紙飛行機
琴音と水江はいとこの結婚式に招待された。
いとこは幸子という名だった。
「お姉さん、幸子さんの花嫁姿を早くみたい。お姉さんも婚約したから、もう少しね」
「琴音、私は婚約なんてしていないって言ったでしょ」
「そうだったね。でも、どうしておばちゃんは、あんなこと言ったのかな?」
「いろいろあるのよ……」
新郎の家で幸子が白無垢の花嫁姿で登場した。
「わあ、きれいお姉さん!」
「本当ね!」
「私も……あ……」
琴音の表情が曇った。
「琴音、もう忘れよう……」
「いやよ……」
琴音は泣いていた。
親戚から声をかけられた。
「どうしたの? 琴音ちゃん」
「ううん、嬉しいの……」
琴音は思い出した。
そうよね。川崎先生もいつか……
水江は琴音に声をかけた。
「駄目よ、ここで泣いたら、嬉しい席でしょ」
「うん……」
式が終わって、琴音は家で一人泣いていた。
声を小さくして泣いていた。
やっぱり、川崎先生、忘れないといけないのかしら……
でも、両想いでしょ。
どうして、ミレーゼさんと結婚するの……
いやよ……
先生のことを想うだけでいいって思ったけど……
いやよ……
泣いている琴音の姿を水江は見て、水江もこみ上げてくるものがあった。
「琴音……わかるけど、もう、忘れないと……」
琴音は声を出して泣いた。
水江も頬をつたわるものがあった。
「お姉さんは川崎先生がミレーゼさんと結婚してもいいの? なんとも思わないの」
「でも……」
水江は言葉にならなかった。
外は小雨が降っていた。
涙色だった。
「お姉さん、やっぱり忘れないとね……川崎先生とお別れしてくる」
「お別れってどうするの?」
「お姉さん、あっちに行って」
「どうして……? 琴音」
「いいから……」
琴音は渡辺に手紙を書いた。
先生、幸せになってください。
琴音も幸せになります。
琴音は辛くてそれ以上書けなかった。
その手紙を折って紙飛行機にした。
近くにある小川へと行った。
先生、さようなら……
琴音は小川に紙飛行機にした手紙を投げた。
先生、本当にさようなら……
そう言いながら、紙飛行機が川の下流へと流れるのを見ていた。
でも、思い直した。
やっぱり、駄目よ。
先生とは別れない。
琴音は靴をはいたまま、小川の中へ入って紙飛行機を取ろうとした。
小川の浅瀬を走った。
水しぶきが舞った
しかし、追いつくことはできなかった。
先生、やっぱりお別れしないといけないの……
琴音は再び声をあげて泣き始めた。
両手で顔をおおって泣いた。
琴音は小川の中で立ちつくしていた。
静かに川の流れが響いた。
琴音の心に響いた。
三つ編みの髪が風に揺れていた。




