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夕日に映る君—―初恋の音色  作者: 月原 悠
それぞれの道

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18/20

思惑

水江は吾郎と映画を観に行くことになった。

空は晴れていた。

しかし、水江の心はどことなく晴れなかった。


「水江さん、今日の映画は恋物語みたいです」

「そうなのですね……」

「どうなされました?」

「いえ……」


スクリーンには切ないラブストーリーが映し出されていた。

しかし、水江の心には響いていなかった。

二人が座席に座っていた時のこと、吾郎は水江の手に触れた。


「吾郎さん……」

「ごめんなさい、水江さん、たまたま、手に触れてしまいました」

「いえ、大丈夫です……」

「水江さん……手をつないでいいですか?」

「ごめんなさい……それは……」

「そうですよね。そうですよね。そうですよね……」


水江と吾郎は映画館を後にした。

吾郎は水江を見送り、自宅へと帰り着いた。


「吾郎ちゃん、吾郎ちゃん、どうしたの?」

「ううん……」

「どうして、泣いているの? 誰かがいじめたの?」

「お母さん……」

「よしよし」

「お母さん……」


吾郎は映画館の出来事を母親に話した。


映画を観に行った翌日、工場での休憩時間の時だった。


「水江さん、お茶でもゆっくり飲んでください」

「吾郎さん、ありがとうございます」

「いえ……」

「痛い……」


湯呑にひびが入っており、水江は指を怪我をした。


「どうして……」

「水江さん、絆創膏(ばんそうこう)を貼りましょう。それに僕の母は看護婦なのです。帰って傷の手当をしてもらいましょう」

「いいのですか?」

「はい、傷が深いですから」

「すみません」


水江と吾郎は吾郎の自宅へと向かった。


「あら、吾郎、今日はお客さんかしら」

「ああ、僕の知り合いで、水江さんという方だよ。お母さん、水江さんは指を怪我したんだ。手当をお願いできないかな」

「ええ、もちろんですよ。水江さん家の中へどうぞ」

「はい、お邪魔します」

「お母さん……」

「わかっているわよ、吾郎ちゃん」

「え……?」

「どうしたの? 水江さん」


夕暮れの空には三日月が輝き、薄く笑っていた。


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