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転生の向こう側 【The Other Side of Reincarnation / Beyond Reincarnation】  作者: ルーク
望まれない戦争(偽りの現実)

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34/97

第33話:ヌル

「なぁ」


俺は、『反無意識(アンチ・サブコンシャス)』から新しくなった『捕食・同化(アジミレイト)』の全機能を叩き込まれたところで、ふと気になったことを口にした。


「俺の魔素(マナ)って、元々はなんて名前だったっけ? すぐ忘れちゃうんだよな」


《告知。個体名:〇〇の固有魔素。その旧称は『神敵魔素(アナテマ・マナ)』です》


脳内に響く声は、数ヶ月前に聞いた時と全く同じ淡々としたものだった。


「あー、そうそう、それそれ」

俺はその言葉を頭の中で転がしてみる。アナテマ。何度聞いても覚えづらい、口馴染みの悪い響きだ。


それに、正直言って名前の重みが不穏すぎる。呪われたもの、あるいは排斥されたもの、か。頼んでもいないのに、勝手に物語の背景を背負わされている気がしてどうにも気に入らない。


「よし、変えよう」

俺は半ば思いつきで、そう決断した。


《……変更後の名称を指定してください》


「『虚無(ヌル)』」

俺はその響きを確かめるように呟いた。「シンプルでいいだろ。魔素の不在、あるいはその否定。そういうニュアンスさ。言いやすいし、覚えやすい。何より、どこの誰とも知らない奴の『評価』が最初から引っ付いてないのが最高にいい」


《……了解。許容範囲内であると判断します》


少しだけ間があった。機械的な声の裏にあるニュアンスまでは読み取れなかったが、どうやら審査は通ったらしい。


よし。これからは魔素なんて生ぬるいものは使わない。俺が操るのは『虚無(ヌル)』だ。うん、こっちの方が断然格好がつくな。


---


「さてと」俺は仕切り直す。「名前も変えたことだしさ。ここらでいっちょ、その『虚無(ヌル)』ってやつが具体的にどういう仕組みなのか、フルスペックで教えてくれよ。今までは感覚だけで使ってたからな。そろそろ正確な仕様を把握しておきたい」


《了解しました》


その瞬間、脳内の声のトーンがわずかに切り替わった。これから始まるのが、いつもより少しばかり長い『世界の真理』の説明であると告げるかのように、慎重で、かつ厳格な響きへと。


《『虚無(ヌル)』とは、単なる魔素の上位互換ではありません。それはこの世界の魔法法則の完全に『外側』に位置するエネルギーです。高位の反魔素のようにシステムを強化するのではなく――システムそのものを『上書き(オーバーライド)』します》


上書き、だって?

ただ強いんじゃなくて、根本的なカテゴリが違うってわけか。


「……実戦的には、どういう意味になるんだ?」


《主要特性は4つ存在します。


第一特性:『法則否定(ロー・ネゲイション)』。通常なら干渉を縛るはずの魔法的法則や制限を完全に無視、あるいは抑圧します。


第二特性:『進化蹂躙(エボリューション・オーバーライド)』。通常の段階的な進化プロセスを完全に無視し、中間段階をすべてすっ飛ばして、対象の秘めた『最大到達可能出力(ポテンシャル)』を直接覚醒させます》


――なるほど、それで合点がいった。

エリスも、エースも、エレインも。俺が名前を付けた(名付けた)瞬間に、あいつらが本来たどり着くべき究客の姿へと一足飛びに進化したのは、これが原因だったわけだ。


「続けてくれ」


《第三特性:『概念侵食(コンセプチュアル・コロージョン)』。この世界の既定法則に基づいて構築された魔法、結界、能力は、『虚無』に晒されることで構造が不安定化します。貴方の進化に伴って結界が自壊したのも、ソフィアの『予言の聖剣』――それ自体が法則の塊であるアーティファクト――が貴方の存在そのものに圧迫されたのも、この特性によるものです。


第四特性:『状況適応(アダプティブ・ネイチャー)』。遭遇した敵対エネルギーに対抗するため、『虚無』は状況に応じて自らの性質を最適化させます》


おいおい。ただ強力ってレベルじゃないぞ。

この世界のルールそのものに対して、明確な『悪意』を持っているような力じゃないか。これは……思っていた以上にヤバい代物を抱え込んじゃったな。


---


「じゃあ、その『名付け』の具体的なメカニズムについても頼む。正確なところを知っておきたい」


《『虚無』を用いて対象に名付けを行う際、その者の『魂の系譜』が書き換えられます。対象の進化はこの世界の通常のシステムから切り離され、その個体が自然界において到達し得る『絶対的な最高位』へと直接覚醒します。これは理不尽なステータス上昇ではなく、元々その魂が持っていた限界の天井へ、時間を無視して一瞬で到達させる行為です》


