花占い
水江は失意のまま、自宅へと戻った。
水江のいつもと違う様子に、琴音はすぐ気づいた。
「どうしたの? お姉さん」
「いいのよ……」
「もしかして、川崎先生のこと?」
「ううん……もういいのよ」
水江の気持ちに、琴音はうすうすと気づいていた。
そのため、それ以上声はかけなかった。
翌朝になっても水江はふさぎこんでいた。
そんな姉の姿を見て、琴音は声をかけた。
「お姉さん、お姉さんからもらった、ゆうと一緒に散歩にいかない?」
「いいわ、そんな気分じゃないのよ」
「少しだけよ。散歩に行こう。少しだけよ……」
「そうね……」
水江は気分を晴らすために、琴音と散歩に行くことにした。
琴音は明るく振舞った。
「お姉さん、昨日ね、理恵子とね……あ……何でもない」
「いいのよ、琴音。琴音の気持ちはわかるから」
「お姉さん、渡辺さんのことを忘れるっていったでしょ」
「そうよ、でも……」
琴音は会話をすり替えた。
「お姉さん、この間、神社に行ってお供えの赤い餅を食べたの、でも太っちゃったかな」
「そうね……」
「もう、お姉さんたら、いっそのこと吾郎さんとお付き合いしたら」
「もう、やめて」
「誰か、気になっている人はいないの?」
「いないわけじゃないけど……」
「その人を想えばいいでしょ」
水江は何も言えなかった。
確かに、山村にわずかながら惹かれているところもあったからだ。
「そうね……」
「ねえ、お姉さん、どんな人?」
「優しい人よ」
「いいな、その人と結婚したら」
「まだ、早いわよ」
琴音は思いついた。
「じゃあ、私が花占いしてあげる」
「もう、やめて」
琴音は一輪の花を取って、花びらを一枚、一枚ちぎって声に出した。
「お姉さんはその人と結婚する」
「吾郎さんと結婚する」
「その人と結婚する」
「吾郎さんと結婚する」
「その人と結婚する」
「吾郎さんと結婚する」
「吾郎さんと結婚する」
「吾郎さんと結婚する」
水江はくすりと笑った。
「もう、吾郎さんはやめて」
「お似合いよ」
「もう、琴音ったら」
「そうよ。その笑顔よ」
ゆうが、琴音のそばから離れた。
「ゆう、待って。吾郎さん、待って」
「もう」
ふふふ
琴音は笑った。
「待って、ゆう」
琴音は走って追いかけた。
すぐに捕まえてゆうを抱きかかえていた。
「もう、ゆうったら、息が切れるじゃない」
「そんなに走ってないでしょ」
「そうね。赤い餅を食べたからバチが当たったのかしら」
「そうよ。ふとったからでしょ」
「もう、やめて」
水江は笑った。
「そうよ。その笑顔よ、お姉さん」
ふふふ
「なんだか、目がくるくる回るわ。なんだか、変……」
「大丈夫?」
「うん」
遠くにぽっかりと雲が浮いていた。




