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長い影
琴音は水江からもらった子犬のゆうを可愛がっていた。
ゆうは、琴音の家を自由に走り回っていた。
「ゆう、おいで」
ゆうは尻尾を振りながら琴音のそばに来た。
「よし、よし」
「今日も散歩にいくわよ」
ゆうは可愛く吠えていた。
琴音の後をついていった。
道中に白い花が咲いていた。
渡辺に花を贈ったことを思い出した。
そう思うとなんだか、胸が熱くなった。
摘んだ花を何気なく少し目の前に投げた。
えい
すると、ゆうが口にくわえて持ってきた。
「まあ、ゆう、えらいわね」
ゆうは尻尾を振っていて、琴音をじっと見つめていた。
「じゃあ、もう一度ね」
琴音はもう一度投げた。
ゆうは白い花を拾ってきた。
でも、花びらが少し散っていた。
それが、琴音にはどことなく心に込み上げてくるものがあった。
「ゆう、花びらが散ってしまったじゃない……」
琴音はぽつりと口にした。
ゆうは、不思議そうに琴音を見つめていた。
夕暮れ時だった。
三つ編みの髪がやわらかく夕日に溶けた。
「ゆう、そろそろ帰るわよ」
琴音はゆうと自宅へ帰ろうとした。
頬をぽつりと流れるものがあった。
琴音はゆうをそっと抱きしめた。
夕日に照らされた琴音とゆうの影が、野原に長く伸びていた。




