表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕日に映る君—―初恋の音色  作者: 月原 悠
それぞれの道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

すれ違い

琴音は心が躍るようであった。

もしかしたら、渡辺、川崎先生から手紙が来るだろうと信じて、毎日のようにポストを確認する日々が続いた。


一方、水江は手紙を送らなかったことが心残りであった。

琴音の嬉しそうな表情を見るたびに後悔するばかりだった。


一方で、渡辺の手元に琴音からの手紙が届いた。

日本での生活が懐かしく感じられた。

しかし、渡辺は悲しかった。


水江さん。どうして、手紙をくれないんだ。

でも、それは水江さんが悪いんじゃない。

僕が悪いんじゃないか……

水江さん、どうか幸せになってください。

それだけを願います。


そして、自らの気持ちを押し殺して返事を書くことにした。



琴音ちゃんへ


琴音ちゃん、お元気にしていますか。

先生はギリシャで一生懸命ピアノを教わってもらっているよ。

先生も頑張るから、琴音ちゃんも頑張ってね。

お手紙ありがとうね。

漢字は間違っていたけど、可愛いよ。

感じじゃなくて、漢字だよ。

後で国語辞典で確認しておいで

そんな可愛い琴音ちゃんが好きだよ。

ところで、水江さんは元気にしているかな。

よろしく言っておいてね。


可愛い琴音ちゃんへ

先生より


渡辺は早速、日本へ手紙を送った。

手紙は風に乗り、琴音の手元へ届いた。


「お姉さん、お姉さん、お姉さん、ほら、見て、見て」

「どうしたの? 琴音」

「川崎先生から手紙が届いたのよ」

「え、本当?」

「それにね、それにね……可愛いって、でもそれだけじゃないの……!」

「なんてかいてあるの、琴音……? 教えて」

「駄目よ。琴音だけの秘密よ」

「見せて、見せて」

「駄目よ。だって琴音のことを好きって書いてあるのよ!」

「嘘よ。渡して」


ビリ ビリ ビリ


水江が琴音への手紙を無理やり手に取ろうとした。

そのため、手紙が二つにわかれた。


水江の手元には、破れた手紙の最後の部分だけが残った。


—―――――――――――――――――――


そんな可愛い琴音ちゃんが好きだよ。

ところで、水江さんは元気にしているかな。

よろしく言っておいてね。


可愛い琴音ちゃんへ

先生より


—―――――――――――――――――――――



水江はちぎられた手紙を見て、勘違いしてしまった。

渡辺が気を使ってあえて、あっさりと書いてしまったことが逆効果だった。



え、どうして……

どうして……

琴音のことが好きだったの……

私を抱き寄せてくれたのはからかっていただけなの……



ちょっとした、風の悪戯だった。

水江は泣きながら走って家を飛び出した。


「待って、お姉さん……」


琴音は想った。


やっぱり、川崎先生、私のことが好きだったのね。

でも、どうして、海辺でお姉さんを抱き寄せたの……

わかった。

思い直したのよ。

それか、お姉さんが可哀想に思ったからよ。

川崎先生は優しいから。


しばらくして、水江は自宅へと帰ってきた。

目は赤くはれていた。


「お姉さん……」

「もう、いいの、琴音、ほっておいて」

「お姉さん、違うのよ。川崎先生はきっと優しい人だから……」

「だからよ。そうなの。そうなの……優しい人だけだったのよ……」

「あ、ごめんなさい。そういう意味じゃなくて……」


水江は自室へと戻っていった。

すれ違いという名を残して。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