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夕日に映る君――初恋の音色  作者: 月原 悠
無言歌

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43/54

前奏曲

琴音の学校でちいさな音楽の発表会が開かれることになった。

琴音と理恵子が学校から帰る途中だった。


「琴音ちゃん、今度のおさらい会では何を弾くの?」

「私はピアノよ。川崎先生が弾いていた曲でね。ショパンって人の「別れの曲」という曲よ」

「そうなの? 難しいんじゃない?」

「大丈夫よ。琴音にも弾けるように川崎先生がやさしくしてくれたの」

「うん」

「理恵子、先生に来てもらえるようにお願いできないかしら?」

「うん、言ってみるね」


理恵子は渡辺にそのことを話した。

渡辺も琴音のことが気になっていたので、参観することにした。


おさらい会の日が訪れた。


「琴音ちゃん、お兄ちゃんも来るって」

「本当、本当?!」

「うん」


琴音の小さな灯りが灯った。

しかし、いつもより、緊張した。


先生、うまく弾けるかしら。

間違ったらどうしよう……

あれだけ練習したのにどうしよう……


胸の鼓動がかすかに響いた。


「琴音ちゃん、ほら、次よ」

「うん」


琴音は必死に弾き始めた。

緊張しているのに加えて、渡辺が来ているということで高まりを抑えることはできなかった。


指が少しだけもつれ、音が思っていたところから外れた。

琴音は心が乱れた。


あ、どうしよう

どうしよう


演奏は何とかたどたどしく終わった。

発表会が終わると、琴音はうまく弾けなかったので涙を浮かべていた。

そこに渡辺が歩み寄ってきた。


「琴音ちゃん、上手だったよ」

「先生、ごめんなさい。あれだけ教えてもらったのに……」

「上手だったよ。先生はそう思ったよ」

「本当? 琴音は先生が来ると思って頑張ったのよ。だって先生が頑張る子が好きだって言ったでしょ」

「ああ、頑張ったよ。今度、また教えるから」

「先生、いつですか?」

「近いうちにね」

「うん!」


琴音は渡辺と約束して気持ちが舞い上がっていた。

その帰り、理恵子と渡辺と一緒に帰っていた。


木々から葉が揺れ落ちていた。

まるで、琴音の心を揺らすように、落ちていた。


「あ、先生、赤い葉っぱが落ちました」

「どこ? 気づかなかったよ」

「そう?」

「気のせいかな、赤い葉は季節外れだよ」

「そうですね」

「琴音ちゃんは頑張ったから疲れているんだよ。今日はゆっくり休んでね」

「はい」


近くの民家から風鈴の音色が聞こえていた。

その音は、どこか寂しかった。


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