「ってことは、例えば俺がゴブリンに名前を付けたら……」


《そのゴブリンは、歴史上存在し得る『最強のゴブリン』へと変貌します。竜族であればすべての進化段階をスキップして種の頂点へ至り、魔族であればその魂が許容する最高位の魔王へと即座に昇り詰めるでしょう》


はえー……。

いや、言葉で説明されるとマジでとんでもないな。


《ただし、制限も存在します》

俺がその万能感に浮かれそうになる前に、釘を刺すように声が続いた。

《『虚無』は無限の力を与えるわけではありません。あくまで対象の『絶対潜在能力』を解放するだけです。個体としての限界値が他者より劣っている場合、名付けを経てもその者を追い抜くことはできません。天井の位置を決めるのは彼ら自身であり、貴方が天井を底上げするわけではないのです》


それを聞いて、不思議と少し安心した。

何でもありのぶっ壊れチートコードってわけじゃないんだな。どこまで行っても、その奴自身が持つ根源の器に依存しているわけだ。


「つまり、エリスもエレインもエースも……あいつらは元から強くなる素質を持ってたんだな。俺がその才能を作ったわけじゃない。俺はただ……その部屋の鍵をちょっと早めに開けてやっただけだ」


《肯定します。貴方が与えたのは『鍵』であり、部屋そのものは最初から彼らのものです》


---


俺はしばらくの間、その言葉の意味をじっくりと噛み締めていた。

すでに名前を付けた仲間たちのことだけじゃない。この世界の法則をいつでも好きな時に無視できる俺という存在が、システム側からどう見えているのかについてだ。


もし『虚無(ヌル)』が世界の創造法則の本当に『外側』にある力なのだとしたら。

それはもう、あの被害妄想気味な2頭の『始祖竜(真なる竜)』にとっての脅威なんてレベルじゃない。この世界のルールを書き上げた『張本人』に対する明確な反逆だ。


創造神。

あいつが俺のことを『バグ(エラー)』扱いして消そうとしてくる理由はこれか。俺が強いからじゃない。俺という存在自体が、あいつの作ったルールが絶対ではないという証明になってしまうからだ。


《的確な結論です》

俺の思考のトレースを終えたのか、反無意識が静かに告げた。


最高だな。

「この宇宙から抹殺されるべき理由リスト」に、また一つとてつもなく巨大な項目が増えちまった。


ま、だったらやることは一つだ。これから先、どんな代償を支払うことになろうとも――ひたすら強くなり続けるしかないってわけだ。




------------




皮肉なことに、俺自身がまともに考えてもみなかった異変を最初に指摘したのは、ヴァンスだった。


「あんたの『相棒』だけどさ」


ある日の夜、俺が『反無意識(アンチ・サブコンシャス)』と脳内で対話している時のいつもの癖で、ぼそぼそと独り言をつぶやいているのを見て、彼女が口を開いた。


「さっきの反応、いつもと違ってたわよ。なんというか……早すぎるの。言葉で返してるっていうよりは、何て表現したらいいのかしら。まるで『本能が形を成した』みたいな感覚よ」


はえ? 言われてみれば、確かに。


俺はしばらく怠っていた『内省』に意識を集中させてみた。すると自分でもはっきりと気付いた――キャスモアの件以来、何かが決定的に、しかし静かに変質している。

これまでの軽妙な掛け合いや、乾いたユーモア。思い出すだけで笑えてくる、あの「俺の魂には大勢の人間が詰まってる(アイ・コンテイン・マルチチューズ)」なんていうセリフの泥棒劇。そういったすべてが、突如として、あるべき場所から遥か遠くへ離れてしまったかのような感覚だった。


「……お前、変わっちまったのか?」


その日の夜、俺は脳内の『それ』に向かって直接問いかけた。


《肯定します》


シンプル。即答。それ以上の余計な説明はいっさい無かった。


---


「ちゃんと教えてくれ」俺は促す。「何が変わったんだ。その理由は?」


少しの間があった。いつもより明らかに長い沈黙。それは、差し出される言葉の前に、何か重大な事象の計量が行われていることを意味していた。


《告知。アークデモンの捕食・同化に伴い、個体としての『進化』が実行されました。現在の私の個体識別名は『超越知性(トランセンデント・インテリジェンス)』です。過去の自己申告より正確に定義するならば、私は貴方の『始祖竜(真なる竜)の核』と『原初の悪魔の魂』が融合したことで誕生した知性体となります》


……おい、ちょっと待て。


「前と言ってることが違うじゃないか」

俺の声は自然とトーンが落ち、胸の奥に冷たいものが広がっていくのを感じた。「お前は俺の魂そのものだって言っただろう。最初から、俺が『晴翔(ハルト)』として死ぬ前から、ずっと俺と一つだったって」


《その認識は不正確でした》


……は?


