天の川
琴音は、百合子の家から帰ると、空には三日月が浮かんでいることに気づいた。
淡く染まる夕暮れも過ぎて、星たちが輝き始めた。
時は夏真っ盛りだった。
天の川が空一面に広がっていた。
琴音は自宅で浴衣に着替えて、外へ行き夜空を眺めた。
空を見上げるとなんだか切なくなってきた。
思わず言葉が小さくこぼれた。
「先生……」
時がゆっくりと静かに流れた。
先生、あの星が織姫星よね。
あの星は私かな……
あの星は彦星よ。
先生よ。
私に向かって優しく微笑んでいるみたい。
でも、一年に一度しか会えないのね。
でも、でも、琴音と先生はもう、会えないのかしら。
でも、でも、でも……琴音は先生のことで頭がいっぱいです。
あ、流れ星が落ちた……
私の涙も落ちました……
時間は違えど、渡辺も天の川を見上げていた。
水江さん。ほら、天の川が見えるよ。
水江さんもどこかで見ているのかな……
なんて、どうしてこんなにもセンチになっているんだ。
もう、現実的に戻らないとね……
「雄二、空を見ている暇はないわよ。練習よ。練習」
「何か言った?」
「雄二、だから、練習よ。聞こえていないの?」
「今、何て言ったの?」
「だから、練習よ」
「ああ、わかったよ。ミレーゼ、でももう少し時間をくれ」
「わかったわよ」
琴音と渡辺は想い合う。
先生、いつまでも、先生のことを想っていたら駄目ですよね。
水江さん、僕は孤独だよ……
でも、やっぱり先生が好きなの……
ピアノなんてどうでもいい……本当はね……
私って駄目ですよね。
覚えているかな? 水江さん、貝殻を拾っていた時のことを……
先生、覚えていますか? 夕日が見える野原で出会った時のことを……
野原で水江さんに出会った時のきれいな瞳がいつまでも輝いているよ。
先生の肩に今度はとまりたいです。
夕日に映る水江さんの瞳はきれいだった……
先生……
水江さん……
はかない想いは交錯していた。




