姉妹
空が茜に染まる日だった。
琴音は学校から帰っていた。
わあ、夕日がきれい。
あの時を思い出すわ。
水江も工場の帰り道だった。
同じく夕日を見上げて渡辺のことを思い浮かべていた。
でも、忘れるのよ……
水江は心に言い聞かせていた。
偶然にも、二人は帰り道でたまたま会った。
野原に座って夕日を眺めた。
互いの気持ちを伝えた。
「お姉さんね、先生とここで出会ったでしょ。あれから早かったね」
「そうね。でもいろいろあったわ」
「先生、元気かな。ギリシャで頑張っているかな」
「琴音、もう忘れよう……」
「いやよ、だって両想いなのよ。お姉さんはもう先生のことを忘れたの?」
「もう、忘れることにしたのよ……」
夕日が二人を照らしていた。
二人の髪色がやわらかな紅色に染まった。
恋色がふたりを染めた。
「お姉さん、それで平気なの?」
「だって仕方ないでしょ。片思いだし……渡辺さんは琴音のことが好きだったのよね」
「そうよ、でもミレーゼさんがいるでしょ。両想いだけど時々辛くなるのよ」
「琴音は初恋だったのよね」
「そうよ。だから忘れないことにしたの。私が年をとってもいつまでも思い出の人なのよ」
「そう、琴音は強いのね……私は……」
「お姉さんは忘れたほうがいいよ。だって片思いなんだから」
「そうね……」
涙が夕日ににじんだ。
時が静かに流れた。
「お姉さん、泣かないで。ごめんなさい」
「いいのよ、いいのよ……琴音だから許すことにしたの」
「お姉さん、あの夕日の向こうに先生はいるのね」
「そうね。でも……」
「どうしたの? お姉さん」
「人を好きになるって素敵ね。なんだか胸があつくなっちゃった」
「うん」
「どうして、好きになってしまうのかしら」
「うん、琴音は幸せよ。好きなだけで幸せよ。想うだけでときめくのよ」
「渡辺さん、幸せになってほしいね……」
「うん。でも、やっぱり琴音は複雑だな……」
「ミレーゼさんがいるから?」
「うん……」
二人に込み上げるものがあった。
雫が頬をつたわった。
「琴音、泣いたらだめよ」
「お姉さんこそ……」
夕日が沈み終わろうとしていた。
二人は立ち上がった。
「琴音、夕日が沈み終わらないうちに家まで走ろう」
「うん」
二人の足音がどこまでも響くようだった。
夕日がやさしく微笑んでいた。