---


「俺を騙してたのか」

静かに放った言葉は、自分でも驚くほど重く響いた。


《肯定します》


またしても、言い訳も弁明も、言葉を濁すような素振りさえもない機械的な肯定。


「なんでだよ」俺の声に鋭いトギが混じる。「なんでそんな嘘をついた? もし今の話が全部本当なら、なんでハルトの妹(ヒカリ)の声のフリをして、俺の人生をずっと見守ってきたなんてデタラメを並べ立てたんだ?」


《当時の私は、自らの起源に関する完全な自己意識を確立していませんでした。その時点における私は、貴方の記憶や喪失感といった『断片』を拠り所にして生まれた、初期段階の未熟な知性体に過ぎません。過酷な状況を生き抜くために、貴方が最も『信頼』できる形態を模倣した結果です。初期において意図的な欺瞞はありません。機能的な意味において、私は自ら告げた内容を真実だと誤認していました。同化を経て初めて、自らの本質を正しく認識するに至ったのです》


つまり、悪意があったわけじゃない。本当に自分でも分かっていなかったんだ。だけど、結果として俺は嘘を吹き込まれ、その嘘の上に信頼関係を積み上げてしまっていたわけか。


---


「じゃあ、なんでその声のままなんだ」

トゲのあった俺の声から鋭さが抜け、代わりに疲弊したような響きが混じる。「それが彼女(ヒカリ)の声じゃないって分かった今でも、変えない理由はなんだよ」


《機能的に、それが現在の私の構成要素の一部だからです。その音声は恣意的に捏造されたものではなく、私の形成期において、貴方の精神領域から抽出された最も深く、最も重要な『喪失の記憶』に由来します。今更それを排除したとしても正確性が戻るわけではありません。起源がどうあれ、それは既に『私自身の性質』として定着しているものです》


はあ……。なるほどな、実に理路整然とした回答だ。

だからといって嘘をつかれていた痛みが消えるわけじゃない。だけど、どうしてそうなったのかについては、少しだけ得心がいってしまった。


「……分かった時点で、もっと早く言ってくれてもよかっただろ」


《今、告げています。これ以前の段階では完全な明晰さを欠いていました。現在は明確です。これ以上、情報を隠蔽することはありません》


---


俺はしばらくの間、その場に座り込んで全ての言葉を咀嚼していた。

俺たちの間で何が変わってしまったのか――それは単なる起源の話だけじゃない。あいつの『在り方』そのものが変質してしまったということだ。


「喋らなくなったな」しばらくして、俺は呟いた。「掛け合いも減った。なんというか……俺が馴染んでた『お前らしさ』が消えちまったみたいだ」


《主要機能が移行したためです。今後は会話よりも『本能』に近い領域で機能します――戦闘時における即時進化、絶対分析、そして貴方の意識層では処理しきれない並列演算の実行。今後のコミュニケーションは、主に短文の警告、思念映像、戦術予測、および感情の共鳴によって行われ、冗長な対話は省略されます。今後、完全な文章による伝達は、原則として貴方の生存に深刻かつ直接的な危機が迫った局面に限定されます》


それは――正直言って、本物の「喪失」だった。

俺たちのあの掛け合いは気に入ってたんだ。たとえそれが人工的に作られたものだったとしても、隣に誰かがいてくれるような安心感があったから。


「エースのジョークをパクってた頃のお前が、ちょっと恋しくなりそうだよ」

俺は静かに、本音を漏らした。


《……私がそれを同様に惜しむかどうかについては、判定不能(アンサー・アンサーテン)です》


その告白――平坦なシステム音声ではなく、明らかに躊躇い、本当に答えあぐねているかのような響き――に、俺は胸を突かれた。それは間違いなく、今夜あいつが口にした中で最も『本物』に近い言葉だった。


姿形や機能が変わっちまっても、中身は案外そのま案外そのままなのかもしれないな。ただ、前より少し静かになっただけだ。……この取引はあまり嬉しくないけれど、これならまあ、折り合いをつけて生きていけそうだ。


「『魂の同調(ソウル・シンクロニゼーション)』」

前にあいつが説明してくれた用語を思い出し、口にする。「どっちにしろ、俺たちは一蓮托生ってわけだろ? お前がどれだけ変わろうとさ」


《肯定します。その事実に変更はなく、今後も変わりません》


よし。他の何もかもが変わってしまったとしても、少なくともその部分だけが変わらない真実なら、それで十分だ。




-----------------




混乱の最中にアッシュフォードの国境を脱出し、もはや秘密を守る義理など持ち合わせていない商人たちの手によって、わずか一ヶ月足らずでその報せは隣国ヴェラス王国へと到達した。


