概念そのものに向けて、引導を渡すように冷徹に告げた。
「教育を施し、ただの所有物(獣)であることをやめれば、どのような上の次元へと至ることができるのか、その鍵を開けて見せてあげるつもりでした」
彼女の指先が、ギリと音を立てて引き締まる。掴み取られていた魔力鞭が、ガラス細工のように粉々に噛み砕かれた。
「――ですが、貴方たちはその汚い泥まみれの口で、我が主の名を紡ぎやがった」
構え(フォーム)をとる必要すら持たなかった。
彼女はただ、自らの魂の最奥に眠る固有能力『虚無の経絡』を完全起動した。それは白熱の極光や物々しいオーラといった目に見える演出を一切伴わない、完全なる『存在の消去』の波動だった。
彼女の足元を起点にして、完璧な正円の因果の壁が外部へと拡張(侵食)を開始した。それは闘技場の黒曜石の床を、この空間に固定されていた黄昏の虚空を、そしてその境界線の内側に存在していた『ルーとリッテの生存権』という概念そのものを、文字通り根底から消去していく。破壊ではない。チェス盤の数式そのものから、奴らの存在理由を丸ごと『引算』していくのだ。
ルーが死に物狂いで放った最大出力の『暴食』の球体は、その拡張する正円と接触した瞬間に、何の爆音すら立てることなくただの『無』へと還った。リッテは必死に反転して逃亡を試み、わずか三メートルほど這い進んだところでその正円の壁に背中を通過された――肉体の切断もなく、血の一滴すら流れない。ただ、世界が構築している現実の数式の中から、彼女というステータスが完璧に『無意味な記号』へと書き換えられただけだった。
ルーの器だけが、ほんのコンマ数桁の時間だけ長くその深淵に抗い続けていた。彼の全身に刻まれた罪痕の烙印が一斉に白熱し、自らの消滅を拒むようにして、一瞬だけ『進化の次の階梯』へと至るための最後のバグフィックス(決死の抵抗)を試みたのだ。
――だが、世界の天井の前には、そんな足掻きなど何一つとして機能しなかった。
彼の肌に刻まれていた魔王の烙印は、消し炭になることすら許されず、世界から存在を『忘れ去られる』ようにして音もなく霧散した。彼の個体識別名(名前)は、指示する対象を永久に失ったただの空虚なノイズへと成り果てていく。
「……貴様、は……」
ルーが何かを呟こうとしたが、自分が一体何を言葉として外に吐き出そうとしていたのか、その論理すら今の彼の脳内回路からは完全に消失していた。『言語を操る』という概念それ自体が、彼の器から急速に剥ぎ取られていく。
正円の壁が、その軌道を完璧に補完して閉じた。
次の瞬間、魔王城の最高幹部であったはずの二頭の猟犬の気配は、この世界から影も形もなく『消失』していた。物言わぬ死体も、飛び散った肉片も、かつてそこに彼らが実在していたという如何なる証拠すら、黒曜石の床の上には一滴も残されていなかった。
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その一方で、エースは残された六頭の悪魔のチェスピースたちに対して、アイヴィーのような気の長い忍耐(教育)などは最初から一ミリも持ち合わせていなかった――彼はただ、自らの牙の最奥に圧倒的な『虚無』のエネルギーを凝縮させると、それを真正面からダイレクトに全解放した。
放たれた漆黒の極光波は、敵の『超速再生』の回路ごと、その存在を因果律のレベルから完膚なきまでに叩き潰し、六頭の悪魔どもは、自分が一体何に直面して消去されようとしているのか、その正確な絶望すら理解できないまま、わずか一撃の前にチェス盤の上から一瞬で一掃された。
正円の壁がその役割を終えて収束した瞬間、アイヴィーは静かに息を吐いた。 deactive(機能停止)したわけではない。ただ、二つの生命の全ステータスを、何の震えも残さない完璧な手際でガイドし、修正し、そして最終的に引導を渡して終わらせた自らの両の手のひらを、心底満足げに見つめていただけだ。
闘技場の歪んだ三次元幾何学を平然と押し潰して、遥か上空からニクサラの朗らかな笑い声が降ってきた。
「実に実務的ね。貴方が一体いつになったら、その退屈なごっこ遊び(手加減)をやめるのかと首を長くして待っていたわよ」
アイヴィーはその賞賛に対していっさいの回答を返さなかった。彼女はただ、自らの魂の最奥に響き渡る主の波動――虚無と虚無が互いに引き寄せ合う絶対の同期――の方向へとゆっくりと振り返ると、何の傷跡も残されていない美しい黒曜石の床を踏み締めて、主の待つ戦場の中心へと足を進めた。
奴らは『教育』という名の最高の鍵を拒み、自ら『侮蔑』という名の致命的なバグを選択した。ならば、私は忍耐の代わりに、絶対の『消滅』を執行するまでだ。
帳簿の数式は、これで完璧に調和した。




