第152話〜魔狼穿〜
時間がスローモーションのように流れる。
オリオンのアーツドライブにより、シロウは今まさにその命の炎を消されんとしていた。
(殺される! シロウが! 殺される!!)
「シロォォォォオオオ!!」
ノドを焼くような大絶叫と共に、届くはずもない右手をシロウへと伸ばすエータ。
しかし、彼の想いは届かない。
「エータ!!」
と、そんな彼の後方から声が聞こえた!
それはエータの居る家屋へと飛び乗ってきたビートであった!
ビートならここからでも攻撃が届くかも知れない!
「ビート! シロウが⋯⋯!」
そう思ったエータだったが、ビートは捕まったときに弓矢を奪われおり、丸腰である。
オリオン騎士団長は強い。
マスジェロから借りた【鍛冶師】はあれど、きっと付け焼き刃な武器では、あの白金の鎧をまとった彼を止められないだろう。
(どうする!? どうする!?)
頭をぐるぐると回転させるエータ。
そんな彼を見て、瞬時に状況を理解したビートは叫んだ!!
「ライファだ!!!!」
ライファ⋯⋯。
ライファ。
ライファ!!!!
それだ!!
――恩賞――
エータは急いで脳内のウィンドウを選択!
ビートに新たなアーツがもたらされる!!
【魔素弓術】
と、同時に、ビートはバチバチと身体を赤く発光させ、背中に円環を作りそれを高速回転させた!!
「間に合え!!!!」
ギィィィィンという音。
吹き荒れる風。
円環から放出される膨大なエネルギーは、そのまま赤いマナの弓矢へと姿を変えていく。
そして、真紅に染まる血のような弓から、必殺のアーツドライブが発射された!!
「地獄の果てまで追いかけろ!!」
――魔狼穿――
「ガォンッ!!」という鳴き声と共に、黒い鎖を身体中に巻き付けたマナの巨狼があらわれた!!
それは神をも咬み殺すという神魔獣、フェンリルのカタチをしている。
その狼は禍々しい殺気をはなちながら、家屋の屋根をバキバキと吹き飛ばし、高速で駆けていく!!
ただならぬ気配を感じたオリオンは、ハッとその魔狼の方へと視線を向けた!
「ガォォォォォオオ!!」
オリオンを視認したビートの殺意が、口の周りにまとわりついた鎖を引きちぎりながら大声で吠える!
「な、なんだアイツは!!」
オリオンは赤く輝く大剣を、得体の知れない魔狼へと向ける!
――赫輝巨星――
火炎をまとって飛ぶ斬撃!
しかし、魔狼はそれをまともに受けたにも関わらず、鎖をジャラジャラと引きずりながら、ものともせずに進んでくる!
「ちぃ⋯⋯!」
オリオンはさらにマナを大剣へとそそぎこみ、アーツドライブを放った!
――真珠紐三連星――
ひとつ、ふたつ、みっつとマナを爆発させ、どうにか回避しようとするオリオン!
しかし、魔狼は軌道を変えてオリオンを追う!
どこまでも!!
「くそっ!!」
その後も、何度も何度も真珠紐三連星を撃つオリオンだが、魔狼は『絶対に殺してやる』と言わんばかりに着いてくる。
「そんな⋯⋯! まさか生きたアーツドライブだとでも言うのか!!」
オリオンは、商店街のほうを見る。
(ロウル様から離れなければ⋯⋯!)
「こっちだ! オオカミ!!」
オリオンは魔狼を挑発し、パイナスの中央、王城のはるか上空へと逃げる。
魔狼は赤く身体を光らせながら、よだれを垂らし、まさに地獄の果てまで彼を追う。
「ここまでか⋯⋯!」
そして、ついにオリオンの身体をその大きな口で捕らえた!!
「ロウル様⋯⋯! どうか、どうかお逃げください!!」
――プリース王国に栄光あれ!!
魔狼をカタチ作る真紅のマナが、ダイナマイトのように連鎖反応を起こし、超巨大な爆発となってオリオンを仕留めた。
プリース王国・騎士団長オリオン・バークライト。
ここに墜つ。
奇しくもそれは、オリオンが付き従った王。
ハロルドと同じ最期であった。