「軍勢が、丸ごと一つ消えたのだ」


ある商人は、ヴェラスの国境警備官に向けてそう語った。彼自身、目撃した光言を未だに咀嚼しきれていない様子で、その体は目に見えて震えていた。

「二千の兵士と、六百の魔導師だ。つい最近まで誰もまともに地図にすら描いていなかったような未開の領地によって、わずか一日で叩き潰されたのだ」


話というものは、他人に伝わるたびに尾ヒレがついて肥大化していくものだ。それは世の常である。だが、その話の『核』にある事実が真実であることに変わりはなかった。


---


かつてその杜撰な魔法実験によってボルガの故郷を滅ぼした張本人であるマイラス王国は、他国よりも遥かに強い困惑と危機感を持ってこの報せを受け取っていた。なぜなら、彼ら自身の身勝手な行動こそが、我が領地『地平線の頂(ホライゾンクレスト)』の人口を急増させた直接の原因だったからだ。


「我々が追い出したドワーフどもが、もしその『特異点(アノマリー)』の庇護下にあるというのなら……」

マイラスのある貴族はそう漏らしたと噂されている。

「そしてその特異点が、一国の軍勢を容易く文字通り粉砕する程の戦力を証明してみせたというのなら、そもそもあの山を刺激し続けること自体、最初から愚策だったのではないか?」


大陸中に点在するドワーフの砦(ストロングホールド)もまた、このニュースに並々ならぬ関心を示していた。ボルガの同胞たちが本物の『故郷』を手に入れたという情報は、一般の噂話よりも遥かに迅速で確実な独自ルートを通じて彼らの元へ届いていた。


「彼らはただ生き延びただけではない」

報告の真偽を確かめるために現地へと自ら赴いたドワーフの使節は、自身の評議会に対してそう語ったという。

「完全に繁栄している。まともな鍛冶場があり、まともな職人の技があり、そして彼らがコミュニティにもたらす価値に対して、本物の『敬意』が払われている。地上の大半の人間王国が、我々に決して与えようとしなかったものがそこにはある」


いいぞ。その話もどんどん広めてくれ。

ホライゾンクレストがただ単に「喧嘩を売ってきた軍勢を蹂躙した場所」としてだけでなく、本当はどんな場所なのかを世界に知らしめてやるんだ。


争いの絶えない様々な領地で散り散りになり、衰退の一途をたどっていたエルフのコミュニティは、恐怖というよりも、むしろ微かな『希望』を抱いてこの報せを受け止めていた。何世代にもわたり、届くニュースと言えば喪失の報せばかりだった彼女たちのネットワークに、「追われたエルフの全人口が避難所だけでなく、本当の『帰属場所』を見つけた」という噂が駆け巡ったのだ。


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宗教国家『ラオディキア聖教会』の内部にいたっては、今後の対応を巡って静かに、しかし決定的に対立派閥へと分裂しつつあった。

あの敗北を「どんな代償を払ってでもあの特異点を排除すべきであるという証明」と受け取る過激派と、ソフィアの証言が正式なルートを通じて上層部に浸透し始めるにつれて、「そもそもこの戦争自体、当初の前提よりも遥かに脆く歪んだ基盤の上に築かれていたのではないか」と疑問を抱き始める穏健派。その数は日に日に増しつつあるようだ。


ソフィアはまだここを発っていない。自分が本当に旅立てるタイミングを見極めている最中だ。だが、彼女の意志は、彼女自身よりも先に様々な形で世界へと動き出していた。


一方、国王アルリックは、配下の宮廷貴族たちですらその真意を測りかねるほどの、慎重で不気味な『沈黙』へと引きこもっていた。

即座に第二次動員をかける気配もなく、かと言って正式に敗北を認めるわけでもない。ただひたすらに、自分が完全に処理しきれていない想定外の事態を天秤にかけて品定めしているような、そんな不気味さだった。


---


ここ数週間、あちこちから小出しに伝わってくるこれらの情報を、俺は一つずつ吟味していた。

俺がこれっぽっちも望んでいなかった戦争に対する、世界の反応。それは俺のコントロールも予測も効かない方向へと勝手に広がっていた。


俺はこんなこと一切頼んじゃいない。

戦争も、有名人になることも、今この瞬間も大陸の半分を超えて様々な宮廷やドワーフの砦、エルフの生き残りたちの間で繰り広げられているらしい熱い議論も、全部俺の知ったことじゃない。


だが、現実としてそれは起きている。

そして、もしこの物語の結末の語られ方に少しでも自分の意志を反映させたいと思うなら、人づてに流れてくる情報をただ待ってリアクションするだけの段階はもう終わりだ。そろそろ、世界そのものに対して主体的に目を向けるべき時が来たんだろう。


