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夕日に映る君――初恋の音色  作者: 月原 悠
交錯する想い

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36/51

列車は想いを乗せて

駅にいた渡辺は偶然にも水江の出張先に行くことになっていた。

渡辺もなんだか電車が通り過ぎると不思議な気持ちになった。

しばらくして、ミレーゼも遅れて駅へと到着した。


雨はさらにひどく降り始めた。


「雄二、雨がすごいわね」

「ああ」

「次の会議はわが社としての重要な会議よ。気を引き締めてね」

「そうだね」


渡辺とミレーゼは次の便の列車に乗り込んだ。

列車は静かに駅を後にした。


水江の列車は次の駅でしばらく停まった。

そして、渡辺の乗り込んだ列車も次の駅へ停まった。


雨がやみ晴れ間がのぞいた。


二つの列車は、駅で向かい合うように停まった。


わずかな時間だった。

渡辺の目に、水江の姿が映った。

しかし、水江は渡辺の姿に気づかなかった。


渡辺は我が目を疑った。

心が揺れ動いた。


先に水江を乗せた列車が動き出した。

渡辺は水江の姿を目で追った。

その姿にミレーゼは気づいた。


「どうしたの? 何か考え事をしているの?」

「いや……」


ミレーゼは、普段見せない渡辺の表情の変化に気づいた。


「雄二、何か隠しているでしょ」

「いや……」

「もう、忘れたのよね? 雄二を信じているわ」

「ああ……」


一方で水江は列車の窓の景色を何気に見た。

渡辺の優しい笑顔が浮かんだ。

渡辺を忘れていない自分に気づいた。


列車は走った。

走る度に消えてゆく景色が水江の心に残った。


山村は水江の変化に気づいた。


「どうしました? 水江さん」

「いえ……」

「また、渡辺さんのことを想っているのでは?」

「いえ……」


水江は動揺した。


「大丈夫ですよ。きっと時が解決してくれます。それまで私が水江さんを支えましょう」


水江の胸には渡辺のことがいっぱいに広がっていた。

山村の言葉さえ、遠くに聞こえていた。


それぞれの想いを乗せて、列車は走っていた。


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