家路
琴音は夢の余韻に浸っていた。
心地よくて、また眠りについた。
先生、やっぱり琴音のことが好きなのよね……
きっと、恥ずかしかったのよね……
でも……
もう、いいわ。楽しい夢を見たから。
その朝、理恵子と登校していた時のことだった。
「理恵子、今日ね。川崎先生と初めて会った時の夢を見たのよ」
「本当?」
「琴音のことを可愛いって言ってくれたの」
「よかったね」
「うん」
学校の帰り道だった。
夕日が琴音の瞳に映っていた。
あの時と同じね。
先生が肩の上にとまるって言った時、せめておんぶでもしてもらいたかったな……
琴音は小鳥のようにかわいかったのよね。
そうよ。そうよ……
きっとそうよ……
ああ、なんだかお腹すいっちゃったな。
早く帰ろう。
星が顔を出し始めた。
草木が揺れていた。
自宅にて家族で夕食を食べている時だった。
「お姉さん、昨日ね、川崎先生の夢を見たのよ」
水江は黙っていた。
「あら、琴音、川崎先生って誰?」
母親が琴音に尋ねた。
「私の好きな人よ。琴音のことを可愛いって言ってくれたの」
「そう、よかったね」
「うん。お母さん、おかわり!」
「琴音、それ以上食べたら太っちゃうよ」
「いいのよ。先生はぽっちゃりとした女の子が好きなのよ」
水江は黙っていた。
何も言えなかった。
翌朝、学校が休みだったので、朝からゆうと散歩に出かけた。
「ゆう、川崎先生、やっぱり、ゆうじゃなくて川崎先生って名前つければよかったかな」
琴音は独り言を言っていた。
「ゆうも少し、大きくなったね。琴音と同じくらいかしら」
ゆうが可愛く吠えた。
「やっぱりそうなのね。可愛いゆう」
ふふふ
ゆうをつないでいた紐がちぎれた。
ゆうは琴音から離れていった。
「待って」
ゆうは遠くなっていった。
「待って」
ようやく、捕まえることができた。
「ふう、なんだか息苦しいわ。走ったからかしら? そんなに走ったかな。なんだか変ね……」
山に赤い夕陽が沈んでいた。
カラスが鳴いていた。