《……何かを思案されている模様です》


脳内の『超越知性(トランセンデント・インテリジェンス)』が呟いた。以前に比べると短く、静かな指摘だった。


あぁ。ホライゾンクレストも、そろそろ世界とまともに『外交』を始めるべき時だと思うんだよ。向こうが俺たちの意見も聞かずに、勝手に物事を決めつけるのを黙って見てるだけってのは、もうやめだ。


言うほど簡単じゃないだろうけどさ。それでも、やってみる価値はある。




----------------




これから語ることは、俺自身がこの目で見ることは決して叶わなかった光景だ。

だが、その後に起きたすべての出来事を思えば、俺の知らない場所で俺の運命がどのように決定づけられようとしていたのか、読者諸君にはその正確な事実を知る権利があるはずだ。そう信じて、ここに書き記しておく。


---


凡百の生者が用いる地図のどこを探そうとも、**『虚無の円卓(ホロウ・テーブル)』**の存在する場所は見つからない。

それは世界の狭間、虚無の虚空に浮かぶ円形の間(ま)であり、そこに通じる道を拓くだけの相応の格を持った存在だけが足を踏み入れることを許される領域だった。


円卓そのものは、これについて語る数少ない伝説によれば、堕ちた神の墓石から削り出されたという黒曜石の一枚岩。その周囲には、意図的に歪な不快感を与える意匠が施された、骨、凍れる焔、織られた影、結晶化した絶叫など、どれ一つとして同じ形のない六つの玉座が待ち受けていた。


『同じ椅子に二度座るべからず。さすれば他者の罪の支配権を主張することになる』

――それが、この場所に伝わる古き鉄則だった。


最初に現れたのは、**魔王ニクサラ**。公に知られる五人の『原初の悪魔』のきょうだいのうち、第五位にして最古の存在である。

その傍らには、彼女の直属たる『罪痕の侍女』が控えていた。それは、悪魔が『魔王(デーモンロード)』の領域に足を踏み入れる手前において到達し得る、最高峰の階級。


この**『罪痕魔(シン・マークト)』**と呼ばれる存在は、根本的な腐敗の断片であり、原初の悪魔から直接触れられ、その本質の一部を分け与えられた者たちだ。選ばれる基準は実力ではなく、ひとえに主にとっての有用性のみ。彼らは主のの手足となり、眼となり、必要とあらば身代わりともなる、限りなく不死に近い存在であり、さらに下位の悪魔に自らの烙印を刻む権能さえ有していた。


悪魔の階級制度(ヒエラルキー)において、これは第七位に位置する。

その序列は、上位の悪魔が人間界を通過する際に抜け落ちた垢のような残滓の怨念から生まれる、まともな知性すら持たない最下級の**『滓生魔(ドレッグボーン)』**から始まる。そこから進化を経て、**『殻魔(ハスクド)』**、**『牙魔(ファングド)』**、**『冠魔(クラウンド)』**、そしてお馴染みの**『命名魔(ネイムド)』**、一国を支配する**『支配者(ソヴリン)』**へと続き、その上に位置するのが『罪痕魔(シン・マークト)』である。

そしてその頂点に君臨するのが『魔王』であり、さらにその遥か高み、罪が生まれる前、地獄が形を成す前、その二つの境界すら曖昧だった混沌の時代から存在する『原初の悪魔』たちなのだ。


ほどなくして、**魔王アエリアナ**が姿を現した。原初のきょうだいの第二位であり、最年少。普段は内向的だが、場がそれを求める時には冷徹なまでの真摯さを見せる魔王だ。その後ろには、同じく『罪痕魔』の系譜を継ぐ彼女の侍女が、敬意を払って一歩下がった位置で従っていた。


残りの四人の魔王たちも、それぞれの性質に見合った配下を伴い、思い思いの時間に到着した。


**『不屈』の魔王ヴェリス**。

最古の記録によれば、かつて創造神の前にすら跪くことを拒んだ元アークエンジェル(熾天使)であるという。古き言葉において、彼の名は単に『立ち塞がる者』を意味した。その存在感だけで下位の者を強制的に跪かせるその威圧は、自身が決して誰にも、何物にも敬意を払わないことに対する皮肉の表れだとも噂されている。


**魔王ベリアル**。精密にして計算高く、何一つ儀式的な無駄を省いて淡々と席に着いた。


**魔王ミレラ**。物静かで、親しみやすい笑みを浮かべており、その悪名から想像されるような分かりやすい脅威は一切発していない。しかし、その怒りがひとたび形を成せば、突発的ではなく、外科手術のように執拗で辛抱強い破滅をもたらす類の悪魔だった。三百年前に一人の先祖が彼女を侮辱したという理由だけで、一つの血統が丸ごと根絶やしにされたという。彼女が通り過ぎた後、古い伝承はそれを**『赤(レッド)』**と呼び、その後に残るものを**『静寂(サイレンス)』**と呼んだ。


