表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕日に映る君――初恋の音色  作者: 月原 悠
それぞれの道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/35

姉妹

空が茜に染まる日だった。

琴音は学校から帰っていた。


わあ、夕日がきれい。

あの時を思い出すわ。


水江も工場の帰り道だった。

同じく夕日を見上げて渡辺のことを思い浮かべていた。


でも、忘れるのよ……


水江は心に言い聞かせていた。


偶然にも、二人は帰り道でたまたま会った。

野原に座って夕日を眺めた。

互いの気持ちを伝えた。


「お姉さんね、先生とここで出会ったでしょ。あれから早かったね」

「そうね。でもいろいろあったわ」

「先生、元気かな。ギリシャで頑張っているかな」

「琴音、もう忘れよう……」

「いやよ、だって両想いなのよ。お姉さんはもう先生のことを忘れたの?」

「もう、忘れることにしたのよ……」


夕日が二人を照らしていた。

二人の髪色がやわらかな紅色に染まった。

恋色がふたりを染めた。


「お姉さん、それで平気なの?」

「だって仕方ないでしょ。片思いだし……渡辺さんは琴音のことが好きだったのよね」

「そうよ、でもミレーゼさんがいるでしょ。両想いだけど時々辛くなるのよ」

「琴音は初恋だったのよね」

「そうよ。だから忘れないことにしたの。私が年をとってもいつまでも思い出の人なのよ」

「そう、琴音は強いのね……私は……」

「お姉さんは忘れたほうがいいよ。だって片思いなんだから」

「そうね……」


涙が夕日ににじんだ。

時が静かに流れた。


「お姉さん、泣かないで。ごめんなさい」

「いいのよ、いいのよ……琴音だから許すことにしたの」

「お姉さん、あの夕日の向こうに先生はいるのね」

「そうね。でも……」

「どうしたの? お姉さん」

「人を好きになるって素敵ね。なんだか胸があつくなっちゃった」

「うん」

「どうして、好きになってしまうのかしら」

「うん、琴音は幸せよ。好きなだけで幸せよ。想うだけでときめくのよ」

「渡辺さん、幸せになってほしいね……」

「うん。でも、やっぱり琴音は複雑だな……」

「ミレーゼさんがいるから?」

「うん……」


二人に込み上げるものがあった。

雫が頬をつたわった。


「琴音、泣いたらだめよ」

「お姉さんこそ……」


夕日が沈み終わろうとしていた。

二人は立ち上がった。


「琴音、夕日が沈み終わらないうちに家まで走ろう」

「うん」


二人の足音がどこまでも響くようだった。

夕日がやさしく微笑んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