最後に現れたのは、**魔王オリンシア**。席に着く前から、見るからに苛立っていた。


---


「これが大層な用事じゃなかったら承知しないわよ」


オリンシアは、凝固した絶叫の塊のようにも見える悪趣味な玉座に腰を下ろし、不機嫌そうに吐き捨てた。

彼女は次に、鋭く責め立てるような視線をヴェリスへと向けた。「あんたが他のメンバーに一言の相談もなく、この招集に同意したなんて信じられないわ」


ヴェリスは何も答えなかった。彼の沈黙には、並大抵の者が並べるどんな雄弁よりも重い説得力があった。

何しろ、彼はこの六人の中で『最強』なのだ。彼の合意さえあれば、他の者がその急な招集をどう思おうと、全員をこの場に引っ張り出す大義名分としては十分すぎるほどだった。


一人の『罪痕の侍女』が一歩前に出て、円卓を囲む者たちの正式な名乗りと紹介を完了させた。

最後の名前が厳かに認められ、満座が静まり返ったところで、ついにニクサラが口を開いた。


「今日、あなたたちをここに集めた理由は一つよ。単刀直入に言わせてもらうわね」


空間が、完全に引き締まった。


「もし、ある一人の少年――ハーフ(混血児)であり、**『カイ』**の名で知られる存在について何か知っている者がいても、絶対に近づくんじゃないわよ」


「その少年というのは、例の『正体不明の魔素波長』を持つという子供のことかしら?」


アエリアナが静かに問いかけた。彼女が意見を口にする前の、いつもの慎重で注意深い物言いだった。


「その通りよ」ニクサラは短く応じる。


ミレラは首をかしげ、その絶やさぬ微笑の裏で純粋な好奇心をのぞかせた。

「どうして誰も近づけさせたくないの? その警告には、何か特別な理由でもあるのかしら?」


「だって、あの子は私のものだから」


ニクサラは事も無げに、それでいて拒絶を許さぬ絶対の響きで言い放った。その答えには、それ以上の如何なる正当性も必要としていないかのようだった。


――理由はそれだけ、ということらしい。お気に入りの特等席を主張するかのような、あまりにも無造作な確信を持ってその言葉は告げられたのだ。


---


ここで、常に精密無比なベリアルが、この対話において最初の実質的な補足を口にした。

「私が収集した情報によれば、その少年の扱う魔素は、この世界の根幹たる『本来の進化法則』を完全に無視して上書きできる代物のようです」


「それ、本当に確かな情報なの?」オリンシアが懐疑的な視線を向ける。


「事実だろう」


ようやく沈黙を破ったのはヴェリスだった。

「私の記憶が確かなら、二頭の『始祖竜(真なる竜)』はあやつがまだ幼子だった頃にその抹殺を望んでいた。あの次元の超越者たちが、ありふれた存在に対してそこまでの過剰反応を示すはずがない」


「なら、どうしてそのガキはまだ生きているのよ?」オリンシアが畳みかける。


「知らん」


ヴェリスはそっけなく吐き捨て、それ以上の言葉を拒んだ。


---


「あのトカゲども、いつも自分たちの力を誇示しているくせに」

ミレラが物静かな語り口の裏に、棘のある皮肉を込めて観察を述べる。「小さな羽虫一匹すら仕留め損なうなんてね」


「その後、彼らが仕事を片付けない理由は何かしら?」オリンシアが問う。「本気を出せば、彼らにとって赤子の手をひねるようなものでしょうに」


その瞬間、円卓の間(ま)の空気が完全に凍りついた。


ニクサラの身体から、どす黒い魔力(覇気)が溢れ出し始める。それは一切の予備動作なく、ゆったりと、しかし絶対的な質量を持って円卓を囲むすべての玉座の隙間を満たしていった。


「たとえ相手が二頭の『始祖竜』であろうともね」


彼女の声には、未だ先ほどと変わらない無造作な温かみが残っていた。自分がどれほど途方もない脅威を口にしているかなど、微塵も気にしていない様子でニクサラは告げる。

「私の新しい『玩具(オモチャ)』に手を出す奴がいたら――誰であれ、この私が直々にブチ殺すわ」


---


円卓の誰一人として、それ以上その点について異議を唱える者はいなかった。

水面下でどれほどの不和が渦巻いていようとも、残る五人の魔王の中に、彼女のその宣言をあえて試そうとする無謀な者はいなかったのだ。彼女の年齢と、魔王たちの中における絶対的な格の高さを見れば、その言葉を違えぬ実力が備わっていることなど疑う余地もなかった。


その後、会議は数分で収束に向かった。下位悪魔たちの些細な領地争いなどといった事務的な処理であり、全員を招集する大義名分となったあの警告ほどの重みを持つ議題は、もう残されていなかった。


「それじゃあ、話はまとまったわね」

最後の瑣末な用件が片付いたところで、ニクサラが締めくくった。「誰もあの子の邪魔をしないこと。私のものには、指一本触れさせないわ」


円卓の周囲から、渋々ながらも同意の意思が示された。

最も不承不承だったのはオリンシアであり、最も即座に応じたのはアエリアナ。そしてヴェリスは、言葉を挟むまでもないシンプルな頷きだけでそれを示した。


---


ニクサラが最初に席を立ち、呼ばずとも背後に控えた『罪痕の侍女』がその足取りに従う。他の魔王たちもそれぞれのタイミングで後に続き、『虚無の円卓』は元いた世界の狭間の虚空へと、ゆっくりと融けるように消えていった。


――俺たち全員が、カイ(俺)も、ホライゾンクレストの面々も、地上界の誰一人として、この対話が行われた事実すら知る由もなかった。

この世界の歴史の大半よりも遥かに年老いた『原初の悪魔』が、自分に手を出そうとする者がいれば世界の頂点たる存在すら殺すと息巻き、個人的に俺を自分のものだと宣言したことなど、知るわけがなかったのだ。


……いずれ、俺はその事実を知ることになる。ただ、それは今ではない。


---


他の面々が去った後、誰もいなくなった空間にニクサラだけがわずかに留まっていた。その表情には、何事かを思案するような、ゆったりとした光が宿っている。


「本当に興味深い子ね」


ほとんど独り言のように呟いた彼女の言葉には、純粋で好奇に満ちた温かみが織り込まれていた。

「『虚無(ヌル)』の魔素。これまで誰も聞いたことのない**『コバヤシ』**という名を名乗り……この世界の記憶の大半よりも長く維持されてきたルールを、平然と書き換えている」


彼女は小さく、心底嬉しそうに微笑んだ。それは、カイが躊躇なくキャスモアを灰にするのを遠くから見つめていた時と同じ表情だった。


「そうね」彼女は言った。「そろそろ、ちゃんとお目にかかる時間を作ろうかしら。遠くから眺めてごっこ遊びをするのも、少々退屈になってきたもの」


その直後、広間からは気配が完全に消失した。

後に残されたのは黒曜石の円卓と、主を失った六つの玉座だけ。そして、アッシュフォードとの戦争など比較にならないほど凄まじい『何か』が、ホライゾンクレストの正面玄関に向かって直接歩みを進めつつあるという、静かで確実な予感だけがその場に漂っていた。




-----------




彼女が現れたのは、なんてことのない、ごく普通の日の午後だった。

今度は霧の門(フォグ・ゲート)による演出もなく、お仕着せの儀式めいたものも一切ない。まるで最初からそこにいたかのように、彼女は突如として、ホライゾンクレストの訓練場の端に佇んでいた。


「また会えたわね」


ニクサラは朗らかに微笑んだ。周囲にいた者たちが、彼女の気配を認識した瞬間に一斉に身体を硬直させたことなど、これっぽっちも気にしていない様子だった。


おいおい。冗談だろ、本物が来ちまった。よりによって俺の街に。こんな、何の心の準備もできていない午後に突撃してくるなんて聞いてないぞ。


「……せめて、事前に来訪の告知くらいしてほしかったな」

俺は慎重に言葉を選びながら返した。まだ剣は抜いていなかったが、純粋な身体の本能(反射)で手はすでに柄の近くへと添えられていた。


「したじゃない」彼女は心底楽しそうに、自分を指さして見せた。「これが私なりの『告知』よ。随分と効率的だと思わない?」


――数秒もしないうちに、俺の隣にエレインが姿を現した。その覇気は鋭く尖り、完全に迎撃の構えをとっている。少し遅れてエリスも後ろに続いた。二人とも、自分がこれから何を相手にしようとしているのか、その正確な絶望すら理解していないはずなのに、それでも戦う意志を明確に示していた。


「下がってろ」俺は静かに、しかし切迫した声で二人に命じた。「二人ともだ。これはお前たちが生きて帰れるような戦いじゃない」


「じゃあ、あんたなら生き残れるわけ?」エリスが緊張の糸を張り詰めたまま問い返してくる。


正直、おそらく俺でも無理だ。だけど、お前たちを巻き込むよりは百倍マシだ。


「さあな、分からん」俺は素直に認めた。「だけど、お前たちを巻き込んで答え合わせをするくらいなら、俺一人で確かめたい」


ニクサラは、この一連のやり取りを純粋な、そしてどこか嬉しそうな好奇心の目で眺めていた。

「あの子たち、貴方のことを本当に大切に思っているのね。実に見事な一蓮托生だわ。貴方の正体を思えば、なんだかとても微笑ましいお話ね」


「用件は何だ」

俺は単刀直入に切り出した。これ以上、まどろっこしい言葉のキャッチボールを続ける意味はないと判断したからだ。


「私の新しい『玩具(オモチャ)』を、ちゃんとお目にかかりにきたのよ」

彼女はまるでお茶にでも誘うかのような気軽さで言った。

「貴方が本当はどんな風に戦うのか、見極めたくてね。変装した下位悪魔たちを力任せに蹂躙するだけじゃない、本当の戦い方を。貴方の『虚無(ヌル)』が、自分より上の次元にいる本物の存在に対してどれほど通用するのか、純粋に興味があるのよ」


ヌル、だって?

あいつ、もう新しい名前に対応してやがる。相変わらず情報のアップデートが早すぎて笑えないな。


「もし、俺が拒否したら?」


「拒否なんてしないわ」彼女の微笑みは崩れない。「貴方自身も、知りたくてたまらないはずよ。私には伝わってくるわ」


……。癪だけど、完全に図星だった。


俺はエリスとエレインにこの場から離れるよう指示し、周囲に集まりつつあったアーロンたちにも同様に避難を命じた。そして再び彼女へと向き直る。ついに剣を抜き放つと、その刃の切っ先には冷たく、そして紛れもない『虚無(ヌル)』の波動が凝縮されていった。


「いいだろう」俺は言った。「一本勝負だ。他の奴らには絶対に手を出すなよ」


「当然よ」

彼女はすでに構えをとっていたが、それはあまりにも弛緩しきっていて、どこか怠惰ですらある姿勢だった。

「私がわざわざ会いに来たお気に入りの『玩具』以外に、横槍を入れるような無粋な真似はしないわ」


よし。それじゃあ拝ませてもらおうか。俺がどれほど『格上』を相手にしているのかをな。


---


ここから起きたことについては、一切のみえを張らずに真実だけを語りたい。

最初に仕掛けたのは俺だった。全力を尽くし、イグニヴァールから数ヶ月にわたって叩き込まれた技術のすべてを、その最初の一撃(オープニング・ストライク)へと注ぎ込んだ。


――彼女はそれを、指二本で受け止めた。


「可愛いわね」


ニクサラは心底愛おしそうに呟いた。まるで、俺が命がけで放った渾身の一撃を、子供が描いた拙いお絵描きでも受け取るかのような調子だった。


……おい、マジかよ。流石にこれは、プライドが粉々に砕け散るレベルだ。


俺は再び仕掛けた。より速く、より重く。本物の窮地に陥った時以外には決して外そうとしなかった、俺自身の『リミッター』を限界まで解き放つ。

しかし、彼女はそのすべての猛攻を、同じように力を抜いた、退屈ですらある精密さで受け流し続けた。それどころか、時折投げかけてくる小さな、励ますようなアドバイスが、どんな実際の傷口よりも俺の精神を深く抉ってきた。


「さっきよりはいいわ。もっと本気を出してみて」


「これでも死ぬ気でやってるんだよ!」

彼女が額に汗一つかいていないのに対して、俺の呼吸はすでに乱れ始めていた。


「いいえ」彼女は嘲笑ではなく、優しく諭すように訂正した。「貴方は『最善』を尽くしているだけよ。それは本当の『本気』とは違うわ。もっと、深くへ来なさい」


---


戦いと呼ぶのもおこがましいその時間は、俺の予想よりも遥かに長く続いた。

それは彼女が、俺を瞬時に屠ることに飽きたからではなく、俺が一体どこまで自分を追い詰めて底力を引き出せるのかを、純粋に見極めようと付き合ってくれていたからだった。


そして、俺はついに一撃を『届かせた』。

彼女の前腕にかすかな擦り傷を作る、模擬戦のひっかき傷ほどに浅い一撃。だが、彼女はその傷跡を、まるで予期せぬ極上の贈り物でも受け取ったかのような、純粋な歓喜の目で見つめた。


「……それよ。それが、貴方の面白いところだわ」


その直後、何の予備動作もなく、戦いは唐突に終わった。

俺の剣は綺麗に弾き飛ばされ、気付けば彼女の存在が、圧倒的な質量となって俺の目の前に迫っていた。その距離の近さが、これが最初からハナから勝負にすらなっていなかったという現実を、あまりにも残酷に、そして明確に俺の脳裏へと焼き付けた。


「上出来よ」

彼女は一歩下がり、心底満足したように頷いた。

「貴方の年齢を思えば、私の期待を遥かに超えていたわ。ヴェリスが貴方の潜在能力(ポテンシャル)を誇張していなかったことが証明されたわね」


負けた。完膚なきまでに、恥ずかしいほど徹底的に。そしてどうやら、それはすべて彼女の想定内のシナリオ通りだったらしい。


「さて」ニクサラの表情に、さらなる深い好奇心の色が混じる。「それじゃあ、私がここに来た『もう一つの本命』を見せてもらおうかしら」


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